南 杏佳さん(特級 グランプリ)～2024入賞者記念コンサート出演者インタビュー

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グランプリ受賞おめでとうございます！今回、ピティナのコンペに出場されたきっかけを教えてください。

アメリカ留学を経てレパートリーが増えたことで、もう一度原点に立ち返り、自分の演奏がどのような評価を受けるのか試してみたいと思ったのが、今回の出場のきっかけです。実は、これまで長年コンクールを避けてきました。結果が出ることが怖かったからです。しかし、Max先生の「自分の演奏をより多くの人に聴いてもらうためにコンクールを利用しなさい」という言葉に背中を押され、挑戦を決意しました。
今回は「勝ちたい」という気持ちよりも、「より多くの人に自分の音楽を届けたい」という思いが大きかったです。

工夫した練習方法はありますか？

今回特に意識して行っていた方法は、毎日自分の演奏を録音し、客観的に聴き返すことです。本番さながらの「一発勝負だ」という緊張感を持って録音し、その後すぐに聴き直すことで、演奏の流れやバランスなどを客観的に把握できました。録音を続けることで、自分の演奏の変化や改善点も実感できるので、とても効果的な練習方法だったと思います。

指導者の先生との印象的な思い出を教えてください。

高校時代、私は体育祭の団長を務めました。団をまとめることに加えて、何十キロもの旗を使う「旗演技」というパフォーマンスも団長の役割の一つでした。ただ、その数ヶ月前から服部先生には「手を痛めるから絶対にやらないでね」と念を押されていたのですが…先生には秘密のまま立候補し、周囲にも口止めして、なんとか体育祭当日までバレずにやり遂げました。
しかし、数ヶ月後の進路面談で、担任の先生がふと「南さん、団長も頑張ってくれたからね」と言った瞬間、すべてが白日の下に（笑）服部先生には、後にも先にもあんなに音楽以外のことで怒られたことはありませんでした（笑）

最近感動したことは何ですか？

ソアレス先生と服部先生主催の門下発表会が、今年初めに最後を迎えました。
ゲストとして出演させていただき、昔、先生方と共に取り組んだリストの超絶技巧練習曲「回想」を演奏しました。弾き終わった瞬間、客席からソアレス先生の「Bravo！」というお言葉が響き、その後、先生が涙してくださったのを見て、私も思わず涙がこぼれました。終演後には、先生方と3人で静かに泣きながら、この特別な時間を噛みしめました。

練習が大変な時は、どのように気分転換していますか？

散歩に出たり、友達に会いに外出したりと、息詰まったときはなるべく練習室からきっぱり離れるようにしています。 一度リフレッシュすることで、戻ったときに新たな視点で練習に向き合えることが多いからです。あとは、無類のお酒好きなので、ビールを冷やして「練習を終えたら飲める」というご褒美を作ったり…（笑）

マイブームを教えてください。

全国各地のホテルに置いてあるスリッパの履き比べをすることです。
入賞者コンサートや演奏会で全国を飛び回ることが増え、ホテルに泊まる機会も多くなりました。その中で気づいたのが、ホテルによってスリッパのクオリティが驚くほど違うこと。フカフカのものからペラペラのものまで個性があり、お気に入りに出会うと密かにテンションが上がります（笑）飛行機移動や海外のホテル滞在用に持ち帰ることもあり、スリッパひとつでモチベーションが上がるのを実感しています。

ピアノのほかで、得意なこと、好きなことは何ですか？

掃除です。掃除をしていると、とにかく無心になれるのが心地よく、終わったあとのスッキリとした空間を見ると達成感を感じます。 特に、頑固な汚れが落ちたり、整理整頓で見違えるようにスッキリしたときの変化に胸が高鳴ります。

ピアノ曲に限らず、好きな曲を教えてください。

ポップスはよく聴いているのですが、なんとなく耳あたりのいい曲より歌詞に深い意味がある曲が好きです。特にラッパーでシンガーのちゃんみなさんの曲に大ハマり中です。最近は、ちゃんみなさん主催のオーディション番組「No No Girls」も拝見していて、「アーティストとは」という彼女の真意をついた発言ひとつひとつに胸を打たれ、毎週号泣しております。

ピアノを弾いていてよかったと思う瞬間はどんなときですか？

弾き終わった後に、お客様の笑顔や涙が見えたとき。
自分の信じる音楽が、ただの自己完結ではなく、誰かの心に届いたのだと実感できる瞬間です。演奏中は、自分の内側と作品に向き合いながら音楽を紡いでいますが、それが聴いてくださる方の感情と重なったとき、ピアノを続けてきて本当によかったと心から思います。