ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2024 丸の内エリアコンサート 開催レポート(5/5)
ラ・フォル・ジュルネTOKYO丸の内エリアコンサート最終日は子どもの日。多くの親子連れや音楽愛好家たち、様々な観客がオープンスペースでのコンサートを楽しんでいました。プログラムもクラシック、ジャズ、ポップス、ピアノソロ、連弾、ヴァイオリン、チェロ、バリトンとバラエティに富み、フィナーレを飾るに相応しい華やかなステージが繰り広げられました。
ラ・フォルジュルネ東京2024 丸の内エリアコンサート 詳細
小原孝(p)
日本晴れの今日、新丸ビルアトリウムには大勢の方ががいらっしゃいました。小原孝さんの演奏に先立って、小原さんが審査員を務めるクリスタルPianoコンクールでクリスタル大賞に輝いた松井啓真さんによるジャジーなアレンジの「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」で華麗に始まりました。
小原孝さんのステージに変わり、まずは小原さんのデビュー作「ねこはとってもピアニスト」(1990年作品)から即興を含む作品「我輩はジルである」。続いて「子供の日」をテーマに童謡唱歌メドレーの即興演奏。練習曲コーナーではジャズ入門に最適なギロックの「ジャズスタイルピアノ曲集」と没後150年ブルクミュラー「25の練習曲」を紹介。さらに小原さんの最新作「ピアノ宝石箱」(2023年作品)から「あし笛の踊り(チャイコフスキー)」「あこがれ/愛(ジョージウィンストン)」の2曲と急遽追加でYouTube「小原孝pianoチャンネル」の生収録撮影も行われ、クラシックからポピュラージャズを含め盛りだくさんのプログラムでした。プログラムの最後は震災復興への願いを込めたアレンジの「ボレロ/ラヴェル」は、大迫力の演奏で客席からはブラボーの声があがりました。アンコールは東日本大震災心の復興支援曲「逢えてよかったね」を松井啓真さんの即興伴奏で。今年起きてしまった能登半島地震他の被災地の皆さんへの想いも込めて、会場の皆さん全員で歌いました。
プログラム
<小原孝ミニコンサート>
我輩はジルである/小原孝 「ねこはとってもピアニスト」(1990年作品)より
こどもの日メドレー (こいのぼり・せいくらべ ほか)
練習曲メドレー (なぐさめ・貴婦人の乗馬/ブルクミュラー ほか)
あし笛の踊り/チャイコフスキー ~ あこがれ/愛 /ジョージ・ウィンストン 「ピアノ宝石箱」(2023年作品)より
ボレロ/ラヴェル
他
山口歩乃果(p)奥村陸生(p)脇田涼吾(p)
午後の新丸ビルのアトリウムに、六大学ピアノ連盟の皆さんが登場。まずは脇田涼吾さんが曲目はご自身でアレンジされたという現代曲アレンジメドレー、そして拍手を待たずしてドビュッシーの「ゴリウォークのケークウォーク」を披露。戯れるように奏でられた音楽によって、会場は明るい雰囲気に。続く奥村陸生さんも、瑞々しい音色が天井いっぱいに広げて、重厚に、そして端正にブラームスの4つの小品より第4番の「狂詩曲」を、山口歩乃果さんは、どこか春の陽気を孕んだ音でバッハの平均律より第13番と、時に力強く時にやわらかに音を煌めかせながら、「ヴェネツィアとナポリ」よりタランテラを演奏されました。
現代の音楽から時代を遡るように展開していった本公演のプログラム。3人が作り上げた「ORIGINES」に、惜しみない拍手が送られました。
♪脇田涼吾さん
みんなに楽しんでいただける演奏が出来ていたら、よかったと思っています。
♪奥村陸生さん
活気のある空間で皆さんに見ていただいて、演奏できたのがすごく嬉しかったです。
♪山口歩乃果さん
こういう開放的な空間で皆さんに聴いていただくことはなかなかないので、貴重な経験になりました。
(レポート◎小原遥夏)
プログラム
リスト:巡礼の年 第2年への追加「ヴェネツィアとナポリ」から 3.タランテラ
J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第13番 嬰ヘ長調 BWV 858
◆奥村陸生(p)
ブラームス:4つの小品より第4番「狂詩曲」変ホ長調 Op.119-4
◆脇田涼吾(p)
ジャズやJPOP等現代の曲アレンジメドレー(編曲 脇田涼吾)
ドビュッシー:子供の領分より「ゴリウォークのケークウォーク」
永吉友亮(p)安井友理(p)長谷川祐音(p)
