第45回コンペ 入賞者記念コンサート 出演者インタビュー 芝田 奈々さん・佐藤 和大さん
- シューベルト:《フランスのモティーフによるディヴェルティメント》D823 より 「アンダンティーノと変奏曲(フランスの主題による)」 Op.84-1
デュオを組んだきっかけを教えてください。
芝田さん:大学の同級生であり、お互い弾いたことがあったモーツァルトの2台ピアノのためのソナタを遊び感覚でですが弾いてみようとなったのがデュオを組んだきっかけでした。
佐藤さん:同じ大学に通い付き合うようになったから。
お互いの印象を教えてください。
芝田さん:佐藤くんは稀に見るマイペース、そして楽観的であり自由人です。未だに彼の行動には驚かされる事ばかりで、彼のペースに飲まれないように毎日必死です。笑)そんな彼ですが、音楽にも独特なキャラクターがあって、それは唯一無二のものだなと感じます。その中でちゃんと楽譜を読み客観的に作品を見て音楽を作り上げていこうとするので、あらゆる面で刺激的であり面白い存在です。
佐藤さん:普段はさつまいもが好きで努力家な人です。
しかし音楽のこととなると芝田さんは合わせすぎてしまうため、自分のやりたい演奏よりも相方の私の音楽に偏向してしまうことがよくあります。人に合わせてしまう性格が故に、相手とのバランスや私の音をとてもよく聞いて合わせてくれる反面、だからこそ気が付いたら私の音楽に染まってしまうこともありました。そこが彼女の一長一短なところでもあります。もちろん一人のピアニストとして良いものを持っているので、一緒に音楽を作り上げていく過程はいつも興味深いものです。
入賞者コンサートでの演奏曲について教えて下さい。
芝田さん:ラベック姉妹の録音を2人で聴いていた時に、この作品に一目惚れをし選曲しました。シューベルトは連弾曲を生涯にわたって大切していて、自分たちもその作品の1つを演奏できる事を嬉しく思います。シューベルトはとにかく音楽の素材を沢山生み出した作曲家です。この作品もどこか即興的であり、素朴で美しい歌を感じる作品だと思います。けして派手な部分がある作品ではありませんが、ピアノの音色と音楽の美しさを伝えられるよう勉強していきたいと思っています。
今年度の コンペティションの思い出をお聞かせください。
芝田さん:私は子供の頃から連弾が大好きですが、しかし彼は連弾は(手がぶつかるから)絶対やらない!と言い張ってました。しかし、今回コンクールを受ける事で連弾と向き合うきっかけを頂けて、連弾の面白さを知れたそうで、改めて私もデュオの魅力に気付かされました。このコンペは合わせから本番まで本当に反省点ばかりですが、自分たちにとってかけがえのない機会をくださった先生方とこのコンペティションに心から感謝しております。
佐藤さん:夏のコンクールなので、コンクール後のビールが美味しかったこと。
今年度の演奏曲(課題曲)はどのようにして選ばれたのでしょうか。
芝田さん:ブラームスのハンガリー舞曲第1番は、子供の頃からの憧れの作品でした。大人な雰囲気の作品なのに、どの世代からも愛される、何か特別な魅力を持った作品だと思います。ドヴォルザークのスラブ舞曲Op.46-5は、曲調がブラームスと対照的で、最後ジェットコースターのように落ちて加速していく所が聴いていて楽しかったので選曲しました。
いつか弾いてみたい、憧れの一曲はありますか。
芝田さん:シューベルトの《幻想曲》D940 です。最晩年の作品であり、暗く寂しく絶望的で、何かに訴えかけるような強い想いも感じる作品です。普段から『幻想』と付いていると自然と聴いてしまうのですが、この作品を初めて聴いた時、こんな素敵な作品があったのか…!とびっくりして、その日からずっとこの作品を弾く事が私にとって1つの目標となりました。
佐藤さん:シューベルトの幻想曲。数多のクラシック音楽作品の中でもこの『幻想曲』やベートーヴェンの『運命』、ショパンの『雨だれ』といったいくつかの作品は、これらのメロディーがまるでその作曲家が生まれる前から歴史的に発生することが決まっていたかのように感じる作品であり、音楽の真髄をわかりやすく含有しているから。
ご自身の長所・短所(伸ばしたいところ)をどう捉えていますか。
芝田さん:やる気と根性は常に持ち続けたいと思っているのですが、効率的に動けなくて気持ちだけ先走って物事が空回りしてしまう所、すぐ悲観的な考え方をしてしまう所が自分の直したい所です。彼が正反対なので、ある意味バランスは取れていますが(笑)
佐藤さん:完璧主義なゆえにギリギリまで練習しない癖があるところ。夜型すぎること。朝起きれないこと。ゲーマー。
好きな音楽家、憧れの音楽家はいますか。
芝田さん:私たちの先生でもある、加藤真一郎先生です。
先生が作曲した2台ピアノの作品を少しだけ聴いたことがあって、始まった瞬間から最後までずっと美しくて、感動しました。先生方のデュオのCDも何度も聴いてしまいます…!音楽の素晴らしさをとにかく沢山教えてくださる先生です。音楽家として、先生として、心から尊敬しております。
佐藤さん:ミケランジェリ。
誰でもある作品を演奏していて「こんな感じ」や「こんな情景」というのが脳裏によぎるかと思います。しかしながら、ベートーヴェンやシューベルトの後期の作品、ショパンのソナタなどの作品を演奏しているとき、それを自身の経験則に基づいて言葉に変換してしまうことさえも憚れるようなそんな経験をするかと思います。同じように今出版されている書籍やCDを元に彼の魅力を伝えるのはできません。理由は彼の音楽そのものです。
ピアノを弾いていて良かった、と思う瞬間はどんな時ですか。
芝田さん:最近は自分の演奏を聴いて、家族が嬉しそうにしてくれた時です。昔も今も音楽を続ける厳しさを教えてくれていますが、勿論1番近くで応援してくれているのも家族だなと感じます。
佐藤さん:ミケランジェリに近い音を出せたとき。
最近感動したことは何ですか。
佐藤さん:新幹線の肘置きみたいなところに電源のアウトレットが付いていて充電できたこと。
最近のマイブームは何ですか。
芝田さん:お誕生日に寒がりな私に家族がプレゼントしてくれた熊の着ぐるみのパジャマを着て、あったかくして眠ることです。気を抜くと全く起きれないのです(笑)
佐藤さん:ごぼう茶。
この舞台を経て、10年後、あなたはどんな人になっていると思いますか。
芝田さん:合わせの時は喧嘩ばかりですが、お互いの事をきっとどこかで尊敬していて、音楽が大好きな事は同じです。10年後もデュオを弾き続けていることができていたらとっても幸せなことだなと思います。一つ一つの目標を大切にしながら、頑張っていきたいです。
佐藤さん:成功してると思います。