インタビューVol.1:片山柊さん×伊東翔太さん(動画あり)

学校クラスコンサートインタビュー
Vol.1:片山柊さん×伊東翔太さん

学校クラスコンサートに出演してくださった、2017特級グランプリの片山柊さん伊東翔太さんにインタビューしました。ヴァイオリンの伊東さんは、実はピアノでも小学2年生の頃にピティナ・ピアノコンペティションB級で全国大会ベスト賞という経歴の持ち主…!片山さんと東京音大での同級生というご縁で、学校クラスコンサートでの共演、そして3月の入賞者記念コンサートにも室内楽共演者として、ピティナに戻ってきてくださいました。お二人に、学校クラスコンサートに対する想い、ご自身の小学生時代などについてたっぷりとお話を伺いました。

学校の子どもたちへ音楽を届ける時の想い

片山さんは5回目、伊東さんは初のピティナ学校クラスコンサートになりましたが、いかがでしたか?

片山:今回草加市立新栄小学校の4年生の2クラスを訪問させていただきましたが、どちらのクラスもとても真剣に聴いてくれて、反応もよく、こちらもとてもよい体験ができました。

伊東:生徒さんたちが堅苦しくなく、会話しやすい雰囲気を出してくれていたのが、とても嬉しかったです。こちらが質問すれば返してくれて、何かアクションすれば何等かの感情を出してくれる、いい生徒さんがたくさんいるなと思いました。

私は東京都交響楽団としても子どもたちに音楽を届ける活動をしていますが、子どもは大人よりも感情表現がダイレクトに伝わってくるので、「自分もがんばろう」と思えます。今回のように音楽室だとより近くで感じられますね。

学校へ行かれる時にはどのようなことを心掛けていますか?

片山:学校に行く時には、主に3つのことを心掛けています。1つ目は、プログラミングの工夫、音楽の内容で親しみを感じてもらうこと。2つ目は、普段の本番と変わらない意識で演奏に取り組むこと。3つ目は、お話する時は、子供たちと同じ目線に立って、喋るテンポや声の張り方も意識するようにしています。

伊東:自分が子どもの頃、考えを上から押しつけてくる先生には拒否反応を感じ、「同じ目線に立ってくれる先生」が好きだったので、自分が子どもたちの前に立つ時にはそうありたいなと思っています。

プログラムやトークでの工夫

子どもたちに音楽を届ける時に工夫している点はどんな所ですか?

伊東:「子どもたちとクラシック音楽の間の距離を縮めたい」と思っています。クラシック音楽も、もともとはヨーロッパの暮らしとともに、もっと身近にあったものです。ですからトークの時にも、生徒さんが入ってきやすいように、喋り方や内容を意識しています。例えば、作曲家の想いを今の人が言いそうな言い方で言ってみたり、作曲の目的も必ずしも芸術的だけじゃなく、商業的だったり、アピール欲だったり、そういうエピソードを入れることで、そういう人が本当にいて、人とのつながりの中で音楽が生まれたことを知ってもらえたら、同じ音楽でも肌に染みて、親近感を持ってもらえるかなと思っています。

プログラム作りのポイントは?

片山:プログラムを作る時には、まずは対象年齢にとって聴きなじみやすいということ、でもそれだけではなく、音楽を専門的に学んでいる者としてのエッセンスを加えたいと思い、毎回「裏テーマ」を設けています。今回の場合はヴァイオリニストとすごく深い関係があって生まれた曲を集めてみました。また、プログラムが進行していく上で曲の性格にコントラストが出るように意識しています。今回はストラヴィンスキーの「イタリア組曲」のかしこまった形式感ある音楽から、アメリカのジャズといったヨーロッパとは異なる文脈の中で生まれたガーシュウィンの音楽へと、がらりと性格や背景の異なる音楽を紹介しました。

今回は久々に楽器の周りをぐるっと見てくるという企画がありましたね。

片山:感染対策のため、少人数ずつ、滞留せずにぐるっとピアノとヴァイオリンの周りを見て回るという形でしたが、それでも、ピアノの中身を覗いてダンパーが動く様子を見たり、ヴァイオリンの弓の動きやピチカートとの動きの違い、そして何よりもすぐそばで音の響きを聴くなど、近いならではの体験をしてもらうことができました。

伊東:特にこの曲は、お行儀よく座って聴いて欲しい曲ではなかったので、動いて近くで見てもらって、一番距離が近い所で聴いてもらえたことに感動を感じて、こちらとしても嬉しかったです。

子ども時代のピアノとヴァイオリンとの関わり

伊東さんは、小学2年生の頃にピティナのコンペティションB級で全国大会に出場と、ピアノでも輝かしい成績をお持ちですが、ピアノとヴァイオリンはいつから始められたのですか?

