ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2024 丸の内エリアコンサート 開催レポート(5/3)

ラ・フォル・ジュルネTOKYO2024
丸の内エリアコンサート<br>2023年4月27日~5月6日
開催レポート Vol.1(5月3日開催分)

新緑の中、今年のラ・フォル・ジュルネTOKYO丸の内エリアコンサートが5月3日に開幕しました。陽光の降り注ぐ丸の内には大勢のお客様が訪れ、演奏者もお客様もにぎやかなエリア内を回遊しつつ、木管アンサンブルやピアノ三重奏、ヴァイオリンとピアノのデュオ、ピアノソロなどのコンサートを楽しみました。

ラ・フォルジュルネ東京2024 丸の内エリアコンサート 詳細


5/3(金・祝)
丸ビル1Fマルキューブ
14:00-14:40
ピアノと木管五重奏

出演:北村明日人(p)エロイカ木管五重奏団(木管五重奏)

初日の丸ビル1Fマルキューブは、毎年丸の内エリアコンサートでお馴染みのエロイカ木管五重奏団と、ピティナ2022特級グランプリの北村明日人さんのステージから始まりました。吹き抜けの会場は2階から4階まで大勢の観客が演奏をのぞきこんで聴いていました。楽器紹介コーナーでは、それぞれの楽器紹介にあわせて北村さんがその場で弾いてみる場面も。指揮者体験コーナーでは、客席の方も一緒に二拍子を取り、手拍子も起こってとても温かい雰囲気でした。北村さんが入ってからの演奏はガラリと雰囲気が変わり、皆さんじっくりとアンサンブルを堪能していました。

プログラム
モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲
<楽器紹介>
<1分間指揮者コーナー>
プーランク:ピアノと木管五重奏のための六重奏曲
新丸ビル3Fアトリウム
13:35-14:15
ヴァイオリン・クラリネット・ピアノ三重奏~兵士の物語

谷﨑大起(vn)伊藤寛隆(cl)田母神夕南(p)

晴天に恵まれた新丸ビル三階アトリウムは、吹き抜けの上階までいっぱいのお客様がお越しでした。窓の外の爽やかな新緑を背景に、日本フィルハーモニー交響楽団の谷﨑さんと、同楽団首席クラリネット奏者の伊藤さん、そして特級を含む国内外での数々の受賞歴を持ちイタリアで研鑽を積んでいる田母神さんという、とても贅沢な三重奏が響き渡ります。プログラムはジャン・アヌイの戯曲「荷物を持たない旅行者」のためにミヨーが作曲した付随音楽から抜粋した4曲からなる組曲と、シャルル=フェルディナン・ラミュが民話を基に書いた物語のためにストラヴィンスキーが作曲した「兵士の物語」。クラリネットを含む珍しいトリオは、物語をナビゲートするようなピアノと、ヴァイオリンとクラリネットのかけ合いがドラマティックな編成でした。特に兵士の物語は1曲ごとに谷﨑さんの解説付きという、イベントならではの進行もフレンドリー。短い時間ながら、たっぷりと演劇やバレエを観劇したような濃密なコンサートでした。

鳴り止まない拍手に応えてアンコールも。「手拍子をぜひ」とのトークのあと「ラデツキー行進曲」を演奏してくださり、演奏しながらの目配せや体の動きに合わせ、観客席も一体となっての楽しい音楽会となりました。

♪田母神夕南さん
この編成の可能性、世界観の豊かさを感じていただけたらとても嬉しいです。小編成の室内楽ならではの、その場で生まれる予想できないかけ合いを是非お楽しみください。
♪谷﨑大起さん
それぞれのソリストが際立つ編成なので、一人ひとりに注目したり、また、アンサンブルにも注目してみてください。
♪伊藤寛隆さん
とても大切なレパートリーなのでたくさんの方がご来場くださり、とても嬉しいです。配信もぜひ。(木製クラリネットについて)貴重な柘植(つげ)を使って作られています。独特の音色にも注目してみてください。(レポート◎寿すばる)

プログラム
ミヨー:クラリネット、ヴァイオリンとピアノのための組曲 op.157b
ストラヴィンスキー:「兵士の物語」
16:40-17:20
ピアノと木管五重奏

