レポ:11/26,27 みやこ町立犀川中・勝山中(デュエットゥpf・平田里子sp)

会場:音楽室
参加人数:
犀川中学校 中学1年~3年生 87名/勝山中学校 中学2年・3年生 85名
出演:デュエットゥ(木内佳苗&大嶋有加里/ピアノ)・平田里子(ソプラノ)
福岡県みやこ町では、犀川中学校、勝山中学校の2校にて、デュエットゥの木内佳苗さん&大嶋有加里さんとソプラノの平田里子さんによる学校クラスコンサートが開催されました。学校クラスコンサートのスタイルは変わらずとも、中学生の知性や感性をくすぐり、思春期の気持ちに寄り添うトークや選曲で展開されました。犀川中の先生はコンサートのチケットと座席番号を用意して、コンサートの雰囲気を演出してくださっていました。

最初はデュエットゥの連弾で「クシコスポスト」の演奏から。そして連弾ではそれぞれが何をやっているかを解説します。木内さんは「私は鍵盤の右側の高い音を担当して、こんな風に弾きます。何の曲か分かる?」と尋ねると、「ねこふんじゃった」と生徒は即答。「そう、聴いただけで何の曲か分かるようなメロディを主に担当します」と木内さん。続いて大嶋さんが「私は鍵盤の左側を担当してこんな風に弾きます。何の曲か分かる?」と聞くと、生徒は「うーん、、」と。「そうだよね、これだけじゃよく分からないよね。私はメロディにハーモニーをつけています。2つあわさるとこんな風になります」と、2人で小原孝作曲「ネコのロックンロールパーティ」を演奏してみせました。すると、先ほどのメロディがより華やかに、リズミカルになり、ノリノリの音楽が立体的に浮かび上がってきました。

平田さんは中学で学習するオペラについて、ヴェルディの『椿姫』の舞台写真を見せながら解説。「オペラの舞台では、それぞれの役柄を歌うソリスト、群衆を歌う合唱がステージに上がります。私は高い声で歌うソプラノです。ステージのすぐ下にはオーケストラがいて生演奏をします。そのほか、背景やシャンデリアなどの舞台美術、ステージの後ろでは衣装やメイク、かつらなどたくさんの人たちが関わって一つの舞台ができています。今日は教室で一人で歌いますが、ここは舞台でピアノをオーケストラだと思って歌うので、こうしたステージを想像しながら聴いてくださいね」と、話しました。そしてワイングラスを片手に、生徒と乾杯しながら『椿姫』の第1幕第1場の「乾杯の歌」を歌いあげました。

小学4年生から少年少女合唱団に入っていたという平田さんは、6年生の時初めて学校で一人で歌う経験をし、緊張と同時にワクワクして、そこから一人で歌うことも好きになったそうです。「皆さんと同じ中学2年生の頃に、初めて声楽の先生について歌を習い始めました。うまくいかずに悩む時もありましたが、ずっと歌が大好きで続けてこられました。好きとか興味があるということは、とても大切なことだと思っています。皆さんもその気持ちを大切にしてくださいね。」と話しました。そして大好きな「君をのせて」をしっとりと歌うと、生徒たちは平田さんの言葉をかみしめるように、しんとして聴き入っていました。
再びデュエットゥに代わり、ベートーヴェンの『運命』のお話に。「ジャジャジャジャーン」と1楽章の冒頭を弾いて「みんなこれを聴いてどんな印象を受けた?」と尋ねると「怖い」「暗い」「激しい」という声。耳が聞こえなくなったベートーヴェンが、運命が扉を叩いてやってくる様子を表しているとも言われています。「そんな後に曲がどう展開されていくかと言うと…」と、2楽章と3楽章を少しずつ連弾で弾いてみせながら解説。「ではこの後、最後の4楽章ではどんな音楽になると思う?さらに暗くどん底に落ちていく感じ?それとも明るく希望にあふれた音楽になる?みんながベートーヴェンだったらどうする?」と問いかけると、多くの生徒は明るい方を選びました。そこで実際に弾いてみると、その希望に満ちた曲想にちょっと安心した表情を浮かべました。

「作曲家にとっては特に、耳が聞こえなくなるというのはとても大きなこと。普通ならもう作曲なんてできない!って思うかもしれない。でもベートーヴェンは諦めませんでした。ピアノって弾くと弦と楽器が振動するのは知ってる?ベートーヴェンはそれを利用して、楽器の振動を感じて作曲をし続けたのだって。ベートーヴェンはそうやって自分の運命の扉を開きました。みんなもこれから自分の運命の扉を開く時が来ると思います。そんな時に思い出してください。」と、改めて1楽章を演奏しました。
それから2人はピアノの周りに生徒たちを集めて、ピアソラの「リベルタンゴ」を弾きました。クラスターも使った情熱的な演奏、体ごと交差し合っての演奏、そして最後の一音は近くにいた何人かの生徒たちの手を合わせて(犀川中では校長先生が!)鳴らすなどのパフォーマンスに、見守っていた生徒たちは大盛り上がりでした。

