ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2024 丸の内エリアコンサート 開催レポート(5/4)

ラ・フォル・ジュルネTOKYO2024
丸の内エリアコンサート<br>2023年4月27日~5月6日
開催レポート Vol.2(5月4日開催分)

開催2日目には新丸ビル3Fアトリウムと明治安田ヴィレッジ1Fアトリウムにてエリアコンサートが開催されました。ブルグミュラー、ドヴォルザーク、シューマンといった作曲家に焦点を当てたプログラムから、ピアノソロ、ヴァイオリン&ピアノデュオ、弦楽四重奏にピアノ五重奏と、様々な編成の室内楽を聴くことができました。

ラ・フォルジュルネ東京2024 丸の内エリアコンサート 詳細


5/4(土)
新丸ビル3Fアトリウム
12:55-13:35
ブルクミュラー没後150年企画~ブルクミュラーORIGINES

飯田有抄(MC)西本夏生(p)会場参加者

満員のお客さんで埋まった新丸ビル。早い時間から待ってくれていた子どもたちの姿も見られました。ブルグミュラーの「アラベスク」が響き、公演がスタート。ピアノ学習者にとってブルグミュラーは「教科書」のような存在ですが、没後150周年ということでブルグミュラーの人物像を飯田さんが紐解いていきながら、公演が進みました。ピアノが普及していった19世紀、「もしかしたらフランス国王もこの曲を弾いていたかも?」とワクワクしながら18の練習曲、12の練習曲を皆様熱心に聴き入る観客の姿が印象的でした。

ブルグミュラーは実は有名曲の連弾アレンジもしていた、ということで、飯田さんと西本さんによる連弾も。お二人の楽しい雰囲気に会場もノリノリになりました。

後半の飛び入り参加コーナーでは、2人の子どもたちが、暗譜で25の練習曲から「貴婦人の乗馬」、「進歩」を披露してくれました。西本さんの演奏とはまた違う、子どもたちならではの素晴らしい演奏を聴かせてくれました。会場にいらっしゃるたくさんのブルグミュラーを弾いてこられた方々も、懐かしい思いに駆られたことと思います。最後は25の練習曲より「バラード」。西本さんの圧巻の演奏で締めくくられました。

こんなにたくさんのピアノ学習者の「共通言語」となっているブルグミュラー。ご来場の皆様は、きっと新たな魅力を見つけてくださったことと思います。これからもぜひ、ブルグミュラーにご注目ください!

プログラム
アラベスク、貴婦人の乗馬、レーゲンスブルクの思い出、愛の秘めごと、ブルクミュラー連弾曲~女王陛下万歳(連弾)、ロッシーニの歌劇《ウィリアム・テル》(連弾)
<飛び入り演奏コーナー> with 会場参加者の皆様
15:00-15:40
ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲

内匠慧(p)ほのカルテット(弦楽四重奏)

会場に入りきらないほど多くの人が集まった15時からの公演は、「このようなにぎわいを見せる環境で、このピアノ五重奏曲を演奏したらどのように響くのだろうか」という、内匠さん(p)によるトークから始まりました。第1楽章が始まるや否や、会場は一気に音楽に聞き入ります。さまざまに場面が移り変わりながら、5人の音が濃密に絡み合いました。寂寥感漂うピアノソロから始まる第2楽章。一筋の光を見いだしながらも、哀愁を帯びた旋律で何度も覆い隠されます。一転して第3楽章では、生き生きとした曲想が展開されました。そして、第4楽章。メロディーが次々と各楽器に受け継がれ、クライマックスに向かって音を通じた対話が繰り広げられました。

演奏後も、会場からの拍手が鳴り止みません。演奏を聴いた一人ひとりの心に、この空間で、この瞬間に紡ぎ出された音楽が響いたことでしょう。

♪内匠慧さん
今回「ほのカルテット」に加わり、この5人で生まれる音楽のまとまりを感じながら、気持ちよく演奏できました。
(レポート◎飯島帆風)

プログラム
ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲第2番 イ長調 Op.81 B.155(全楽章)
明治安田ヴィレッジ 1Fアトリウム
12:00-12:30
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲<アメリカ>

ほのカルテット(弦楽四重奏)~岸本萌乃加(vn)林周雅(vn)長田建志(va)蟹江慶行(vc)

5月4日の明治安田ヴィレッジ1Fアトリウムでの初回公演は、2023年大阪国際室内楽コンクール2023第1部門(弦楽四重奏)において日本人団体として過去最高の第2位を受賞した、いま最も注目を浴びているカルテットのひとつ「ほのカルテット」が丸の内エリアコンサート初登場。陽光が降り注ぐ丸の内に、ドヴォルザークの「アメリカ」の爽やかな弦楽アンサンブルの音色が響き渡り、ステージの前と後ろから聴き入る多くの観客を楽しませていました。

プログラム
ヴォルフ:イタリア風セレナーデ ト長調
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番ヘ長調 Op.96 〈アメリカ〉より第1,2,4楽章
13:25-13:55
三大国内コンクール優勝者

鈴木愛美(p)佐川和冴(p)

吹抜けのガラス屋根から陽光が降り注ぐアトリウムには、立ち見エリアまでいっぱいのお客様がお集まりでした。大きな拍手の中、東京音楽コンクール優勝の佐川和冴さんと、日本音楽コンクール、ピティナ特級優勝の鈴木愛美さんが登場。青空の下で聴く佐川さんのノクターンは、目を閉じると雲間に見え隠れする月明かりや流星が見え、目を開けると風に揺らぐ木漏れ日を感じ…聴衆に受取り方を委ねるような、自由度の高い幻想的な美しさに魅了されました。佐川さんがしばし呼吸を整えバルトークを弾き始めると、別の楽器かと思うような厚みときっぱりとした強さの音色に観客席が更に惹き込まれるのを感じました。

