特級ガラコンサート「ショパンとシューマン ふたりの天才」開催レポート

2月11日、4度目となるピティナ特級のガラコンサートが開催されました。それぞれの熱演が繰り広げられた夏の特級ファイナル、秋に行われたスペシャルコンサート。そして今回、冬のガラコンサートで再び4人が同じ舞台に戻ってきました。
今年のテーマは『ショパンとシューマン ふたりの天才』。4人の特級ファイナリストが、2人の作曲家の珠玉の作品を紡ぎました。

日時:2025年2月11日(火・祝)
会場:J:COM浦安音楽ホール コンサートホール
出演: 南 杏佳/山本 悠流/塩﨑 基央/大山 桃暖(ピアノ)
主催 一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)
共催 J:COM浦安音楽ホール

最初に南杏佳さんが登場すると会場は大きく温かい拍手に包まれました。ピアノの前に座り、作品にふさわしい空気が作られるまでゆっくりと時間を取る南さん。心地よい静寂の中、ショパン:ノクターン第13番ハ短調 作品48‐1が始まりました。一つ一つの和声を味わいながら進む伴奏を土台に、艶やかな極上のメロディーが紡がれます。

続いて登場した山本悠流さんはショパン:ノクターン第16番変ホ長調 作品55‐2を演奏。最初の一音が輝かしく、しかしどこか胸を締め付けられるような切実さで響くと、一瞬で会場が山本さんの世界に引き込まれていきました。

ノクターン2曲の演奏が終わると南さん・山本さんがマイクを持ってステージへ。笑顔でみなさんへの感謝を伝え、「同じショパンの作品が、演奏者毎に違った色合いで表現される点を楽しんで欲しい」と話しました。

三人目の演奏は塩﨑基央さん。夏のセミファイナルでもプログラムに組み込んだショパン:ピアノソナタ第2番変ロ短調 作品35「葬送」を、さらに深化させて臨みました。楽曲の構造に対し誠実に向き合ってきたことを感じさせる構成力と、観客に強く訴えかける表現力が相まって、一段と充実した世界が作られていきます。個性豊かな4つの楽章は、シューマンに「無理やり括り付けられたようだ」と評されましたが、塩﨑さんは聴き手の注意を引き付ける曲間の取り方と圧倒的な集中力で、4楽章の最後まで一つの作品として完成された演奏を繰り広げました。

一部の最後には大山桃暖さんが2作品を披露。一曲目のショパン:前奏曲嬰ハ短調 作品45では、重みのある音色ながら決して沈むことなく空間全体に響き渡る素晴らしい音作りが光りました。
続いて演奏したショパン:スケルツォ第4番ホ長調 作品54では、一つ一つの音にキャラクターを感じさせる生き生きとした音楽が展開され、スケルツォらしい遊び心と技術的なパッセージが同居する難曲を見事に表現。大山さんの奏でる音楽にピアノも呼応し、一体となって音楽の喜びを客席に届けました。


二部の最初には塩﨑さんと大山さんが登場し、ショパン、シューマンの作品に対する思いも交えながら、明るいMCで客席を盛り上げました。

最初の演奏は大山さんのショパン:エチュード変イ長調 作品25‐1「エオリアン・ハープ」。短い分数の中でもドラマ性のある音楽を繰り広げ、シューマンを主役とするその後のプログラムにバトンをつなぎます。

続いて、山本さんによるシューマン:子どもの情景 作品15の物語が始まりました。シューマン特有の多声的な音楽を精緻に読み解いた山本さんの演奏は、思いがけないメロディーが浮き立ったり、主旋律以外の声部にも耳を奪われたりと、聴き手に新たな発見を与えます。13曲の作品では、シューマンの、そして山本さんの様々な魅力が余すところなく表現されました。いくつもの物語を経て、終曲では寄り添うような温かさとどこか達観した落ち着きに会場が包まれました。

そして最後を飾ったのは、南さんのシューマン:クライスレリアーナ 作品16。ロマンティックな美しさを有しながらも、沈鬱な雰囲気、抑圧された感情、垣間見える崇高な世界、そしてもはや狂気ともいえるシューマンの激情までありとあらゆる表現が内包される名曲です。南さんの演奏は、そうしたモティーフごとの個性を無理やり一つの音楽に落とし込むのではなく、それぞれをぶつからせ、向き合わせることで生まれるうねりによって、大きく壮大な音楽を形作っていました。作品の魅力を余すところなく表現したいという思いが伝わる熱演に、客席からは大きな拍手が送られました。


感動の中、最後にはサプライズのアンコールが。
塩﨑さんと大山さん、南さんと山本さんが、それぞれ連弾を披露しました。
それぞれの個性が共存しながらも、息を合わせて進む音楽に心を奪われます。ソロの演奏中とはまた違った、皆さんの柔らかい笑顔が印象的でした。

シューマン:8つのポロネーズ Anh G1 Woo20より第1番
シューマン:8つのポロネーズ Anh G1 Woo20より第1番

また、終演後はロビーにてサイン会の実施が。
老若男女問わず多くの方が列に並び、4人への温かい応援の気持ちを伝えました。感謝や応援の気持ちであふれる、笑顔が絶えない時間となりました。

大盛況のうちに終わった特級ガラコンサート。配信でも大変多くの方に見守っていただきました。2024年度もピティナ特級に多くの熱い応援、そして温かいご支援をいただきましたことを改めて御礼申し上げます。
この後も2024年度クラウドファンディングのご支援による派遣公演は続きます。ファイナリストたちの今後の活躍にもどうぞご注目ください。

こちらのライブアーカイブで公演の模様をご覧いただけます!

写真:石田宗一郎

レポート:深瀬佳楠

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