レポ:10/22-23 豊前市立宇島小・八屋小・大村小・吉富町立吉富小(田母神夕南pf・最上峰行ob/動画あり)

豊前市立宇島小学校
豊前市立八屋小学校
豊前市立大村小学校
吉富町立吉富小学校
日時:2024年10月22日(火)・23日(水)
参加人数:合計 162名
出演:田母神夕南(ピアノ)・最上峰行(オーボエ)
プログラム:宇島小八屋小大村小吉富小

10月22日、23日は、福岡県豊前市・吉富町での初の学校クラスコンサートを開催しました。昨年より故郷へ拠点を移された横田倫子先生(正会員)が、2年以上をかけて地元の教育委員会や学校と丁寧な対話を重ねて準備され、ようやく実現となりました。横田先生からのレポートをご紹介します。

東京からオーボエの最上峰行さん、ピアノの田母神夕南さんにお越しいただき、2日間の午前・午後に1校ずつ、豊前市立宇島小学校、豊前市立八屋小学校、豊前市立大村小学校、吉富町立吉富小学校の計4校で福岡県東北部の京築地域での初めての学校クラスコンサートを実施しました。オーボエとピアノの演奏やお話に加え、それぞれの学校の児童との歌やリコーダーとの共演と質問コーナーも行いました。初日の宇島小学校には豊前市の教育長も見学にみえ、最後にスピーチで感動を伝えてくださいました。

各校のプログラムの最初はモリコーネ作曲の「ニューシネマパラダイス」。甘いオーボエの音色が会場中に響き渡り、子どもたちも見学の大人たちも集中して聴き入っていました。演奏を終えた2人が「東京から来ました」と自己紹介をすると、子ども達から「おー!」と歓声があがりました。

田母神さんが「ピアノ鍵盤はいくつある?」「どうやって音が出ているか知ってる?」等の質問を投げかけると、子どもたちからはすぐに手があがりました。鍵盤を押してから弦を打つ仕組みまでを知っていて教えてくれた子もいました。

ピアノの周りに子どもたちを集めると、リスト作曲の「エステ荘の噴水」の冒頭を弾いて、ペダルを踏んだ時と踏まなかった時の違いを聴かせてペダルの効果を説明しました。そして子どもたちに囲まれたまま、ショパン=リスト作曲の「乙女の願い」を演奏すると、子供達は流れるような指さばきとピアノの中の忙しい動きを食い入るように覗き込んでいました。

次はオーボエの番です。「オーボエって何語だと思う?」と問いかけると、みんな一生懸命に色んな国の名前を言って当てます。「実はフランス語で、オーは高い、ボエは木、という意味なんだけど、何で木なんだと思う?」と聞くと、「木でできてるから。」という子どもたち。「そう、木管楽器の仲間だよね。でもみんな、こんな黒い木って見たことある?」「え、ないかも!」「これはグラナディアというアフリカに分布する木で、一番重くて硬い木と言われています。何で硬い木を使ってるんだと思う?」とさらに問いかけると、子どもたちは不思議顔。最上さんはそんな子供達に座ったまま床を足踏みさせてみました。バンバンバン!と鳴ります。「何でこんなに音が鳴るんだと思う?もしこれがやわらかいスポンジやクッションだったら?」と想像させ、硬いから音が大きく響くことも説明しました。

「さあ、音を出してみよう。どうやったら音が出るのかな?」と聞くと「息を吹く!」という声。「じゃあ、息を吹き込んでみるね」と最上さん。どんなに強く息を吹き込んでも、音は出ません。すると最初の演奏をよく見ていた子が、「さっき、先っぽに何かあった?」と指摘。最上さんは植物の葦でできているリードを2枚合わせたものを見せ、「この細~い小さい穴から長~く息を吹き込むんだよ」と、近くまで寄って見せてくれました。

それを見た子から「苦しそう…」という声。最上さんは「そうなんです!とても苦しいんです。今からそれをみんなにも体験してもらおうと思います、息がどれだけ持つか、みんなと僕とで競争しましょう!」と言って、最上さんが息を吐いて音を出している間は子どもたちも息を吐く、ということに挑戦しながらモリコーネ作曲「ガブリエルのオーボエ」を演奏することになりました。子どもたちは一生懸命にオーボエの演奏に合わせて息を吐きましたが、最上さんのように長い息は続きません。演奏後「苦しかった人?」と聞かれると、たくさんの手があがりました。「管楽器はこうして息を使って音を出すんだけど、苦しくても、きれいな音が出るからがんばって吹いているんだよね」と最上さんは語りました。

