丸の内2026開催レポート:5/3新丸ビル3Fアトリウム

新緑の陽光が降り注ぐ新丸ビル3Fアトリウムにて、本会場の初日公演が行われました。前半は、10代のピアニストたちがショパンを起点に“音の大河”を描き、時代を越えて流れる音楽の系譜を瑞々しく立ち上げました。続く後半は、ブルグミュラーとファリャに焦点を当てたトークコンサート。言葉と演奏が交差しながら、異なる時代や文化へと聴き手を誘う、多彩なひとときとなりました。
出演:畠山咲菜(p)、中山まどか(p)、安藤りこ(p)
今まさに大きく羽ばたこうとしている10代のピアニストたち。新丸ビル3階のアトリウムには、彼女たちの演奏を目当てに、早くから多くの観客が詰めかけました。
開演時間を過ぎても、ステージではまだ調律が続いています。リハーサルの白熱ぶりで、なんとピアノの弦が切れてしまったとのこと。大勢の観客が見守る中、わずかな遅れで仕上げた調律師さんに、会場からは温かな拍手が送られました。
トップバッターは畠山咲菜さん。ショパンの《ノクターン第17番》で幕を開けました。晩年のショパンのこの世への決別と断ち切れぬ想いの移ろいのようなメロディを、彼女は美しく、そして切なく語りかけます。続く《マズルカ Op.24-2》では、翳りを含んだ音色の中に確かなマズルカのステップが刻まれました。激動のラフマニノフ『楽興の時 第4番』においても、繊細でナイーブなピアニッシモが響くたび、商業施設のざわめきの中に不思議な静寂が生まれていくのが印象的でした。
続いて元気に登場したのは、中山まどかさん。ショパンのエチュードでの軽やかな指使いに続き、グノー=リスト編の歌劇『ファウスト』のワルツが始まると、空気は一変します。力強いファンファーレから華やかで晴れやかな響きへ。窓の外に広がる東京の景色と呼応するように、音色がキラキラと輝きました。
ラストを飾ったのは安藤りこさん。静謐な《ノクターン第5番》でしっとりと聴衆を惹きつけると、続くプロコフィエフの《サルカズム》では一転、鋭い感性を爆発させます。エネルギッシュでありながら、一音一音、そして休符の瞬間にまで明確な意図を感じさせる構成力。フィナーレのホロヴィッツ編《カルメン変奏曲》は、あのラフマニノフすら難しすぎると評した超絶技巧の難曲。目にも止まらぬ速さで鍵盤を駆け抜ける指が、妖艶で情熱的なカルメンの魂を余すところなく描き出し、会場は熱狂的な拍手に包まれました。
それぞれの瑞々しい感性の中に、脈々と流れるクラシック音楽の系譜を確かに感じることができた、贅沢なひとときでした。
(レポート◎山平昌子)
プログラム
ショパン:ノクターン第17番 ロ長調 Op.62-1
ショパン:マズルカ ハ長調 Op.24-2
ラフマニノフ:楽興の時第4番 ホ短調 Op.16-4
ショパン:エチュード ヘ長調 Op.10-8
グノー=リスト編:歌劇「ファウスト」のワルツ S.407
ショパン:ノクターン第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
プロコフィエフ:サルカズム Op.17 より 第1曲「嵐のように」、第5曲「激しくせきたてるように」
ホロヴィッツ:ビゼーのカルメンの主題による変奏曲
出演:飯田有抄(MC)、西本夏生(p)
西本夏生さん(ピアノ)と飯田有抄さん(MC)が、今年節目を迎える二人の作曲家、ブルグミュラーとファリャに、バレエや踊りの音楽、セレナーデという切り口で迫りました。
前半はブルグミュラーということで、ピアノ学習者にはお馴染みの『25の練習曲』から3曲を演奏。とくに「スティリエンヌ」は、バレエ音楽を得意としたブルグミュラーらしい軽やかな舞踏の場面を想起させます。今年のLFJのテーマ「大河」にちなんだ「ゴンドラの船頭歌」は、解説通り、船頭の鼻歌のようなのびやかで温かな響き。「セレナーデ」の哀愁漂う美しさも印象的でした。
後半はファリャ。西本さんからの曲紹介もあり、「ホタ」などの内に秘められた情熱的な響きからスペインの情景が漂います。「火祭りの踊り」では、時々不気味さをのぞかせつつ、高揚感が増していきました。最後は、「ぜひ西本さんに演奏してほしい」と飯田さんが語った、ヒメノ「エリーゼのために」。ベートーヴェンの名曲が、気づけばラテンの響きへと鮮やかに変わりました。
二人の作曲家を通じて、異なる時空間への誘いを存分に楽しめるひとときとなりました。
~演奏者のコメント~
♪西本夏生さん:たくさんの方に演奏を聴いていただいて、あたたかい感想もいただいて盛り上がったので、とても嬉しかったです。
(レポート◎飯島帆風)
プログラム
18の練習曲より「ゴンドラの船頭歌」「セレナーデ」
ファリャ:7つのスペイン民謡より「ムーア人の織物」「ホタ」
アンダルシアのセレナーデ
恋は魔術師より「火祭りの踊り」
ヒメノ:エリーゼのために〜ラテンバージョン〜
