丸の内2025 開催レポート:5/4 明治安田ヴィレッジ 1Fアトリウム
陽光の降り注ぐ明治安田ヴィレッジ1Fアトリウムの2日目では、今年のテーマは「Mémoires ――音楽の時空旅行」にふさわしいバラエティに富んだプログラムが展開されました。南ことこさんによるメンデルスゾーン、神宮司悠翔さんによるショパン、土田彩花さんと田母神夕南さんによるソプラノの美声に続き、トランペット三重奏と伊賀あゆみさんのピアノによる華やかな音が響き渡り、最後は原嶋唯さん・三原未紗子さんによる色彩豊かなラヴェルで締めくくられました。
少し蒸し暑さを感じるお昼過ぎの明治安田ヴィレッジアトリウム。そんな蒸し暑さを吹き飛ばすような爽やかな南ことこさんと神宮寺悠翔さんの演奏で2日目のエリアコンサートが始まりました。まずは南さんによる演奏で、1809年生まれのドイツの作曲家、メンデルスゾーンの「デュエット」と「厳格なる変奏曲」。温かく包み込むようなメロディーに、激しく圧倒されるようなパッセージ、コロコロと変わる音楽の表情に会場が聴き入りました。
続く神宮寺さんは、1810年生まれのポーランドの作曲家、ショパンから2曲。とても軽快な調子の「マズルカ変イ長調Op.24-3」、そして「バラード第1番」は深く重厚でどこか温かさを感じるような音色で劇的に弾き上げ、聴く人を魅了しました。お二人の演奏の後、超満員の会場からは思わず「ブラボー」の声が飛び出す場面も。若いお二人の演奏で19世紀のサロンに導かれ、日々の喧騒をわすれて「音楽の時空飛行」をしたような、そんな素敵なひとときでした。
~演奏者のコメント~
(南ことこさん)たくさんのお客様にいらしていただけると思っていなくて、立ち見まで席が埋まっていてすごく緊張しました。お客様との距離がとても近くて、新鮮な気持ちで弾かせていただきました。
(神宮寺悠翔さん)2年ぶりにここで弾かせていただくことが出来て光栄です。たくさんのお客様の前で今できる最大限のことができたかなと思っていて、すごく貴重な経験となりました。このような場を提供してくださったり、聴いてくださった皆様、本当にありがとうございました。
(レポート◎工藤桃花)
プログラム
春の訪れそのもののような桜と若草色のドレスとともに登場した2人、J.シュトラウスII世の「春の声」の楽しい掛け合いから始まりました。続いてピアノの優しい調べとの調和が際立つ「アメイジング・グレイス」。瀧廉太郎の「花」の紹介では、お気に入りの歌詞を朗読する場面も。L.アルディーティの「口づけ」は憂いを帯びながらも情熱的に。シューベルトのアヴェマリアのどこか静謐な演奏では「イタリアの教会で歌った時を思い出した」とのこと。
イタリアオペラ「ジャンニ・スキッキ」より『私のお父さん』はかわいらしく、フランスオペラの「ファウスト」の『宝石の歌』はつややかなピアノと共にどこまでも駆け上がっていくよう。曲が終わるとともに会場中から盛大な拍手が送られました。アンコールでの「椿姫」より『乾杯の歌』では手拍子の中観客と共に音楽を作っているかのようでした。全てが終わった後、2人お互いを称え合う様子が印象的でした。
~演奏者よりコメント~
(土田彩花さん)このLFJならではの盛り上がり、温かいお客様とご一緒させていただき、楽しく演奏することが出来ました。
(田母神夕南さん)この建物ならではの豊かな響きも相まって、すごくテンション高くコンサートをさせていただきました。
(レポート◎森山智子)
プログラム
作曲者不明:アメイジング・グレイス
瀧廉太郎:花
L.アルディーティ:口づけ
F.シューベルト:アヴェ・マリア
G.プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」より 私が街を歩けば
C.グノー:歌劇「ファウスト」より 宝石の歌
ヴェルディ:歌劇「椿姫」より 乾杯の歌
トランペットの休日はブクステフーデの「Fanfare und Chor」の迫力満点の3重奏で幕を開けました。重井吉彦さんによるドヴォルザークの「家路」のどこか遠く懐かしく感じるような演奏で、使われたのはフリューゲルホルンと呼ばれるとても温かい音のトランペット。
楽器紹介のコーナーでは、フリューゲルホルンを含め、一口にトランペットと言っても音の高さや音色の違う様々な楽器の紹介が。続いて演奏されたのはこの公演の名称になったアンダーソンの「トランペット吹きの休日」で会場は沸きました。
最後にビゼーの「カルメン」より掛け合い楽しい『衛兵の交代』、どこか惑いもあるような『闘牛士の歌』と続き、最後の『前奏曲』では楽しげなリズムに合わせて体を揺らすお客さんも!大盛り上がりの中のアンコールは「トランペットの子守唄」一転夕日の差し始めた会場を包み込む柔らかな音色で終幕しました。
~演奏者のコメント~
(蓬田奈津美さん)今日は東京の街の中で沢山のお客様に演奏を楽しんでいただくということで、私たちも嬉しく、素敵な時間を過ごすことが出来ました。
(伊賀あゆみさん)なかなかないトランペット3重奏との共演でドキドキしましたが、皆さんの熱も感じながら演奏出来て嬉しく思いました。
(レポート◎森山智子)
プログラム
ドヴォルザーク:新世界より第2楽章「家路」 アンダーソン:トランペット吹きの休日
ビゼー:「カルメン」より 1.衛兵の交代 2.闘牛士の歌 3.前奏曲 (アンコール)トランペット吹きの子守唄
桐朋の先輩後輩の間柄という原嶋唯さん、三原未紗子さんのおふたりによるラヴェルです。
原嶋さんは「クープランの墓」からの3曲。揺蕩う花の香りのように美しいプレリュード、かつてクープランのいたヴェルサイユ宮殿が目前に広がる快活で華麗なリゴドン、そしてトッカータの連打の技巧とハープのように流麗なタッチとのシームレスな共存。終演後には、開放的な空間がラヴェルにとてもマッチしていて嬉しい驚きがありました、と幸せそうにお話してくださいました。
「気軽に立ち寄れる場所でクラシックを届けられるこの環境がずっと続いて欲しいです」とお話してくださった三原さんは『鏡』からの2曲を熱演。 MCで『悲しき鳥たち』について、迷子になる鳥たちは鏡に映ると人間で…という話を知ってからイメージや弾き方が変わった、とのお話が。停滞感の中から輝く音が立ち上がると、アトリウムが孤独な都会の不安や疲れを癒す救いの場所のように感じられました。続いてスペイン調のリズミカルな『道化師の朝の歌』を情熱的に華麗に弾ききると、おふたりに満員の客席から大きくて長い長い拍手が送られました。
(レポート◎寿すばる)
プログラム
ラヴェル:「鏡」より“悲しき鳥たち”、“道化師の朝の歌”(三原 未紗子)
写真:春日知明