T O K I Aガレリアを若きピアニストたちが彩りました。登場したのは永吉友亮さん、安井友理さん、長谷川祐音さんの3人。永吉さんの演奏で、公演は幕を開けました。可憐な音で晴れやかなベートーヴェンのピアノソナタ第2番より第3楽章、そしてベートーヴェンから表情を変えて、ドラマチックにショパンのスケルツォ第2番を演奏された永吉さん。鍵盤を回る指が楽しそうに弾みます。続く安井さんは愛おしそうにピアノに向かい、ショパンの即興曲の第2番、第3番を披露。どこか郷愁漂う美しいメロディーを丁寧に拾い上げ、会場を安らぎで満たします。そんな会場に爽やかな風を吹かせたのは、長谷川さんの豊かでエネルギッシュな音。寄せては返す波のように雄大に広がるショパンのエチュードOp.10-1と、気迫のこもったベートーヴェンの熱情が会場いっぱいに轟き、聴衆からは、3人の未来を祝福するかのようにあたたかな拍手が送られました。
♪永吉友亮さん
いろんな方に聴いていただけて、非常に嬉しかったです。
♪安井さん:初めてL F Jに出演して、こんなに素敵な場所で弾けて、とても嬉しいです。
♪長谷川さん:こういった貴重な場面で弾かせていただき、感謝しています。
(レポート◎小原遥夏)
プログラム
ショパン:スケルツォ 第2番 変ロ短調 Op.31
(永吉)
ショパン:即興曲 第2番 嬰へ長調 Op.36、即興曲 第3番 変ト長調 Op.51
(安井)
ショパン:エチュード 第1番 ハ長調 Op.10-1
ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番 ヘ短調 Op.57「熱情」第1楽章
(長谷川)
土屋駿也(p)濵田眞子(p)恩田結衣(p)大塚萌(p)緑川奈央(p)高橋奏楽(p)森谷瑞木(p)柴田梨花(p)齋藤珠稀(p)鉄村杏樹(p)
昼下がりのTOKIAでは、何と10名ものピアニストがステージ上へ集結し、次々と組み合わせを変えて華やかな舞台を演出しました。ドビュッシーの「小組曲」でしっとりと始まったステージは、「ティコティコ」のラテン音楽でノリノリに疾走したかと思えば、「トリッチ・トラッチ・ポルカ」とレスピーギの「ローマの松」でヨーロッパのリズミカルな踊りを経て、さらに「ペトルーシュカ」と「花のワルツ」の華やかなロシアバレエの音楽の世界へと誘いました。
最後の1曲は、10名全員が出演!春畑セロリの「ヴォルフガングの玉手箱」でみんなのよく知っている21曲ものモーツァルト作品をメドレーでつなぎながら、連弾のペアがどんどんとずれていきます。自作のうちわやフリップも使って、目でも耳でも楽しませる演出に会場も大盛り上がりでした。
♪Wキャリアの皆さま
普段は、演奏家・指導者として、切磋琢磨しているWキャリアの仲間と、共に作り上げた今回のコンサート。ピアノ連弾の名曲、「ドビュッシー作曲 小組曲」全楽章の演奏を始め、オーケストラ曲、バレエ作品、ポピュラー作品など、幅広いジャンルの作品をお楽しみ頂きました。最後のリレー連弾では、アイデアを出し合い、全員のパフォーマンスでステージに華を添えました。沢山のお客様に恵まれ、会場一体が笑顔に溢れたステージとなりました。素敵な機会を頂き、ありがとうございました!
プログラム
1. 小舟にて(恩田・濵田)
2. 行列(森谷・恩田)
3. メヌエット(森谷・土屋)
4. バレエ(濵田・土屋)
アブレウ:ティコティコ(大塚・柴田)
ヨハン・シュトラウス2世:トリッチ・トラッチ・ポルカ Op.214(柴田・大塚)
レスピーギ:ローマの松~Ⅰ.ボルゲーゼ荘の松(高橋・鉄村)
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ~Ⅰ.ロシアの踊り(鉄村・高橋)
チャイコフスキー:くるみ割り人形より「花のワルツ」Op.71a(緑川・齋藤)
<リレー連弾>
春畑セロリ:ヴォルフガングの玉手箱(全員)
山縣美季(p)森永冬香(p)
今年もこの丸の内で仲良し二人組の連弾を聴くことが出来ました。最初のJ.Sバッハ「羊は安らかに草を食み」から息ぴったりに穏やかであたたかな演奏。トークの16年間の2人の付き合いや、2台ピアノ、連弾をしてきたことを語る様子は終始楽しげでした。
後半のサン=サーンス「動物の謝肉祭」は様々な動物達の様子が全14の組曲の形で描かれた作品です。この曲の個性豊かな動物たちの元気いっぱいで楽しげな、時に不気味さが伝わってくる演奏でした。特に印象に残ったのが第11曲「ピアニスト」で、とても単純な音階を2人でたどたどしく弾いてみせる様子は思わず笑ってしまいそうに。演奏後前後ろに挨拶して退場するところまで終始仲の良さが伝わってくるコンサートでした。
♪山縣美季さん
こういう場で弾くなら楽しい方がいいよねと選曲したので、楽しんでいただけていたら嬉しいです。本番は振り切って、いろんな役をやってみようと思いながら弾きました。
♪森永冬香さん
