丸の内2026開催レポート:5/4丸ビルマルキューブ

丸ビルマルキューブにて、5月4日に4つの公演が行われました。ベートーヴェンとショパンのピアノ協奏曲で幕を開け、小原孝さんのトークを交えた水辺の音楽、特級受賞者2人によるジョイントコンサート、そして津野絢音さんとほのカルテットによる重厚なブラームスへと、朝から晩まで多彩な音楽が会場を彩りました。
出演:坂下幸太郎(p)、原田佐和子(p)、タクティカートオーケストラメンバーによる弦楽五重奏(str)
本日最初の演奏が始まる30分以上前のリハーサル中から、丸ビル1階には観客が大勢集まっていました。今回は弦楽五重奏とピアノによる協奏曲ということで司会者から「ベートーヴェンやショパンの時代は今よりもオーケストラは小規模であり、今回の形に近かったかも」との紹介。
一曲目は坂下幸太郎さんソリストでのベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番第1楽章。オケパートを務めたタクティカートオーケストラの弦楽器の皆様は、弦楽器のみで管楽器パートも弾き分け奥行きを作りだし、粒立った端正なピアノを暖かくしっかりと支えていました。
二曲目は原田佐和子さんソリストでのショパンのピアノ協奏曲第1番第1楽章。冒頭弦楽器の美しい音色によって道筋が創られ、そこに重ねられてゆく優美なピアノの音色が穏やかな弦によって受け止められ、美しい時間が紡がれていきました。
~演奏者のコメント~
♪坂下幸太郎さん:今日はまず会場に来た時にとても綺麗で弾くのがとても楽しみでした。ヴァイオリンや他の楽器と合わせてその掛け合いを楽しんで弾けたと思います。ありがとうございました。
♪原田佐和子さん:こういう会場で弾いたのは初めてでした。本当に2階3階4階まで沢山の人が聴いてくださっているのが見えて、すごくアットホームな感じがして、緊張はしましたが、でも良い緊張で弾けました。
(レポート◎森山智子)
プログラム
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11 第1楽章(原田)
※いずれも弦楽室内楽伴奏版
出演:小原孝(p)
陽光に照らされた新緑が揺れる中で繊細に煌めくピアノが鳴り響き、小原孝さんによるミニコンサートが始まりました。28年目に突入した大人気ラジオ「弾き語りフォーユー」の形式で、トークと共に進行していくコンサート。今回のLFJのテーマ「LES FLEUVES(レ・フルーヴ) ―― 大河」に沿ったプログラムで、二階の吹き抜けまで集まったお客さんの心を安らぎに導きます。
日本の童謡の演奏、そして弾き語りの場面では、ピアノ演奏と合唱するという生演奏ならではの場面もあり、会場は穏やかな空気に包まれました。
アンコールは毎年恒例の「ボレロ」。小さな呟きのように始まったメロディが徐々に広がっていく演奏に、会場からはあたたかな拍手が送られました。
~演奏者のコメント~
♪小原孝さん:大きな場所での演奏だったので、いつものコンサートとは全く違う気持ちでした。良いお客さんにも恵まれて、いつもより楽しく演奏できました。
(レポート◎小原遥夏)
プログラム
モルダウ
水の影/松任谷由実(弾き歌い)
出演:三井柚乃(p)、高見真智人(p)
行き交う人たちが賑やかなカフェタイムの丸ビルマルキューブに登場したのは、特級2025ファイナリストの高見真智人さんと、特級2023銀賞の三井柚乃さん。対照的な表現を持つ2人の演奏のコントラストが聴く人を楽しませました。
最初に登場したのは軽やかで繊細な表現が魅力的な高見さん。バッハの対位法の美しさや、スカルラッティの可愛らしい旋律を心から楽しんで演奏する姿に、聴いている私たちの心も躍ります。
続いては高見さんの煌びやかな音色が光るショパンの3つのエチュード。黒鍵のエチュードでは、下降音階の部分で「ここがたまらないんだよね」と言わんばかりの表情です。
プログラムの最後を飾るのは、超絶技巧で知られる現役のロシア人ピアニスト、ヴォロドス編曲版のモーツァルトのトルコ行進曲。それまでの演奏からは一変したダイナミックな表現で聴く人を驚かせました。
続く三井さんは、奥深く情感たっぷりの演奏が魅力的なピアニスト。1曲目のシューマン=リストの「献呈」では、優しさに溢れた表現で、新緑のマルキューブの会場をあたたかく包み込みました。
バッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」では、冒頭から三井さんらしい重厚に響き渡るオルガンのような低音で会場の雰囲気をガラリと変えます。ご本人の「重々しい雰囲気の中にも救われる瞬間がある」との言葉通り、濃密で深みのあるニ短調の旋律からニ長調に転調する中間部では、荘厳さの中にもあたたかみのある救いの表現を覗かせました。
実は高校の同期だという高見さんと三井さん。演奏のタイプこそ違えど、共に学校生活を過ごし、ピティナに挑戦してきたというお2人の仲の良さが印象的でした。ジョイントコンサートもまたぜひ一緒にやりたいとのこと。「その時には同じ曲に挑戦してみたいね」なんて話も聞かせてくださいました。アンコールの「トレパーク」は2人の表現の対比が面白く、いつかまた2人のコンサートが聴ける日が楽しみになるような終わりとなりました。
(レポート◎工藤桃花)
プログラム
J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻第3番 嬰ハ長調 BWV848(前奏曲とフーガ)
D.スカルラッティ:ソナタ ト長調 K.427
ショパン:3つのエチュード Op.10-1、Op.10-5 変ト長調「黒鍵」、Op.10-8 ヘ長調
モーツァルト=ヴォロドス編:トルコ行進曲
シューマン=リスト編:献呈 S.566
J.S.バッハ=ブゾーニ:シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータより)
(アンコール)チャイコフスキー:組曲「くるみ割り人形」より トレパーク
出演:津野絢音(p)、ほのカルテット~岸本萌乃加(vn)、林周雅(vn)、長田健志(va)、蟹江慶行(vc)
ピアニスト、津野絢音さんとほのカルテットによる「ブラームス五重奏曲」。狂おしく悲劇的なメロディで幕を開けました。嘶くヴァイオリンを、唸るようなビオラとチェロが重厚に下支えします。
各声部が役割を引き受けては解き放たれ、時に激しくせめぎ合いながら、次の瞬間には示し合わせたかのように呼吸を揃え、同じ運命へと疾走する――その緊張と一体感は圧巻でした。
津野さんが情熱的な音色を響かせつつも、個々の弦の響きへと途切れることなく耳を澄ませていることが伝わってきます。その集中が、音楽にいっそうの奥行きをもたらしていました。
終始ブラームスらしい悲劇的な切迫感と、暗雲を貫く雷光の中にその魂を込めたような演奏。聴衆の胸をえぐるような、崇高な切実さに満ちていました。
ほのカルテットとしてブラームスに取り組むことも、津野さんとの共演も初めてだったとのこと。この大曲を手掛けた経験を経て、ほのカルテットの蟹江慶行さんは津野さんのことを、「表現力と余白のある、素晴らしいピアニスト」と語ってくださいました。
津野さんは、過去の特級の受賞者がほのカルテットと演奏しているのを聴いていらしたそうで、「ついに自分の番が来たことが嬉しかった」と振り返ります。「難しい作品でしたが、ほのカルテットさんとこの曲に取り組めたことが、本当に貴重な経験になりました」と晴れやかな笑顔で話してくださいました。
(レポート◎山平昌子)




















