丸の内2025 開催レポート:5/3 明治安田ヴィレッジ 1Fアトリウム

ラ・フォル・ジュルネTOKYO2025
開催レポート:5/3 明治安田ヴィレッジ 1Fアトリウム

昨日と打って変わっての快晴となった初日、明治安田ヴィレッジ 1Fアトリウムへは多くの観客がつめかけました。北村明日人さんがエロイカ木管五重奏団とピアノ六重奏を、大山桃暖さん・中瀬智哉さん・山本悠流さんは、ほのカルテットとピアノ五重奏を奏で、最終公演では北村明日人さんが精鋭ジュニアヴァイオリニストたちと共演しました。


プーランク:六重奏~パリの記憶
出演:北村明日人(p)エロイカ木管五重奏団
当日の様子

LFJ2025の丸の内エリアコンサート初日!明治安田ヴィレッジのアトリウムは、昨夜の雨と寒さが嘘のような晴天での開催となりました。今年のテーマは「Mémoires(メモワール) ――音楽の時空旅行」です。

今年結成20周年を迎えたエロイカ木管五重奏団の皆さんによる恒例の楽しい楽器紹介のあと、2022年特級グランプリの北村明日人さんと共に1930年代のパリへ。

当時のパリは混迷、狂乱などという言葉でも表され、また戦争直前の激動の時代でもありました。プーランクの六重奏からは、そこで生きる若き芸術家たちの声が聴こえてくるようでした。

北村さんのピアノが路地の新聞紙を巻き上げるような不穏な風を起こす中、次々と管楽器が夢や恋を語ったり、世の中の不条理に抗うように歌います。楽しげで甘いフレーズや、クラクション響く都会の喧騒のような忙しなさ、ジャズの香りのする酒場…まるでプーランクと共にその時代にいるような臨場感。

北村さんとエロイカのメンバーが互いの呼吸を感じながら進める音楽は、時代の荒波と、その中で懸命に生きる人々の逞しさにあふれて、終演には超満員の会場に大きな拍手が鳴り響いていました。

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
<楽器紹介>
プーランク:ピアノと管楽器のための六重奏曲
フランク:ピアノ五重奏~荘厳の美
出演:大山桃暖(p)中瀬智哉(p)ほのカルテット(弦楽四重奏)
当日の様子

昨年の初登場に続き、ほのカルテットの皆さまが登場です。ピアノの大山桃暖さんと中瀬智哉さんによるフレンドリーな自己紹介と曲紹介が会場を和ませたのも束の間、赤を身にまとった岸本さんの悲劇を予感させる痛切なヴァイオリンが響くと、爽やかなアトリウムの空気が重たく一変。19世紀の作曲家フランクの音楽に、21世紀の満員の観客が一気に引き込まれました。大山さんのピアノとストリングスが重たく美しく響き渡り、主題が中頃にひときわ熱く繰り返されると、会場が更なる切迫感と興奮に包まれました。ピアノを中瀬さんに引継ぎ、第2楽章は内省的な岸本さんのヴァイオリンと、厳かに、時に甘美な中瀬さんのピアノが胸を打ちます。長田さんのヴィオラが時折ふわりと引き立ち、林さんのヴァイオリンと蟹江さんのチェロが優しく見守るように寄り添っていました。

そして第3楽章、岸本さんと林さんが勢いよく交互に繰り出すヴァイオリンに息を呑んだらあとはあっという間。終演の瞬間に緊張から解かれた客席は、拍手をするのを一瞬忘れるほど。

ほのカルテットの皆様によると、メンバー全員が初めての曲とのこと!息の合ったスリリングでドラマティックな熱演に会場も大いに沸きました。

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
フランク:ピアノ五重奏曲 へ短調
シューマン:ピアノ五重奏~光と影が紡ぐ無限の詩
出演:山本悠流(p)ほのカルテット(弦楽四重奏)
当日の様子

ほのカルテットの明治安田ヴィレッジでの2曲目は、結婚して数年ほどのシューマンが書いた明るく華やかなピアノ五重奏です。岸本さんは曲に合わせて淡い紫にお召し替え。共演するピアニストは2024年特級銀賞の山本悠流さん。

それぞれの楽器によって何度も繰り返されるメロディアスな主題がとても愛らしく、チェロとヴィオラの見せ場もたくさん!何気なく繰り返される日常も、新婚のシューマンにとってはこんなふうに彩りに満ちていたのかもしれません。爽快な終わりに思わず会場からは拍手が起こりました。

少し憂鬱な雰囲気の第2楽章に続き、第3楽章では山本さんの弾むピアノが駆け上がり、5人の音楽が一層の躍動感と輝きを放ち、客席の熱気も再び上昇。またも大きな拍手が!華麗な第4楽章の終演と同時に、吹き抜けまでいっぱいのお客様から大きな拍手が注がれました。

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44
北村明日人と精鋭ジュニアヴァイオリニストたち
出演:近藤瑠伊(vn)的場桃(vn)北村明日人(p)
当日の様子

若き俊英ヴァイオリニスト、近藤瑠伊さんと的場桃さんが登場。2022年特級グランプリの北村明日人さんが毎年楽しみにしているという共演コーナーです。

1曲目はハリウッドの映画音楽を多く手掛けたワックスマンの作品。ビゼーのカルメンをもとにした幻想曲を、近藤さんが妖美に気高く、時に透き通るほど繊細にと、多彩な音色を使い分けて情熱的に歌いあげました。

近藤さんは終演後、まだまだ自分が理想とするカルメンに届いていないけれど、大好きな曲なので選曲しましたと笑顔でお話してくださいました。

2曲目は北村さんのソロで、1740年代頃のスペインへ。当時、スペインには高音域の鍵盤が多いチェンバロがありました。その音域に合わせスカルラッティが作ったという可愛らしい小品を、北村さんが豊かな響きでリズミカルに奏でました。

最後はメンデルスゾーン。19世紀中頃のドイツに向かいます。的場さんの上品で清麗なヴァイオリンと、オーケストラを担った北村さんの迫力あるピアノとがひとつになって、次第にふたりとは思えない程の熱量に!華やかなハーモニーが響き渡り、観客席からは拍手とブラボーの声が。的場さんは(LFJは)初めての参加で、お客様の反応も温かくとても楽しかったです、と演奏の熱が冷めやらない表情でお話してくださいました。

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
ワックスマン:カルメン幻想曲(近藤)
スカルラッティ:ソナタ ホ長調 K.380 L.23(北村)
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64 第3楽章(的場)

文:寿すばる/写真:春日知明

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