質問コーナーでは、児童や先生からも「オーボエのボタンはいくつあるの?」「いつもどこで演奏しているの?」「何でオーボエを始めたの?」などと様々な質問があがりました。「オーボエって何センチ?」という質問には、その子の身長とオーボエとを比べてみました。前に出てピアノの内部を指さしながら「弦の下から上がってきた白いものは何?」と質問する子や、「鍵盤は何でできてるの?」という質問の時に「弾いている時に横に木の茶色が見えた」という気付きを発表してくれる子もいました。

そして、オーボエもピアノも難しいというドニゼッティの「オーボエソナタ」を最後に披露しました。楽器の音の秘密や演奏者2人の人となりにも親しんだ子どもたちは、真剣に耳を傾けていました。

演奏だけでなくお話もとても上手なので、子どもたちは熱心に話に耳を傾けていて、会場に笑いもあり、とっても良い雰囲気であっという間のコンサートでした。子どもたちにとっては第一線で活躍している演奏者たちが、東京から自分たちの学校にわざわざ来て演奏してくれたことがうれしかったようで、一生心に残る思い出になったと思います。同じ給食を食べてくれたということも聞いて喜んでいましたし、サインを求めて戻って来る子たちもたくさんいました。八屋小学校では、後日の音楽の授業でヘンデルの水上の音楽「アラ・ホーンパイプ」の鑑賞をしたところ、オーボエの音に子供達は直ぐに気づいたそうです。子どもたちの心に残るコンサートを開催することができて、本当によかったと思います。

レポート◎横田倫子

八屋小学校の先生より

演奏(選曲)のすばらしさに子ども達はうっとりしてしまいました。楽器のお話は分かりやすく楽しく、興味深く聞くことができたのがとても良かったです。児童は楽しく惹き込まれ、自然に思ったことを声に出して拍手をしていました。よい演奏を子ども達もしっかりと感じていました。一流の演奏が気負わずに聴ける、けれども演奏のよさに自然にひき込まれ、心が満たされる、幸せな45分になりました。

大村小学校の先生より

有名な演奏家の生演奏を目の前で聴くことができ、貴重な体験になったと思います。校歌も生演奏していただき、一緒に歌う姿が楽しそうで、声が弾んでいた印象でした。子どもたちがより一層音楽に興味を持ってくれたと思います。

宇島小学校の先生より

とても近い位置でプロの奏者が演奏する音色を聴くことができたことが良かったです。リコーダーや歌での児童の参加型だった点も良かったです。普段触れることのない楽器の音色に触れたり、楽器の仕組みを知ったりしたことが児童にとって印象深かったようです。演奏者の方が分かりやすく具体物も提示しながらお話をしてくださったので、児童も前のめりになって話を聞けていました。楽しそうな様子が伝わりました。素敵な演奏者との出会いに感謝いたします。ぜひまた機会があったら申し込みたいです。

吉富小学校の先生より

演奏者や楽器との距離が近く、演奏はもちろん、演奏者の表現力を生で見られたことが一番よかったです。子どもたちが演奏にのめり込んで聴いていた姿が印象的でした。参加型の雰囲気の中、演奏者が子どもの目線で対応してくれて、子どもも職員も大変喜んでいました。

最上峰行さんより

ピティナの学校クラスコンサートは自分の音楽人生にとってとても大切に考えているライフワークの一つで、どんなに忙しい中でも参加したいと思っているコンサートの1つです。

毎回楽しみにしているのがピティナが推薦して下さる素晴らしい若手ピアニストとの共演です。これからの時代を担う音楽家と奏でる一期一会の音楽はとても新鮮で有意義な経験になるのです。今回も素晴らしいピアニストの田母神さんと演奏させて頂きました。

そしてなんと言っても子供達、先生方との出会いです。それまで出会う事のなかった子供達と音楽を通して交流できる事は、音楽をはじめた頃を思い出させてくれますし、子供達の正直な反応を目の当たりにできます。学校によって、担当の先生方によって反応は全く違ったりします。大人として子供達とどう接していくかというのもこのコンサートを通じて僕達演奏家、指導者に突きつけてもらえるのです。

