丸の内2025 開催レポート:5/5 東京ビルTOKIA

ラ・フォル・ジュルネTOKYO2025
開催レポート:5/5 東京ビルTOKIA

東京ビルTOKIAの最終日は、飯田有抄さんMCと倉田莉奈さんのピアノで綴る「ロシアの小さな宝石たち」、松田悠さんのヴァイオリンと梅村知世さんのピアノによる「ドイツとウィーン、響きの旅」、田口尊啓さん、八尋俊司さん、岡部那由多さんらがスケルツォ3曲を演奏する「ショパンをたどるメモワールⅢ」、小原孝さんによる「昭和~平成~令和 ピアノで語るデビュー35周年の時空旅行」と、実に多彩なプログラムが展開されました。


ロシアの小さな宝石たち
出演:飯田有抄(MC)ゲストピアニスト倉田莉奈(p)
当日の様子

最終日のTOKIAはLFJ2025のテーマに合わせて飯田有抄さんとロシア旅行!ゲストピアニストは倉田莉奈さんです。こどもの日なので倉田さんのお腹の赤ちゃんも参加します♪と飯田さん。アットホームな雰囲気に会場も和やか。

初めはリャードフの可愛らしい『オルゴール』。金平糖のような可愛い音が規則正しく次々飛び出します。続いてキュイ。慈しみ深い弱音から熱いフレーズまで全てが芳しく優美でした。12ヶ月の詩を音楽にしたチャイコフスキーの『四季』からは3曲、詩の朗読(日本語訳:倉田さん)とピアノをセットでお届け。ロシアの5月は氷の融ける様子や土の大地、6月の舟歌は水の気配のする夜の音、7月は生命力みなぎる人の営み…チャイコフスキーの描写センスと倉田さんの音の解像度の高さに、四季折々の景色が浮かび上がります。

「もっと演奏されて欲しい」と飯田さんが熱望するのはタネーエフ。ボロディン作品とラヴェルのボロディン風を続けて聴けたのも貴重な体験かもしれません。名残惜しくも終わりが近づき「かわいらしい小さな箱に詰めたような曲をたくさん弾くことができて幸せです」と倉田さん。

旅の終わりは、浮遊感と残響が美しいスクリャービンと、歌心たっぷりのラフマニノフ『ひなぎく』でした。会場が終始穏やかな多幸感に包まれた、思い出に残る素敵な公演となりました。

(レポート◎寿すばる)

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
リャードフ: オルゴール Op.32
キュイ: 25のプレリュードより15番 Op.64
チャイコフスキー: 四季より5〜7月
タネーエフ: 休息(エレジー)
ボロディン: スケルツォ 変イ長調
ラヴェル: ボロディン風に
スクリャービン: 詩曲Op.32-1
ラフマニノフ: ひなぎく
ドイツとウィーン、響きの旅
出演:松田悠(vn)梅村知世(p)
当日の様子

穏やかな日の光が差し込む昼下がり、ヴァイオリンの松田悠さんとピアノの梅村知世さんによるクララ・シューマン「3つのロマンスop.22」の素朴でありながら気品のある美しい響きがTOKIAの会場を包みこみました。おふたりはシューマン夫妻にゆかりのあるドイツのデュッセルドルフ在住であり、今回が初共演とのこと。次に演奏されたのは、この地からほど近いボン生まれのベートーヴェンの「ヴァイオリンソナタ第5番」。「スプリングソナタ」の愛称で親しまれるこの曲は今の季節にピッタリで、ベートーヴェンらしいエネルギッシュさの中に楽しい春、穏やかな春、春の嵐などさまざまな情景を感じました。鳴り止まない拍手に応えてアンコールを一曲。とても高貴な雰囲気でクライスラー「シンコペーション」を演奏されました。ドイツ・ウィーンにどこか大人な旅をしたような気分になれるひとときでした。

♪松田悠さん:今日は本当にたくさんの方にお越しいただきとても楽しく演奏することが出来ました。ありがとうございます。今年のラ・フォル・ジュルネのテーマが音楽にまつわる都市への旅ということだったと思いますが、私もピアニストの方もドイツのデュッセルドルフから来まして、ドイツとウィーンにゆかりのある作曲家の曲を演奏させていただきました。みなさんにとって素敵な旅をお届けできていたら良いなと思います。
♪梅村知世さん:初めて松田さんと演奏させていただいて、ドイツで何回かリハーサルを重ねていくうちに、2人の中で良い音楽が生まれてきて、今日も響のある空間で演奏することができて本当にこころから楽しかったです。今日のプログラムがすごく春らしく、「3つのロマンス」には美しい瞬間が、「スプリングソナタ」にはすごくエネルギーのある瞬間があって、これをラ・フォル・ジュルネでできたことをすごく嬉しく思います。ありがとうございました。