その後、大学生の頃ピアニストを目指していた大嶋さんの指が1本動かなくなってしまった時、木内さんの「一緒に弾こう」という言葉で再び夢に向かって頑張ることができたことを話しました。大嶋さんは「私は夢が叶わないかもと悩んだ時に、親友に相談しました。みんなも困ったら友達に相談してみてください。相談された人は真剣に考えてあげてください。そして一緒に夢に向かって走って欲しい」と語りかけました。「これはみんなへの応援歌」と言って、Mrs. GREEN APPLEの「ケセラセラ」「Soranji」を弾き始めると、生徒たちの心に寄り添うような演奏に、自然と手拍子が起こりました。
最後は、平田さんが歌う時のワンポイントアドバイスをしてから共演曲を歌いました。

音楽室というとても近い距離でプロの連弾ピアノ演奏と歌唱は迫力があり、とても新鮮な機会で生徒たちは見入っていました。ピアノの周りに生徒を移動させてピアノを弾いてくださったので、とても迫力がありました。たくさんのトークも交えていただき、あっという間の50分でした。J-POPがあったのも生徒の関心が高まりよかったです。貴重な機会をいただきありがとうございました。
1年生にとっては予習の授業、2,3年生にとっては映像で勉強したことを生の演奏で聴くことができる最高の時間になりました。作曲者のエピソード、演奏者のエピソードなど、より音楽を身近に感じながら楽しむ生徒の姿がありました。ピアノの下で音を体で感じる体験活動は生徒たちも感動していて、お勧めです!一緒に合唱ができたのも嬉しそうでした。3回公演は大変だと思いますが、学年ごとにしていただいたおかげで、より近くに音を感じることができました。
「好きの気持ちを大切に育ててほしい」「運命の扉を開くのは自分次第」「一人で悩まない!友達に相談。助けてくれる」など、音だけでなく生徒の心に響くメッセージもいただき、とても充実した50分でした。
誰もが聴いたことがある曲、連弾だから感じる普段見られない演奏、学習したことが生で聴ける、全てが生徒の心を揺さぶるプログラムでした。ありがとうございました。

- 「ねこふんじゃった」は聞いたことがあり、メロディは弾けるけれど、ハーモニーがあるだけで曲の雰囲気が全く違っておもしろかったです。
- 「運命」はだんだんと絶望から希望に変わっていくということを知って、意識して聞いてみるとよりおもしろく感じた。
- はじめてプロの演奏を目の前で聴いて、迫力があるなと一番最初に聴いて思いました。動画で聴くのもいいけれど、実際に耳で聴く方が気分もあがるし気持ちものるなと思いました。
- 今日の音楽で色々な演奏を聴いて、私はやはり音楽の力はすごいなと思いました。ただ歌ったり演奏したりするだけではなく、手を大きく広げたり、首を動かしたりして盛大に歌ったり、演奏していたのがとってもカッコよかったです。自分もピアノをしているので、あんな風に表現力豊かにして弾いてみたいと思いました。
- 今まで近くでピアノを演奏するのを見たことがなかったから、今日、ピアノを目の前で聴いてみて、ピアノが弾けるってかっこいいと思いました。
- 歌う時に声が響いているし、歌詞に合わせて表情を変えているところが力強くてよかったです。
- 今日聞いた歌や曲は美しすぎて全身がしびれました。そして、自分の心が踊って楽しんでいるのに気付きました。
- 「夢を諦めないで」という言葉が心に響きました。
- オペラの歌声と連弾を初めて目の前で聴いて、音楽っておもしろいと思いました。自分は流行りの音楽を聴くのも好きだけれど、ゆったりとした音楽も好きということに気づきました。
- 『椿姫』の「乾杯の歌」の時、手に持ったパンフレットの紙が振動していてびっくりしました。お楽しみコーナーでピアノの下に行った時も音がものすごかったです。
- とても圧倒されました。プロのオペラの方が、まず、想像していたよりももっともっと上をいっていて、びっくりしました。本当に歌声やビブラートのつけ方が違うと思いました。「君をのせて」も言葉の一つ一つに強弱がついていたり、力強く歌っていたりしてすごかったです。
- 1人でピアノを弾いているのはよく見るけれど、2人で弾く連弾は見たことがなかったので感動しました。2人で協力して1つの曲を弾いている所にも魅力を感じました。2人で弾いていると、いつも聴いている音より多くの音が聞こえてきておもしろくて、1つ1つの音を聴きとることが楽しかったです。全身を使って弾いているので、体力もすごく使うと思いました。強く弾いたり弱く弾いたり使い分けていてすごいなと思いました。
- 私たちがいつも使っているピアノでも、使い方を少し変えると音色が変わってくるのがおもしろいなと思いました。
- 歌も声がとてもきれいで、壮大でびっくりしました!オペラをイタリア語で歌ってくださった時は、これがオペラか…!!と心にひびきました。
- デュエットゥのお二人も、途中で挫折しそうな時があったけれど、夢をあきらめずに叶えることができたと言っていたので、私も挫折する時が来るかもしれないけれど、その時は今日のことを思い出してがんばってのりこえていきたいと思いました!!
- デュエットゥを組んだ理由がとても素晴らしく、まさしく「運命」だと思いました。