レポート:特級ガラコンサート2025「THE LAST SONATAS」

第49回ピティナ・ピアノコンペティション特級ガラコンサート「THE LAST SONATAS」
  • 2026年2月11日(祝)14:00開演
  • J:COM浦安音楽ホール(共催)
  • 稲沢朋華、津野絢音、加藤皓介、高見真智人(ピアノ)
  • 文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(芸術家等人材育成))|独立行政法人日本芸術文化振興会
  • コンサート情報
    当日のプログラムPDFはこちらから
特級ガラコンサート2025「THE LAST SONATAS」開催レポート

特級ファイナリストの4人が、1つのテーマのもとにコンサートを創り上げる「特級ガラコンサート」が、2月11日、二次・三次予選の会場でもあるJ:COM浦安音楽ホールで行われました。

特級ファイナリストが集う「ガラコンサート」は、ある1つのテーマをもとに4人がそれに沿ったプログラムを繋げて大きなストーリーを紡いでいく、この日だけのための特別企画で、2021年にこの形となってからすっかり企画が定着しています。お客様にもそのストーリーを楽しんでいただきながら、出演する若いピアニストたちにとっても、キャリアの大切なターニングポイントである今、最も勉強になる作品を選び、大きな経験となるように企画しています。

今回は、グランプリの稲沢朋華さんが、Pre特級・特級と2年にわたってシューベルトの最後のソナタ(第21番)に取り組み、音楽的にも人間的にも大きな財産を得たことをヒントに、4人の作曲家の「最後のピアノソナタ」を集め、「THE LAST SONATAS」と題して行われました。稲沢朋華さん(グランプリ)、津野絢音さん(銀賞)、加藤皓介さん(銅賞)、高見真智人さん(入選)が、それぞれブラームス・ショパン・ベートーヴェン・モーツァルトの最後のピアノソナタを演奏し、詰めかけた多くの聴衆から大きな拍手を浴びました。

トップバッターは高見真智人さん(入選)によるモーツァルトの第18番 K.576。
モーツァルトに強いシンパシーを感じる高見さんならではのフレッシュな表現で幕を開けます。

続いて昨秋の日本音楽コンクールで優勝した加藤皓介さん(銅賞)のベートーヴェン第32番。
唯一無二の孤高の世界に潔く立ち向かい、清々しく巨峰を登り切りました。

後半は津野絢音さん(銀賞)によるショパンの第3番ソナタ。
強く憧れてきたこの作品を、誇り高く気品をもって描き切りました。

最後はグランプリの稲沢朋華さんによるブラームスの第3番。
他の3曲と異なり、若書きにして最後のピアノソナタであるこの作品は「特級という道のりの終わりに立ちながら、ここが音楽家人生のスタートライン」という4人の立ち位置を象徴しています。誠実さと情熱が詰まった熱演で大作を描ききりました。

演奏終了後、4人から一言ずつ御礼のコメントと、代表して稲沢さんからこの企画に取り組めたことへの感謝の言葉が述べられました。

アンコールに、津野さん・高見さんによるブラームス「ワルツ」、稲沢さん・加藤さんによるJ.S.バッハ=クルターク「神の時こそいと良き時」が連弾で演奏されて、大きな拍手の中で4人が全力で取り組んだ「2025年特級」が締め括られました。

それぞれに難しい内容を持つ古典派・ロマン派を代表するピアノソナタの傑作に挑み、終演後の4人には安堵と喜びの笑顔が浮かびました。真冬の浦安で、4人の晴れやかな笑顔が印象的なガラコンサートとなりました。

レポート◎加藤哲礼
写真◎木川宗一郎

稲沢朋華さんより

2次予選・3次予選で演奏したJ:COM浦安音楽ホールに、4人で再び戻り演奏するという、私にとってとても感慨深いコンサートとなりました。Pre特級から特級までの2年間、シューベルトの最後のソナタと向き合う中で、人との出会いへの感謝、そして自分の心を浄化してくれるような音楽の力を確かに感じた、非常に濃い時間を過ごしました。弾き続けていけばすべてが自然と腑に落ちていくというわけではなく、むしろ新たに自分に問いかけたいことや悩みが増えていくこともありましたが、決して悲しいことではなく、そのように迷いながら向き合う時間もまた、人間らしく貴重で尊いものだと感じています。今回は若きブラームスが書いた《ピアノ・ソナタ第3番》を演奏しました。20歳のブラームスの情熱と誠実さに向き合えたことは、私にとってかけがえのない経験となりました。