篠永紗也子(p)エロイカ木管五重奏団(木管五重奏)

来年20周年を迎えるエロイカ木管五重奏団は、毎年いつも超満員。1曲目はフランスの作曲家ルーセルの作品から始まりました。華やかで疾走感あふれるアンサンブルに心も体も弾みます。

ディヴェルティメントとは、18世紀頃に確立され、楽しませる、愉快にさせるといった意味を持つ音楽様式。時を経て20世紀に再び作曲されるようになったといわれており、LFJ2024のテーマ「ORIGINES」に通ずるものが。

楽しい楽器紹介に続き、篠永さんの甘美な「月の光」。満天の星空のような青いドレスも相まって、夜想曲の世界に誘われました。ドビュッシーもフランスの作曲家で、印象主義音楽という音楽様式を始めたといわれています。

1分間指揮者コーナーでは遠慮がちに立候補したお客様が堂々と大役を務め上げ、最後は今年初演100年を迎えたラプソディインブルー。オーケストラのパートを木管五重奏でという貴重な機会に、会場の熱気が一層高まりました。この曲もクラシックにジャズを取り入れたという「ORIGINES」のひとつ。ガーシュウィンもフランスからの影響を受けた作曲家ですから、「同時代のフランスにルーツを持つ作曲家たちのORIGINES」といった趣きを感じます。熱演に万雷の拍手がなかなか鳴り止まない大盛会となりました。

♪篠永紗也子さん
ホールとは違う開放感と、お客様との距離感が楽しく思い出に残る日になりました。大好きな木管楽器との響き合いを楽しんでいただけると嬉しいです。
♪エロイカ木管五重奏団の皆さん
この編成でのラプソディー・イン・ブルーは初めて演奏したのですが、オーケストラでは担当しない部分を演奏するのもとても楽しく、機会があればまた演奏できたらと思いました。おかげさまで来年は結成20周年を迎えます。ありがとうございます。
(レポート◎寿すばる)

プログラム
ルーセル:ピアノと木管楽器のためのディヴェルティメント Op.6
ドビュッシー:月の光(ピアノソロ)
<楽器紹介>
<1分間指揮者コーナー>
ガーシュイン:ラプソディインブルー
明治安田ヴィレッジ 1Fアトリウム
12:00-12:30
木管五重奏

エロイカ木管五重奏団〜斎藤光晴(fl)最上峰行(ob)大成雅志(cl)井上直哉(fg)小川敦(hr)

エロイカ木管五重奏は丸の内エリアコンサートをきっかけに結成され、来年で結成20周年。人気も高く、演奏ばかりではなく楽しいトークや体験コーナーなど、会場を巻き込んだステージが魅力です。今回は、ホルンの大森さんに代わり小川敦さんが参加されました。大人気のトークコーナーでは、恒例のじゃんけんでメンバーの一人が担当しますが、今年は何と初参加の小川さんがトップバッター。曲の解説など充実したお話からスタートし、会場を盛り上げてくださいました。

プログラム
ビゼー:カルメン幻想曲
<楽器紹介>
<1分間指揮者コーナー>
J.シュトラウス2世:観光列車
J.シュトラウス1世:ラデツキー行進曲
13:25-13:55
メンデルスゾーン・シューマン・ブラームス

大山桃暖(p)深津天馬(p)

5月の薫風が頬を撫でるアトリウムに、大山桃暖さんと深津天馬さんの演奏が響きました。まずは大山さんによるメンデルスゾーンの「厳格なる変奏曲」。過去の音楽に敬意を払って作られたこの曲は、今回のLFJのテーマである「ORIGINES」にぴったり。深く温かい音色に、聴衆からは感嘆のため息も。続く深津さんは、粒立ちの良い音で会場をシューマンの世界へと導きます。物語を語るように「色とりどりの小品」から3つの小品を披露された後、ブラームスの「ピアノソナタ第3番」より第5楽章を煌びやかに熱演されました。友人同士だったメンデルスゾーンとシューマン。師弟関係だったシューマンとブラームス。同じ時代を生きた3人の個性が、そして、同じ時代にひたむきに音楽へ情熱を注ぐ2人の快演が会場を包みました。

