インタビューVol.3:デュエットゥ(かなえ&ゆかりさん)

学校クラスコンサートインタビュー
Vol.3:デュエットゥ(かなえ&ゆかりさん)
安芸の小学生との14年間。ともに作り上げた歌

デュエットゥの二人がピティナ学校クラスコンサートの実施のため、初めて高知県安芸市の小学校を訪れたのが2009年、今から14年前のことでした。その当時は安芸市立伊尾木小学校1校での開催でしたが、校長先生の勧めで市内の他の小学校へも徐々に広がりました。お隣の安芸郡芸西村の学校も加わり、各校長先生方のご協力のもと、文化庁の事業「文化芸術による子供育成推進事業 〜芸術家の派遣事業」への申請により、東京から数日間滞在しながら数校を巡回する形での学校クラスコンサートが実現するようになりました。

途中、申請の都合やコロナによる中断も挟みつつ、足掛け14年間にわたり、全校生徒へのクラスコンサートを実施し続ける中、作曲も手掛けるデュエットゥの木内佳苗さんの頭に「安芸のために曲を作りたい」という想いがよぎりました。作曲した曲を子どもたちへ披露し、それを聴いた子どもたちから、たくさんの「安芸の好きなところ」など安芸をイメージした言葉を集め、歌詞を作りました。そうして生まれたのが、「安芸っていいな」という歌です。

デュエットゥのお二人に、「安芸っていいな」の制作秘話、そして継続して同じ学校へクラスコンサートを届け続けることで感じた効果などを伺いました。

「安芸」をイメージした曲があるといいな

安芸を何度も訪れているうちに先生方との会話で自然にこんな話が出ました。

「安芸」をイメージした曲があったらいいな。

この言葉をきっかけに早速曲作りをスタートしました。もう何度も安芸を訪れているので、曲のイメージはすぐに浮かびました。

大きな空が広がり大きな海が見える街。町の人たちが仲良しでいつも皆さん笑っているイメージだったので明るく弾んだ感じの曲!子どもたちがクラスコンサートで聴いて親しみをもってもらえるような曲になるといいな、と思い作曲し始めたのを覚えています。

出来上がった曲をクラスコンサートでお披露目し、聴いてもらった子どもたちから募ったタイトルの中から、「安芸っていいな」が決まりました。 (→関連記事)喜んでくださった先生方から今度は「子どもたちが歌えるような曲になるといいですね。」という言葉をいただきました。そこで、一緒に訪れていたソプラノ歌手の平田里子さんとも力を合わせ、次は歌詞作りをしてみようということになりました。

クラスコンサートで集めた言葉で歌詞づくり

早速昨年訪れた学校で、「みんな、安芸ってどんなイメージ?」「安芸って聞いて思い浮かぶ言葉は?」などと、子どもたちのイメージを聞いてみました。子供たちから良い言葉を引き出せるのかという不安とは裏腹に、子供たちは町のイメージや言葉をたくさん発表してくれました。

ここからが大変な歌詞作りでした。言葉は集まったけどどうやって繋ぎ合わせようか??

苦労した点は主に3つ。
① 全部の学校から出た言葉を平等に入れること 
② リズムに合う歌詞を選ぶこと
③ どの言葉も1つずつ聴いても輝いて聞こえるようにすること

この3つを考えるとなかなか決まらず、本当に最後までどの言葉にしようか悩みました。まずはデュエットゥで考えて、実際に歌って歌いやすいかなどを平田さんに相談して作り上げていきました。安芸で使っている方言は入れたかったし、食べ物も入れたかった!最後は「にじのまち」か「あきのまち」でものすごく迷いましたが(前回訪れた時の初日にものすごく大きな虹が安芸に出たのです)やはり最後はみんなの「あきのまち」にしました。

今年のクラスコンサートで一緒に歌えるように、と完成した楽譜と音源をお送りしました。実際に子どもたちが歌ってくれるか不安でしたが、みんなが「歌いやすい」と言って、とても嬉しそうに歌ってくれる姿を見て、とても感動しました。クラスコンサート当日に、プロのソプラノ歌手である平田さんから直接指導を受けると、みんなの歌い方もみるみる変わってきて、先生方と一緒にびっくりして聴いていました。先生方も「とても覚えやすく、子供たちは下校時にも歌ったりしていましたよ」「給食の時間に流すと子どもたちが口ずさんでいますよ」と教えてくださって、そんな子供たちの姿を想像すると幸せな気持ちになりました。この曲がどんどん歌い継がれていってほしいと心から願っています。