お祭りなので、その時の気分でやってみちゃいました。楽しかったという言葉に尽きます。皆様がいるからこそ2人で演奏できることに感謝です。美季ちゃんだから受け止めてくれたと思います。
(レポート◎森山智子)
プログラム
サン=サーンス : 動物の謝肉祭
今田篤(p)北垣彩(vc)
ピアノ独奏でのシューマン「トロイメライ」の優しくも、どこか掴みどころのない雰囲気の演奏で始まったコンサート。次のシューマン「5つの民謡風小品」は、第1曲はどこかへひたすらに前進しつづけているよう、第2曲はもっと静かで夢の中のような雰囲気、第3曲はどこか哀しみを帯びた旋律を2つの楽器が併走している様が印象的でした。一転情熱的な第4曲から、最後の第5曲は明朗で華やかな演奏でした。
最後の「2人で訪れた様々な国の民族音楽で元気をもらったように、ハンガリーに旅行したような気持ちで聴いてほしい」という紹介の後のバルトークの「ラプソディ第1番」は、雑多で混沌とした雰囲気の中で可愛い雰囲気から激しい旋律まで目まぐるしく移り変わっていく様を、2人のぶつかり合ったり手を取り合ったりというやり取りが息ぴったり展開されていく演奏で聴くことが出来ました。
♪北垣彩さん
前だけでなく、横や後ろにもお客様がいるということはあまりないのですが、弾き始まると皆様温かくて、豊かな響きの中で楽しんで演奏出来ました。
♪今田篤さん
お客様の僕たちの音楽を感じ取ろうという熱気が伝わってきて楽しかったです。音楽ってやっぱりいいなと思いました。
(レポート◎森山智子)
プログラム
バルトーク: ラプソディ第1番 Op.1 BB 36a Sz 26
他
柳田茄那子(vn)居福健太郎(p)
昨年に続く2度目の参加のお2人、昨年は圧巻のクロイツェルソナタが印象に残っています。この日もリハから続々とお客さんが集まり、時折楽譜を飛ばしてしまう強風もものともせずに、その場の空気を一心にあつめる集中度の高い演奏で、今回も圧倒していました。バレエ音楽「プルチネッラ」からヴァイオリンへの編曲作品であり、原曲自体も他からの編曲であるという、起源(ORIGINES)を想起させるプログラムで、プルチネッラを辿る旅、をお客様とともに楽しみました。
柳田さんと居福さんはデュオで共演して7年目、最良のパートナー同士で、デュオの醍醐味を存分に聴かせてくださいました。
♪柳田茄那子さん
はじめに響きに慣れるのに時間がかかりましたが、ラフォルジュルネの温かいお客様に囲まれて、気持ちよくゾーンに入って演奏できました。ありがとうございました。
♪居福健太郎さん
お客様に一生懸命聴いていただき、お客様にエネルギーをいただき、楽しく演奏できました。冷静さとノリとグルーヴ感を感じながら、弾かせていただきました。気軽に音楽に触れる機会があることは、とても素晴らしいことだと思います。これを機にクラシックの演奏会の方にも足を運んでいただければ嬉しく思います。
プログラム
バルトーク:ルーマニア民族舞曲
ヴィタリ・ユシュマノフ(Br)山田ありあ(p)
呟くようにピアノが鳴り、そのピアノに深くやわらかいバリトンが重なります。幻想的なムソルグスキーの歌曲を、ヴィタリ・ユシュマノフさん(Br)と山田ありあさん(p)が演奏。同じくムソルグスキーの歌曲や日本歌曲、ベートーヴェンの歌曲を披露されました。まっすぐに丁寧に言葉を紡ぐヴィタリさんの歌と、言葉を一つ一つ拾い上げて支える山田さんのピアノに、胸が締め付けられる記憶が蘇ってきた方も多いのではないでしょうか。書かれているプログラムはロッシーニの「亡命者」まで。けれど大地の底から草木が萌え出るようなヴィタリさんの声に割れんばかりの拍手とブラボーの声が飛び、アンコールへ。伸びやかな演奏で会場を抱き留める2人を、新緑の隙間から漏れた斜陽が照らしている様子は、とても眩くて神々しくて、最終公演の締めくくりとしてこれ以上ないほど至適な光景でした。
♪ヴィタリ・ユシュマノフさん
今日のプログラムには、一度どこかで聴いてもらいたいと思った曲も入れました。皆さん喜んでくださって、山田さんも素晴らしい伴奏をくださって、素敵な30分でした。
♪山田ありあさん:本当にあっという間に時間が経ってしまいました。勉強している分野に通ずる経験が出来たことは何より勉強になりましたし、本当に楽しくて泣きそうです。
(レポート◎小原遥夏)
プログラム
ムソルグスキー:歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」より 心は深く悲しんでいる。
ムソルグスキー:「死の歌と踊り」より トレパーク
平井康三郎:ふるさとの
瀧廉太郎:荒城の月
ベートーヴェン:「さまざまな民族の歌曲集」より 14番 ロシアの歌、16番 コザックの歌
武満徹:うたうだけ
武満徹:翼
ロッシーニ:亡命者
(撮影◎堀明久)