♪大山桃暖さん
天井が高くよく響く場所で、きっと自分が聞いていた音とお客さんに聞こえていた音は違ったと思います。反省点はありますが、自分の音を一つずつ聴きながら楽しんで弾くことができました。
♪深津天馬さん
ビルのど真ん中で弾くという体験は特別で、しかも大ホール以上かと思うほど大きくて。こういう響く場所でどうやって自分の音楽を出していこうかと考えて弾きました。
(レポート◎小原遥夏)

プログラム
メンデルスゾーン :厳格な変奏曲 Op.54(大山)
シューマン:色とりどりの小品Op. 99より3つの小品(深津)
ブラームス: ピアノソナタ第3番へ短調Op.5 第5楽章(深津)
16:05-16:35
ドイツからの息吹

神原雅治(p)嘉屋翔太(p)

西日が燦爛と照らすアトリウムに登場したのは、神原雅治さんと嘉屋翔太さん。神原さんは、芯のあるノーブルな音でバッハの「トッカータ ハ短調」と、繊細で優雅なシューマンの「アラベスク」を披露されました。穏やかな午後を彩る神原さんの緻密な音楽に、聴衆は恍惚と聴き入ります。そして演奏は嘉屋さんへ。「最愛の兄の旅立ちにあたって」とつけられたバッハのカプリッチョを多彩な音色が天井高く響き渡り、あっという間に最後のプログラムである、ラフマニノフ(クライスラー) の「愛の悲しみ」へ。どこか憂いを帯びたフレーズと、嘉屋さんが織り成す悲しみを忘れるほど華やかな演奏が折り重なり、万雷の拍手が沸き起こりました。

♪神原雅治さん
こういう場所でのコンサートは初めてで、難しい部分もありましたが、とても新鮮でした。自分が思っていたよりもお客さんが集まってくれて、真剣に聞いてくれていたので、すごく楽しく演奏できました。
♪嘉屋翔太さん
すごく広い空間で、自分がどれくらいの音で弾いているのか探り探りのところがあったのですが、非常にたくさんのお客さんが来てくれて、みんな熱心に聞いてくださって、とても楽しい本番になりました。
(レポート◎小原遥夏)

プログラム
◆神原雅治
J.S.バッハ:トッカータ ハ短調 BWV911
R.シューマン: アラベスク ハ長調 Op.18
◆嘉屋翔太
J. S. バッハ: カプリッチョ 変ロ長調 『最愛の兄の旅立ちに寄す』 BWV992
クライスラー=ラフマニノフ: 愛の悲しみ
17:30-18:00
北村明日人と精鋭ジュニアたち~フランスを巡る音楽の旅

北村明日人(p)廣川心海(vn)井川真衣(vn)

この日のラストを飾ったのは、2022年特級グランプリの北村明日人さんと、若きヴァイオリニストの廣川心海さんと井川真衣さん。まずは廣川さんがサンサーンスの「ハバネラ」を披露。伸びやかで艶のある音が北村さんの伴奏に乗り、傾いた陽が翳りを見せる夕方のアトリウムを優しく包み込みます。たくさんの方が歩みを止め、演奏に耳を傾けます。そして北村さんが、大事な宝物を拾うように「フランス組曲」の第六番をソロで紡ぎ、会場を安らぎに導きます。ラストは井川さんがラヴェルの「ツィガーヌ」を好演。はにかんだ笑顔とは打って変わって、深く凛々しい音が轟きます。北村さんの伴奏が加わると音楽はさらに重厚に。パッション弾けて演奏が終わると、会場は熱気に溢れました。

♪北村明日人さん
開放的な場所でたくさんの人に集まっていただく機会は、LFJ以外にないと思っています。そこで今日は自分がやりたかったことが出来て、得るものも大きかったです。2人を紹介する役目も、よくサポートできたかなと思っています。
♪廣川心海さん
すごく緊張しましたが、たくさんの人に聴いてもらえて嬉しかったですし、楽しく弾けてよかったです。
♪井川真衣さん
たくさんのお客さんが聴いてくださっていて、とても楽しかったです。
(レポート◎小原遥夏)

プログラム
サン=サーンス:ハバネラOp.83(廣川)
J.S.バッハ :フランス組曲 第6番 ホ長調 BWV 817(ピアノソロ:北村)
ラヴェル:ツィガーヌ(井川)
【広告】