レポ:11/11 南三陸町立志津川小学校クラスコンサート(伊賀あゆみpf・鈴木舞vn)
11月11日には、仙台おりひめステーション代表の武内園子先生のコーディネートにより、宮城県南三陸町立志津川小学校にてピアニストの伊賀あゆみさん、ヴァイオリニストの鈴木舞さんが学校クラスコンサートが開催されました。東日本大震災の直後にこの地へ慰問演奏に訪れたという伊賀さんと武内先生にとって、特に感慨深い再訪となりました。武内園子先生、伊賀あゆみさん、鈴木舞さんからのレポートとメッセージをお送りいたします。
2025年11月11日(火)南三陸町立志津川小学校でピアニスト伊賀あゆみさんと、ヴァイオリニスト鈴木舞さんによる学校コンサートを実施しました。
当日は秋晴れのとても良い天気でした。

コンサートを聴いたのは5年生28人、6年生27人のみなさんです。この地域ではコンサートが開かれることが少なく、児童のほとんどはクラシックの生演奏を聴いたことがありませんでした。
最初の曲はヴュータン作曲「アメリカの思い出」(ヤンキードゥードゥルによるおどけた変奏曲)でした。前半のシリアスなヴァイオリンソロでは「振動が来た」と驚きの声が上がり、途中からヤンキードゥードゥルにメロディ―が変わると児童の皆さんは体を動かしながら楽しんでいました。
伊賀あゆみさんのピアノソロは「好きな場所で聴いて良い」ということになりました。みんなはピアノの周り、ピアノから遠いところなどで思い思いの場所に移動しながら自由に演奏を楽しみました。

演奏をとても近い位置で見た皆さんからは「ペダルは何のためにあるの?」「弦が切れることはありますか?」「大きい音はどうやって出すのですか?」などの質問が飛び交い、演奏者のおふたりは一つ一つ丁寧に説明してくださいました。
また、伊賀さんが持ってきてくれた実物大の「ショパンの手」に、みんな興味津々でした。


鈴木舞さんのヴァイオリンは340年前にイタリアの「アマティ」が製作した楽器でした。とても長い歴史のある楽器だという事にみんなは驚いていました。
「愛の悲しみ」の演奏前には、この曲の中に「悲しみ」「出会いに感謝する気持ち」「楽しかった思い出」など様々な部分が登場するというお話を聞き、その後の演奏では、それぞれの心にたくさんのイメージを膨らませながら聴きました。
皆さんからは、ヴァイオリンはどうしてそういう形なの?など楽器の構造に関する質問も出てきて、音が出るしくみに興味津々の様子でした。

他にも、モンティ「チャルダーシュ」に感動した。手拍子で共演した「ラデツキー行進曲」がとても楽しかった。「ヤンキードゥドゥル」では振動が来た!「奏者の表情や動きで音楽の感情が表されている」などたくさんの感想が飛び出しました。
≪最後に≫
南三陸町は2011年に発生した東日本大震災で大きな被害を受けました。志津川小学校は高台にあったため、学校に避難していた皆さんは無事でしたが家族や家を失った方も少なくありませんでした。
皆が辛かった時期に伊賀あゆみさんは、福田専務理事、早稲田桜子さん(Vl)と一緒に、避難所となっていたホテルなどを訪問し、音楽で人々の心を癒してくださいました。現在の小学生の皆さんは震災を経験していませんが、今回の学校クラスコンサートを通して「音楽」の素晴らしさを実感してくれたと思います。

本部事務局の皆様、演奏者の皆様ありがとうございました。
仙台おりひめステーション 武内園子
武内園子先生のご尽力により実現することができました今回の志津川小学校でのコンサートですが、この地区は2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた地域でもあります。震災直後にも武内先生にお世話になり、南三陸を訪れ、避難所にもなりましたホテルで演奏させて頂いたりしましたので、今回も特別な想いで訪れました。前日には、演奏させていただいたホテルを再び訪れることもできました。
志津川小学校の5,6年生は、皆さん明るく感性も柔らかで、熱心に演奏に耳を傾けてくれたり、こちらの質問にもたくさん答えてくれました!教室のあちこちで音を体感して響きの違いを感じてもらいましたが、ピアノのそばでは、音楽に合わせて体を動かしてくれたり、表情や指の動きも熱心に見てくれました。楽器についても、ヴァイオリンやピアノの細かいところまで見て、様々な奏法にも気付いたり、音の表情の違いも感じてくれたことが心に残りました。最後には「ラデツキー行進曲」で皆さんの手拍子とヴァイオリン・ピアノとの共演体験をし、武内先生にも指揮でご参加いただきました。

また、コンサートの前後には、教頭先生が目の前で起きた津波の被害についてなど、思い出すのも大変お辛いことだと思いますが、震災当時の状況を私たちにお話下さいました。そして、復興に向けて地元の方々のたくましさも語って下さいました。 14年経っても地元の方々の記憶は鮮明で、まだまだ傷は癒えることはないと思いますが、私たちはいつまでも心を寄せ続け、自分たちのできることをできる形で続けていきたいと思います。

伊賀あゆみ
南三陸を訪れるのは初めてでした。
震災を経験された先生から当時のお話を伺い、受け継がれていく命や、そこから生まれる前へ進む力に思いを馳せながら、子どもたちと向き合う時間がいつも以上に特別なものに感じられました。
子どもたちは真剣なまなざしで耳を傾け、積極的に発言したり、演奏後には次々と質問をしてくれました。音楽や楽器への関心をまっすぐに向けてくれるその姿に、素直さと柔らかな感受性を感じ、胸が温かくなりました。その率直な反応に触れ、むしろ私のほうが多くの力をいただいたように思います。
トークの中では、音楽は楽しい時も悲しい時も、どんな時にも寄り添ってくれること、そして音楽の感じ方には“正解”がなく、一人ひとりが自由に受け止めていいのだということをお話ししました。音を通して自分の気持ちを見つめたり、誰かの想いを受け取ったりする経験を大切にしてほしいと願っています。

今回のコンサートが、少しでも子どもたちの心に残る時間になっていたら嬉しく思います。
鈴木舞
ヴァイオリンやピアノを生で聴く機会がほとんどない児童にとって、とても貴重な機会でした。最初は初めての体験に驚いている様子でしたが、演奏が進むにつれて、表情が豊かになり、リズムに合わせて体を動かす子や、身を乗り出すようにして音色に聞き入っている子もいました。ヴァイオリンが演奏しながら近くまで歩いてきてくださった時の児童の様子が印象的でした。参加した教員からも、ヴァイオリンの音色が柔らかい音色であったことや表現の奥行きが素晴らしかったとの感激の声が寄せられました。最後の「ラデツキー行進曲」は手拍子で参加することができて楽しかったです。また機会がありましたらよろしくお願いします。