そして、特級を通して出会った仲間と、このような舞台で再び演奏できたことを何より嬉しく思っています。この素晴らしいご縁に心から感謝しています。まだ長い道のりの途中にいる私たちですが、今回の「ラストソナタ」が皆さまの心にそっと残り、ふとした瞬間に背中を押すような存在となっていましたら嬉しく思います。

稲沢朋華

津野絢音さんより

2月11日には特級ガラコンサートに出演させていただきました。夏のコンクール以来、半年ぶりに入賞者4人で再び同じ舞台に立つことができ、大変嬉しく思っております。

今回の演奏会では、以前から強い憧れを抱いていたショパン《ピアノ・ソナタ第3番》に本格的に向き合い始め、この機会に皆さまの前で演奏できたことは、今の私にとってとても大きく、かけがえのない経験となりました。また、コンクールの二次・三次予選を演奏した思い出深い浦安のホールで再び演奏できたことにも、特別な感慨を覚えました。

あれからまだ半年余りしか経っていないことが信じられないほど、この数か月は目まぐるしく過ぎていきましたが、振り返ってみると多くの経験や学びに満ちた時間だったと感じています。久しぶりに再会した入賞者の3人とは、会っていなかった時間を感じさせないほど自然に言葉を交わすことができ、同じ時間を駆け抜けてきた仲間として、改めて心強い存在だと感じました。アンコールでは高見くんと連弾をさせていただき、音楽的なアイディアをたくさん共有しながら演奏できたことも、とても印象深い時間でした。

また、コンクール期間中から応援してくださっていた皆さまに演奏を聴いていただき、サイン会では直接お声をかけていただけたことも大変嬉しく、改めて多くの方に支えていただいていることを実感いたしました。

このような貴重な機会をくださったピティナの皆さま、温かく支えてくださったホールスタッフの皆さま、そして会場や配信で演奏を聴いてくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。

津野絢音

加藤皓介さんより

4人で創り上げる「ラストソナタ」の舞台。まずは、貴重な課題と機会を下さいましたことに心から感謝申し上げます。この年齢でベートーヴェンの32番に向き合えるチャンスをいただけたこと、取り組むのは大変でしたが、何よりも宝物をいただいたような不思議な感覚と同時に、うれしさと喜びも感じておりました。この舞台で初出しとなりましたが、今後人生をかけて32番及びベートーヴェン全てに向き合っていけたら幸せです。そして、2人ずつの連弾、何よりもいただいた曲が2人ずつのコンビにピッタリだったと思います。4人で舞台に並んで挨拶をしたり、終演後はサイン会や写真撮影など、貴重な機会をいただき誠にありがとうございました。

これからも作品に真摯な気持ちで向き合い、一つ一つの舞台をお客様と共に味わい創り上げていけるようなピアニストを目指して頑張っていきます。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

加藤皓介

高見真智人さんより

演奏前は、「モーツァルト最後のピアノソナタ」という大きな位置づけを持つ作品であること、そして今回共演させていただいたファイナリストの皆さんが、それぞれ豊かな個性と高い構築力、卓越したテクニックを持った素晴らしい演奏をされる方々であることから、大きな緊張と不安を感じていました。また、この舞台は自分が以前から憧れて何度も客席で見てきた場所でもあり、聴きに来てくださるお客様にとって印象に残る演奏ができるのかという思いも強くありました。

しかし、この作品がモーツァルトの最後のソナタであること、そして作品の中にこれまでのソナタを思わせる様々な要素が含まれていることに改めて気づいてからは、少しずつ自分なりの解釈を整理することができました。バッハやベートーヴェンを思わせるような書法も感じながら、楽譜に書かれているイントネーションやモチーフの性格を自分なりに考え、各楽章のキャラクターの違いを表現することを意識して演奏しました。本番ではテクニック面でいくつか反省も残りましたが、それぞれの楽章の音楽的な性格やモチーフの対比は、自分なりに伝えることができたのではないかと思っています。これからもこの作品に何度も向き合い、さらに完成度を高めていきたいと感じました。

また、他のファイナリストの皆さんの演奏からも多くの刺激を受けました。自分の演奏した作品よりも難易度の高いプログラムを、高い完成度で演奏されている姿に大きな刺激を受け、これからもお互いに高め合いながら歩んでいきたいと強く感じました。特に、加藤くんのベートーヴェン、津野ちゃんのショパン、そして稲ちゃんのブラームスへと続く流れはとても印象的で、その後の連弾のアンコールもブラームスの響きから自然につながり、最後はバッハの音楽で静かに締めくくられたことで、会場全体が浄化されるような感覚を覚えました。

このように、出演者全員で一つのコンサートを作り上げ、温かい雰囲気の中で終えることができたことをとても嬉しく思っています。

高見真智人

【広告】