クラスコンサートを継続することで見えてきた効果

継続してクラスコンサートを実施していく中で、いくつか感じたことがあります。

一つは子どもたちからの質問の内容が変わってきたな、ということでした。以前は「年齢」とか音楽と全く関係ないことが気になっていたようでしたが、「声はどうやったらそのように出せるのですか?」や「ピアノのペダルを踏むとなぜ音がのびるのですか?」など、すごく音楽的な質問が増えてきたと感じました。聴くことになれてきたことで、より深いところまで興味が行くようになったのだと思います。

それから、クラスコンサートを聴く姿勢、のようなものが変わったことも感じます。何度も経験してきた高学年になるにつれ、子どもたちにとって「コンサートを聴く」ということが、「特別なものを見ること」から「馴染みのあるもの」へと変わっていったように感じました。

拍手のタイミングも継続しているとすごく変わってきて、音楽的に欲しいタイミングで拍手をくれるようになったな!と思うことが多くなりました。最後の音が終わるとすぐに拍手をしたり、周りを気にしてから恐る恐る拍手をし始めるのではなく、音の伸びが終わってからの絶妙なタイミングでの拍手など、拍手も周りを気にせずに自信をもってできるようになっていると感じました。

クラスコンサートを継続していくことによって生まれた「安芸っていいな」という歌は、まさにMade in 安芸。この年月を共有してきた私たちと子どもと学校の先生方あって、初めてできた産物です。この曲が生まれて、子どもたちにも先生方に喜んでもらえて、何年も継続していって本当に良かったと思いました。この曲がずっと歌い継がれて、将来、街角で流れたり、安芸駅で流していただけたり、と発展していけば良いな、と思いました!!

安芸郡芸西村立芸西小学校 校長 大庭雅道先生より

校長会を代表して、学校クラスコンサートツアーの取りまとめをしてくださってた、芸西小学校の校長、大庭雅道先生からもコメントをいただきました。

8年ほど前、デュエットゥのお二人と平田さんに初めてお会いしました。美しい音色や素敵なエピソードなど楽しいコンサートを子ども達とともに味わわせていただくことができました。 コロナ禍になる前には、夜遅くまで音楽談議に花を咲かせたり、土佐のおきゃく(宴会)文化を思う存分味わっていただいたり、楽しい思い出がたくさんあります。

最初のうちは、1校か2校の開催が普通でしたが、だんだんと輪が広がり安芸市内の小学校すべてと、お隣の芸西村まで広がりました。一緒に開催することで、開催日数が増え、演者さん達が高知に滞在していただく時間も長くなりました。そうした中で、より親しみを感じてもらうことができたことも、「安芸っていいな」ができる一助にもなったのではないかと思っています。

私は、今年いっぱいで退任しますが、この関係がこれからも続いてくれることを願っております。どうもありがとうございました。

「安芸っていいな」作曲 木内佳苗/編曲 デュエットゥ
 
デュエットゥ かなえ&ゆかり(ピアノ)

木内佳苗と大嶋有加里によるピアノデュオ。5才からの幼なじみである2人による連弾と2台ピアノを専門とするピアノデュオ。幼少より武田宏子氏に師事。東京音楽大学にて武田真理氏に師事。英国王立音楽院にてピアノデュオ演奏家資格ディプロマを取得。ピアノデュオをロナルド・カヴァイエ&ヴァレリア セルヴァンスキー両氏に師事。留学中にイギリス、ドイツ、ハンガリーなどヨーロッパ各地で演奏し、「包容力豊かにして、躍動感あふれる演奏」(Sternberg新聞評)と国境を越えた賞賛を受けている。 第4回国際ピアノデュオコンクール2台ピアノ部門において特別賞毎日新聞社賞を受賞。同年ブルガリアで行われた第3回「Music&Earth 国際器楽コンクール」ピアノアンサンブル部門で第1位に輝いた。巨匠ジャン・フルネの指揮のもと日本フィルハーモニー交響楽団と協演。翌年イギリスで開かれた「ジャパン2001」フェスティバルにて招待演奏を行い賞賛された。CD「いいことがありそう!」「ボレロ!!」(キングレコード)など5枚をリリース。キューバ大使館の招聘によりキューバの高名なアマデオ・ロルダン劇場にてコンサート、大好評を博す。2012年高松市観光大使に委嘱される。デュエットゥ結成20周年アルバム「いつもとなりで」を発売。年齢問わず連弾愛好者に大人気の、デュエットゥ作曲・編曲楽譜集「踊る連弾・歌う連弾」「笑う連弾・泣く連弾」「ハッピー連弾・ラッキー連弾」「ノリノリ連弾」が音楽之友社より発売されている。今までにピティナ・ピアノコンペティション連弾部門、ヨーロッパ国際コンクールで特別指導者賞受賞を受賞していて後進の指導にも力を入れている。今最も注目を集めるピアノデュオである。 オフィシャルHPデュエットゥ公式ブログ

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