音楽を通じて子供達にメッセージを伝えるなんて事は音楽家にとってのエゴかもしれませんが、「大好きな事を一所懸命努力し続ける事で出会える喜び」をいつかわかってもらえたら演奏家としてとても幸せな事だと思います。

田母神夕南さんより

ピティナ学校クラスコンサートへは、留学を経て、約9年ぶりに出演させていただきました。前回もたくさんの学びと刺激がありましたが、年齢を重ね、受け取り方や使命感も変化したように感じています。

子供達の反応はとても素直なので、独特の緊張感を持って取り組んでおりますが、今回、子供達がとても集中し、のめり込むような空気感で聴いてくれた事が何より嬉しかったです。また質問コーナーにおいては、「鍵盤は何でできていますか?、どうやったら上手になりますか?何時間練習しますか?」など、たくさんの質問をいただき、その真剣な眼差しと探究心から刺激をもらいました。私自身もピアノという楽器や、上達について改めて考える機会となりました。

共演させていただいた最上さんの大変素晴らしいオーボエから音楽的な学びはもちろんのこと、一瞬にして子供達の心を掴むトークや、学校クラスコンサートへの心構えなど、演奏家として大切な事をたくさん教えていただきました。演奏会の後に学校の先生から、「これまで音楽が苦手だった生徒さんが、今回のコンサートを聴いて涙を流しながら感想を書いていたよ」と伺い、そんな風に聴いてくれた子がいるんだ!と、とても驚き、嬉しく思いました。

・児童の皆さんへのメッセージ

どうやったら上手になるか、という質問を沢山いただきました。私もまだまだ模索中ですが、好きなことに真剣に取り組み、自分で目標を立てて行動する事や、人と比べるのではなく、昨日の自分を超えるように日々意識していくことが大切なのかなと思っています。

児童の皆さんの感想より(抜粋)
  • オーボエは吹いたことがないけど、リードの小さな穴に息を入れるのは大変そうだから、すごいと思いました。リードだけで音が出て、オーボエだけでは音が出ないと知って、逆パターンだと思っていたから、オーボエのことを知れてうれしいです。
  • オーボエのリードが3日で使えなくなるなんて初めて知りました。自分で作っていると聞いてすごいなと思いました。
  • ピアノやオーボエの音色がとてもきれいでした。演奏していただいた曲がとてもきれいで感動しました。
  • ピアノの演奏をきいて、ペダルの踏むタイミングや指使いが良かったです。ペダルを踏むことで曲がよりよくなるし、、速い曲だったけどそれを弾ける田母神さんもすごいと思いました。
  • 初めてオーボエの生演奏を聞いたけど、やっぱりテレビなどで聞く音とは違うなと改めて思いました。今回は学校でソナタ形式の勉強をしていたこともあり、さらに楽しめました。より生で他の楽器やオーケストラの演奏が聞きたくなりました。
  • 高い音から低い音まで出すことができるピアノと、すき通った美しい音を出すことができるオーボエが一緒に演奏すると、2つの楽器だけとは思えない程美しい音色が響きあっていて、とても聞いていて心地が良かったです。
  • オーボエは普通に息を吹いても音が出ず、植物でできたリードというものを水で濡らし、それをオーボエにつけて吹くと音が出ると知りおどろきました。また、リードを近くで見せてくださり、どのようになっているかを知ることができました。 
  • ピアノを演奏しているときの指がとてもはやくて、すごいなと思いました。二人が合わせて演奏してくれた時は、とてもタイミングが合っていて、聴くのがとても楽しかったです。
  • オーボエについてたくさんのことを知れました!例えばオー(高い)ボエ(木)がフランス語や、リードは植物でできていて水で湿らせて吹くなど、興味が出ました。
  • 最上さんのオーボエと田母神さんのピアノの音色がとてもすごかったし、とてもきれいでした。一緒にエーデルワイスを演奏出来てうれしかったし、楽しかったです。
  • ピアノソロも「ガブリエルのオーボエ」も「オーボエソナタ」もとてもすてきな演奏でとっても心に残りました。ピアノの鍵盤が88鍵あることや、「リード」と言われるものがないとオーボエは音が鳴らないと聞いて、すごいと思いました。
  • 八屋小の児童アンケート
学校クラスコンサート
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