丸の内2025 開催レポート:5/4 東京ビルTOKIA

ラ・フォル・ジュルネTOKYO2025
開催レポート:5/4 東京ビルTOKIA

2日目の東京ビルTOKIAは、赤松林太郎さんの「幻想と神秘の時空旅行」のピアノ演奏から始まり、トランペット五重奏、モD & ネコフィル RISING STARSによるピアノカルテット、マシュー・ローさんのヴォーカルとピアノと続き、大賑わいのステージが繰り広げられました。夕方には長井進之介さんとシュガーシスターズの懐かしの歌曲で締めくくられました。


幻想と神秘の時空旅行 ~ 音楽が描く記憶と未来
出演:赤松林太郎(p)
当日の様子

赤松林太郎さんの爽やかな朝の挨拶から本日のTOKIAがスタート。会場の形や採光に合わせて選曲をしてくださったという赤松さんの一曲目は、音の刺繍をお楽しみくださいと、優しく温かみあるクープランが風を縫っていきました。次いで、ノアンでの安らぎから生まれたのではないか、とショパンのバラード。優美でありながら徐々に高まる繊細な感情も感じました。

世界の中の日本人のアイデンティティ、とのお話から、武満徹とメシアンを繋いだ『雨の樹』。響き渡る音と、消えゆく残響のあとにくる美しい静寂を堪能しました。ハ短調はシリアス風なだけではなく苦しく困難を伴う、とショパンのノクターンへ。鍵盤が重たくなったかのような苦渋の音が聴こえ、最後はピアソラ。アルゼンチンの貧困や、タンゴを変えまいとする周囲との闘いについてや曲の背景について触れ、これまで美麗な音色だったピアノが、汗と埃と酒の染みついた場末の酒場ピアノへと変貌!赤黒い炎のような熱演に、お客さまからの熱い拍手が鳴り止みませんでした。

MCの中の、音楽が世界を平和にするなんてとても言えないけれど、そう願っています、とのお話がとても印象的でした。演奏後には、(生の音楽の場の中にある)静寂を楽しんでいただけていたら幸いです、大きな音だけではなく「引き算」が大切ですから、と、まっすぐ目を見ておっしゃいました。

(レポート◎寿すばる)

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
クープラン:神秘のバリケード
ショパン:バラード 第3番 Op.47
武満徹:雨の樹 素描II ~オリヴィエ・メシアンの追憶に
ショパン:ノクターン Op.48-1
ピアソラ/山本京子:天使の復活
Five trumpets 五つの煌めき
出演:重井吉彦(tp)刑部望(tp)蓬田奈津美 (tp)鈴木知佳(tp)水流義仁 (tp)
当日の様子

午後のTOKIAに5本のトランペットが鳴り響きました。

はじまりはプレスティのSuite for Five trumpetsより、高揚感いっぱいのイントラーダ。重井さんのユーモアたっぷりなMCを挟み、2曲目は鈴木さんがE♭の小さなトランペットに持ちかえ、アイルランド民謡、ロンドンデリーの歌で会場をあたたかい郷愁で包みました。

ここでトランペットについてのお話。音の元となる唇の振動から、唇にマウスピースを当てたときのオモチャのクラクションのような音、そして楽器につけたときの音、と順を追って変化を聴くことができました。

そして3曲め、マルセル・ケンツビッチ作曲、胃腸薬の主題による4つの変奏曲。あの、金管楽器が目印の胃腸薬のCM曲のメロディーです。目まぐるしく変わる主題を追いかけ、第4変奏での主人公の無事の結末が安堵と祝祭感をもたらしました。なんとケンツビッチとは元N響首席の津堅直弘さん!

全員さいたまに縁がある関係で集まったというメンバー紹介のあと、刑部さんの編曲による3つのタンゴ、そして最後の曲、世界初の有人音速航空機を描写した『X1』での勇ましさやスピード感に観客も大興奮!アットホームでエキサイティングな大盛会となりました。

(レポート◎寿すばる)

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
アイルランド民謡:ロンドンデリーの歌
プレスティ:Suite for Five trumpets
モD & ネコフィル RISING STARS
出演:なで肩のモD 塩﨑基央(p)保科結太 (vn)久保村桃香(va)菅井瑛斗(vc)
当日の様子

ラ・フォル・ジュルネの丸の内エリアコンサートにネコフィルが初登場!