続いては切なくも華麗な鈴木さんのベートーヴェンです。1音めから涙でインクが滲むような和音の連続に胸を打たれます。寂しさを振り払って笑顔で手を振るような明るいメロディが、吹抜けを突き抜けそうなほど眩しく拡がり、最終楽章では再会の喜びがほとばしる心地よい疾走感。この場所ならではの響きと輝きが満ちあふれた快演に、会場が大いに沸きました。

カーテンコールでは、2階にも詰めかけたお客様を見上げて手を振る和気あいあいとした2人に、会場から更に大きな拍手が送られました。

♪佐川和冴さん
持ち時間を伺って、聴いてくださる方に楽しんでいただけそうな曲をと、レパートリーの中から雰囲気の違う2曲を選びました。広い空間を意識して左右の響きを感じながら、楽しんで弾くことができました。楽しんでいただけていたら嬉しいです。
♪鈴木愛美さん
たくさんのお客様が足を運んでくださり、とても嬉しいです。選曲は、オープンな空間に合わせて、華やかさや聴き馴染みのありそうなものと考えていたら、(同日のステージで弾く)シューマンのピアノ五重奏と同じEs-Dur(変ホ長調)の「告別」が浮かんだので選びました。音楽ホールとは違う響きもとても良くて、気持ちよく演奏できました。
(レポート◎寿すばる)

プログラム
◆佐川和冴
ショパン :ノクターン第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
バルトーク :ピアノ・ソナタ BB 88 Sz 80
◆鈴木愛美
ベートーヴェン :ピアノ・ソナタ 第26番「告別」 変ホ長調 Op.81a
16:05-16:35
ヴァイオリンの大器

河井勇人(vn)山縣美季(p)

まだ明るい日差しが差し込む会場で、河井さん(vn)と山縣さん(p)による演奏が行われました。前半は、R.シュトラウスのヴァイオリンソナタ変ホ長調。ピアノの壮大な響きで第1楽章が幕を開けると、ピアノとヴァイオリンが交互に掛け合いながら、憂鬱さから華やかさまでを鮮明に描き出します。第2楽章は、歌うようなヴァイオリンとそれに寄り添うピアノが、優しくもどこか儚い世界観を会場の隅々まで響かせました。そして緩やかなテンポで始まった第3楽章は徐々に盛り上がりを見せ、力強く締めくくられました。

後半は、チャイコフスキーのワルツ・スケルツォ ハ長調。河井さんの華麗なヴァイオリンの旋律と、山縣さんの上品なピアノの音色が、軽快かつ優雅なワルツの世界観をつくりだします。その演奏に通りがけの人も引き込まれ、思わず足を止める様子も見られました。

♪河井勇人さん
お客様に、リラックスできる環境で生演奏に触れていただけて良かったです。自分にとっても良い経験になりました。
♪山縣美季さん
1年ぶりに丸の内エリアコンサートに戻ってきて、昨年と会場は違いますが、今回もこのアトリウムの開放感や外からの光が差し込む感じを楽しみながら演奏できました。
(レポート◎飯島帆風)

プログラム
R.シュトラウス:ヴァイオリンソナタ 変ホ長調 Op.18
チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ ハ長調 Op.34
17:30-18:00
シューマン:ピアノ五重奏曲

鈴木愛美(p)三井柚乃(p)ほのカルテット(弦楽四重奏)

2023年の特級ファイナリストから二人のピアニストが登場です。共演は、国内外の音楽祭やテレビ番組などにひっぱりだこで、プロオーケストラ所属のメンバーも有する「ほのカルテット」。二人のピアニストを落ち着いた音色で優雅に包み込み、室内楽作品の良さを余すところなく伝えてくださいました。

1・2楽章を担当した三井さんの幸福感あふれる音色が、弾きはじめから会場を華やかに彩ります。弦楽の音色が前に出る2楽章、三井さんのピアノは伴奏に徹しながらも時折きらびやかな音色を奥ゆかしく香り立たせ、絶妙なバランスで互いを引き立て合っていました。

3・4楽章は、ほのカルテットと鈴木さんが大きな花束のように一体となった豊かな色彩が鮮やかに放たれました。熱の入った演奏に、会場の空気も一層の熱を帯びます。ブラボーの声も飛び交う拍手喝采のカーテンコールでは、低くなった太陽が金色に輝き、新緑の隙間からステージを讃えるように照らしていました。

♪鈴木愛美さん・三井柚乃さん
(仲の良すぎるお二人が口を揃えて興奮気味に)ほのカルテットの皆さんが上手すぎで、優しくて、リハーサルからずっと、どんなふうに弾いても必ず美しくまとめてくださることに感激しました。もっと研鑽を積んで、また共演させていただきたいです。想像していたよりずっと多くのお客様の中で弾けてとても緊張しましたが、本当に嬉しいです。
♪ほのカルテットの皆さま
鈴木さんと三井さんがとても素晴らしく、共演でき嬉しく思います。ほのカルテットとしてラ・フォル・ジュルネに参加させていただいたのは初めてですが、各ステージを通じて普段あまりクラシックに馴染みの薄い方や、小さなお子さんたちにもクラシック音楽をお届けできたのではないかと、とても嬉しく充実の一日を過ごせました。ありがとうございました。
(レポート◎寿すばる)

プログラム
シューマン :ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44
第1・2楽章 三井 柚乃
第3・4楽章 鈴木 愛美

撮影◎金子裕子

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