(レポート◎工藤桃花)

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
クララ=シューマン:3つのロマンス op.22
ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ 第5番 「春」ヘ長調 op.24
ショパンをたどるメモワールⅢ~次世代の才能が弾く、情熱のスケルツォ~
出演:田口尊啓(p)八尋俊司(p)岡部那由多(p)
当日の様子

若き才能がショパンの「スケルツォ」に挑む本公演は、八尋さんによるワルツ2曲の演奏から幕を開けました。「ワルツ第6番」は子犬が転がるように軽快に奏でられ、「ワルツ第7番」では、哀愁ただよう深みのある音色が会場に響き渡りました。

ここから、3人のピアニストがスケルツォに1曲ずつ挑みます。まず田口さんが奏でた第2番は、激しさと静寂が目まぐるしく入れ替わり、その起伏が鮮やかなグラデーションとして描き出されました。続いて、八尋さんによる第3番の演奏。低音が不穏な空気を醸し出し、煌びやかに奏でられる高音との鮮烈なコントラストが繰り広げられました。プログラムの最後を飾ったのは、岡部さんによる第4番の演奏。これまでの2曲とは対照的に、明るく機敏な旋律が印象的で、躍動感ある音が会場に解き放たれました。終演後、響きの良い環境での初めての演奏を楽しめたと語った3人へ、惜しみない、そしてこれからの活躍を心から応援するかのような温かい拍手が長く続きました。

(レポート◎飯島帆風)

当日の様子
当日の様子
当日の様子
当日の様子
プログラム
ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
(以上、田口)
ショパン:ワルツ第6番 変ニ長調 Op.64-1 「小犬のワルツ」
ショパン:ワルツ第7番 嬰ハ短調 Op.64-2
ショパン:スケルツォ第3番 嬰ハ短調 Op.39
(以上、八尋)
ショパン:スケルツォ第4番 ホ長調 Op.54
(以上、岡部)
昭和~平成~令和 ピアノで語るデビュー35周年の時空旅行
出演:小原孝(p),クリスタルPianoコンクール入賞者(福島 朔,井草 萌,大澤 諒子)
当日の様子

小原孝さんの活動35周年を飾る公演が開幕。自作曲「スタニヤン・ストリート」の繊細かつ輝かしい音色に、会場は静かに聴き入りました。

同じ空間にいることを楽しむという生演奏の魅力に触れた後、クリスタルPianoコンクール入賞者たちが登場。若きピアニストたちが、それぞれ個性光る瑞々しい演奏を披露しました。

その後、バトンを受けた小原さんが再登場し、ラジオさながらの弾き語りスタイルで進行します。クラシックの名曲の中に「ネコ踏んじゃった」が時折聴こえてくる「ジル君はピアニスト」で会場を和ませ、「旅立ちの日に」で壮大な響きを届けました。続けて、最新のCDアルバムに際して新たに収録したというドビュッシー「西風の見たもの」、坂本龍一「戦場のメリークリスマス」を演奏。そして、毎年恒例の「ボレロ」へ。徐々に熱量を増す演奏に、観客はぐっと引き込まれました。

最後は、東日本大震災 心の復興支援曲「逢えてよかったね」。小原さんの歌声・ピアノと会場が一体となり、温かい空気に包まれました。心に残るものを未来へ繋ぐ小原さんの想いが響く時間となりました。

~小原孝さんのコメント~

毎年、エリアコンサートで公演を行っていますが、特に響きが大好きなこの会場で集中して演奏できたのが良かったです。また、若い入賞者の方々をご紹介する、良い機会になりました。彼らの将来が楽しみです。

(レポート◎飯島帆風)

プログラム
ジル君はピア二スト/モーツアルト・ベートーヴェン・ショパン(小原孝編曲)
旅立ちの日に/坂本浩美
西風の見たもの/ドビュッシー
ボレロ/ラヴェル
戦場のメリークリスマス/坂本龍一
逢えてよかったね/小原孝
〈クリスタルピアノコンクール入賞者〉
ウィリアムズ(金益研二編曲):「ヘドウィグのテーマ」(「ハリー・ポッター」シリーズより)(福島)
久石 譲(轟千尋編):「人生のメリーゴーランド」(「ハウルの動く城」より)(井草)
パスカル ヒメノ:「ブルース」(大澤)
【広告】