伊東:ピアノは4歳から、ヴァイオリンは6歳から習っていました。最初はリトミックを教えてくれていた先生にピアノを習い始め、小学生になって御任克美先生に師事していた時に、ピティナのコンペティションを勧められました。小学6年生の頃から東京音大の附属音楽教室に通うことになり、どちらか専門を選ばなければならなくて最終的にヴァイオリンを選びました。たぶん、当時ピアノの方が弾けていたと思うのですが(笑)、当時母子でハマっていた『のだめカンタービレ』の影響で、ピアノで留学したり仕事を見つけることの難しさ、チームで音楽を作り上げるオケの魅力などを知って、ヴァイオリンを選択したような気がします。

ヴァイオリニストとしてピアニストと共演する時に、ピアノをやってきた影響は感じますか?

伊東:そうですね。自分自身が一生懸命にやっていたので、ピアニストと思考回路的に近く、より気持ちが分かる気がします。弾きたい曲とかも、結構ピアノパートが好きで選んでしまう、みたいなところもあります。

自分が小学生だった頃

コンサートで会う子どもの年齢の頃、ご自身はどのような小学生でしたか?

片山:私はわりと活発な小学生でした。鬼ごっこが好きで、休み時間は校庭か体育館に必ずいるタイプ。運動会もリレーの選手でアンカーをやったりと、走るかピアノか、みたいな子でした。

伊東:私は恐らく片山くんとは対極にいた子でしたね(笑)。幼児期は活発だったのですが小学生の頃はあまり外交的ではなく、限られた仲間うちでコミュニケーションを取るタイプでした。足も速くなくて運動会は大嫌い、サッカーみたいにみんなでやるスポーツも得意ではありませんでした。3,4年生くらいって、ちょうどそういう自分のキャラクターみたいなのが分かってくる時期でもありますよね。

学校でもピアノを弾いたりしていましたか?

片山:校舎には、中庭の近くにみんなが弾けるピアノがありました。小学2年生の頃、母がハマっていた『冬のソナタ』を聴き覚えて学校のピアノで弾いてみたら、上の学年から下の学年まで、ものすごい人だかりになってびっくりしたことがあります。当時から、クラシック以外の色々なジャンルの曲もよく聴いていたので、今回みたいなジャズ風のガーシュウィンなども抵抗なく取り入れることができているのかなと思います。

音楽の教科書の曲は一通り弾いてみましたし、学芸会でも音楽を担当していました。先生に「イントロがなくて合奏を始めるのが難しいので、何か2小節くらい作ってほしい」と頼まれて急遽イントロを作ったり、場面転換の効果音を適当に弾いてと言われたりしていましたね(笑)。そういう風に頼ってくださって、自分が活躍できる場を作っていただいていたような気がします。

小さい頃から作曲もされていたのですか?

片山:作曲というほどではないですが、小学校中学年の頃からソルフェージュを作曲の先生にも習い出して、調音したメロディに和音で伴奏づけをしたり、短い変奏曲にしたりということをして楽しかったのを覚えています。

小学生の頃に聴いた音楽で、印象に残っているものはありますか?

片山:小さい頃からピアニストのコンサートにはよく連れていってもらっていました。私は札幌出身なのですが、ホールにツィメルマンやブーニンが来て聴きに行くと、同世代のピアノをやっている子にも会ったりして、交流する機会ともなっていました。そうしてピアニストの音楽を聴いた経験が、今にも生きていると思います。

伊東:小学生の頃はクラシックに興味があるというよりは、自分の弾く曲を聴くのが主でしたが、『のだめ』にも出てきたブラームスの交響曲第1番を聴いたオーケストラ公演は、今でも覚えています。自分の時には、学校にアーティストが来てくれる経験もなくて、だからこそ今、学校へ行って演奏を届けたいという気持ちも強くあると思います。

身構えたところのない、いいお兄さん、という雰囲気のお二人。これからもぜひ自然体で、子どもたちへ音楽を届ける活動を続けていっていただきたいと思います。たくさんのお話ありがとうございました。

片山柊(ピアノ)

2017年第41回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、併せて聴衆賞、文部科学大臣賞、スタインウェイ賞受賞。
北海道札幌市出身。小樽市で育ち、東京音楽大学(ピアノ演奏家コース・エクセレンス)を首席で卒業、同大学院修士課程を修了し、現在東京音楽大学演奏研究員、桐朋学園大学作曲科に在学。全日本学生音楽コンクールピアノ部門全国大会第1位、ピティナ特級グランプリおよび聴衆賞ほか受賞多数。日本各地のほか欧州での演奏会に多数出演し、東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団ほかオーケストラとの共演も重ね、ソロに限らず室内楽の分野でも積極的に活動している。これまでピアノを武田真理、東誠三、広瀬宣行の各氏、室内楽を藤原亜美氏に師事し、現在作曲を土田英介、加藤真一郎の各氏に師事。

伊東翔太(ヴァイオリン)

東京音楽大学付属高等学校を経て、同大学を特別特待生として卒業。卒業演奏会に出演。第1回全日本芸術コンクール全国大会金賞。第27回日本クラシック音楽コンクールアンサンブル部門弦楽器の部第2位(最高位)。2020飛騨河合音楽コンクール第2位(最高位)。小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩⅥに出演。奨学金を得て、ギルドホール音楽院短期留学プログラム修了。これまでにヴァイオリンを三戸泰雄、篠﨑功子、荒井英治、大谷康子の各氏に師事。現在、東京都交響楽団ヴァイオリン奏者。

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