立ち見エリアの最後列までいっぱいのお客さまがお待ちかねでした。

「今日はネコフィルのイチ推しメンバーで来ました。皆様に、この曲を大好きになってもらえますように!それでは、開幕です!」なで肩のモD、こと塩﨑基央さんの元気いっぱいのMCで、150年前のパリのコンサートホール、サル・プレイエルと時空が繋がりました!この初演時のピアノはサン・サーンス本人で、ヴァイオリンを担当したのはツィゴイネルワイゼンの作曲で有名なサラサーテだったそうです。 はつらつと歌う塩﨑さんのピアノと、ミステリアスな保科さんのヴァイオリン、そして伸びやかで深みのある久保村さんのヴィオラと豊潤な菅井さんのチェロが重なり、掛け合い…フランス音楽の発展に情熱を注いだサン・サーンスの、挑戦に満ちた美しさやスリリングさをパワフルにカラフルに描き出しました。 若さほとばしる熱演に会場も大いに盛り上がり、割れんばかりの拍手とブラボーが飛び交いました。

(レポート◎寿すばる)

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
サン=サーンス:ピアノ四重奏 変ロ長調
響きあう時空 ピアノ&ヴォーカル
出演:マシュー・ロー(p・vo)
当日の様子

シンガーソングライターでありクラシックのピアニストでもあるマシュー・ローさんが登場です。

今年のLFJのテーマに合わせ、時空を連想して選曲をしてくださいました。

水彩画のような透明感の吉松隆と武満徹を皮切りに、MCを入れながらシューマンのトロイメライ。夢感たっぷりに、の言葉通り柔らかい音色が奏でられると、遠くから小さなお子さまの声が。終演後には、ホール以外の場所でクラシックを聴く意味やきっかけになる取組が良いとのお話もあり、オープンな丸の内コンサートならではの『子供の情景』でした。

続いてヒナステラの舞曲。年老いたとはいえ衰えないステップを刻む『年老いた牛飼いの踊り』から、雄々しい『ガウチョの踊り』へと一気に駆け抜け、弾き語りに移行。

「クラシック音楽家は過去の作曲家を通していつも時空旅行をしている」だから「クラシック曲と歌うというヴォーカル曲という2空間の時空をつなげたい」と、清涼な歌声でビートルズのナンバーと、学生の頃の戻れない「ぼく」と「きみ」がビターなオリジナル曲をしっとり。

リスペクトを込めたビョークは時空だけでなく性別をも超え、再びオリジナル曲へ。ポケットにしまった太陽とTOKIAのガラス扉から届く陽光がリンクし、幸せな空気が会場を満たしました。

(レポート◎寿すばる)

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
吉松隆:プレイアデス舞曲集III Op.35 より
「聖歌の聞こえる間奏曲」
「過去形のロマンス」
武満徹:雨の樹素描II
シューマン:子供の情景 Op.15より
「トロイメライ」
ヒナステラ:アルゼンチン舞曲集Op.2より
「年老いた牛飼いの踊り」
「ガウチョの踊り」
Blackbird(ビートルズ)
星のない夜に
Unravel(ビョーク)
Portable Sunshine
日本語の美しさと四季の記憶をたどる~姉妹ユニットの歌唱、ラジオプレゼンターのトークと共に
出演:シュガーシスターズ〜佐藤 容子(sop)・佐藤 寛子(mezzo sop) 長井進之介(p、MC)
当日の様子

日没を迎える夕暮れ時の会場では、佐藤容子さん・佐藤寛子さんによる姉妹ユニット「シュガーシスターズ」と、長井進之介による日本歌曲のコンサートが開催されました。

1曲目は、日本人なら誰もが一度は耳にする滝廉太郎の「花」。続く2曲目も文科省唱歌である「茶摘み」と、日本の情景が豊かに描かれた曲が続きます。同じく「アイスクリームの歌」や「シャボン玉」など、めぐる季節の美しさを感じさせるような、そして懐かしい記憶が呼び起こされるような歌曲で構成されたプログラム。シュガーシスターズの表情豊かな朗らかな歌声と、その歌を彩るように支える長井さんのピアノに、いつの日か見た眩い情景や思い出を馳せた方も多いのではないでしょうか。儚い魔法のような時間はアンコールの夕焼け小焼けで締め括られ、日没と共に終演しました。

~演奏者のコメント~
♪長井進之介さん:エリアコンサートは何回か出させていただいて、しかもよくご一緒しているお二人なんですけど、こちらの会場は初めてでした。新しい環境で演奏させていただいてとても楽しかったです。
♪シュガーシスターズ:オープンエリアでグランドピアノがある会場はすごく珍しいので、環境面でも素晴らしいなと思って、感激いたしました。演奏しながら良い景色が見え、すごく集中して、とっても気持ちよく演奏することができました。

レポート◎小原遥夏

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
滝廉太郎:花
文部省唱歌:茶摘み
橋本國彦:お菓子と娘(寛子ソロ)
シベリウス:《5つの小品(花の組曲)》第2曲〈カーネーション〉(長井ソロ)

服部公一:アイスクリームの歌
中山晋平:シャボン玉

山田耕筰:ピアノのための《からたちの花》(長井ソロ)

武満徹:小さな空 (容子ソロ)
マクブルーム:愛は花 君はその種

モーツァルト(坂田晃一・前田憲男編曲):トルコ行進曲

写真:春日知明

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