開催レポ:「大垣と西洋音楽の関わりに触れて~」野田知美・小林奏太 ピアノ&チェロデュオリサイタル 開催レポート
会場:大垣市墨俣さくら会館 文化ホール(岐阜県大垣市)
主催:墨俣さくら会館応援アーティスト 共催:大垣市・大垣市教育委員会
岐阜県大垣市は同市内の公共施設『大垣市墨俣さくら会館』の利用促進を目的とし、2023年3月に3名の演奏家を音楽公演の企画役『墨俣さくら会館応援アーティスト』に任命しました。2024年1月28日(日)野田知美さん(指導会員)が、応援アーティストの一人として、任命後初となる公演を企画・出演いたしました。コンサート模様をレポートします。
大垣市では、かつての岐阜・大垣藩主の戸田氏共の妻極子(父が岩倉具視)がブラームスの前で箏を演奏したことが、同市出身の日本画家 守屋多々志の作品を通じてよく知られている。野田氏はより幅広い層がクラシック音楽へ触れられる機会を創出することを目指し、上記の史実に着目した。「~大垣と西洋音楽の関わり~」というサブタイトルの通り、地元大垣が世界的に有名なロマン派の作曲家ブラームスと関わりがあったという史実を、関係作品の演奏と共に紐解いていく構成とし、地元民に寄り添った公演となるよう努めた。
演奏会はピアニスト野田知美とチェリスト小林奏太による日本の歌メドレーに始まり、続くバリトン森翔吾による朗読とスライドによる視覚的情報が絡み合う物語仕立ての演出で聴衆の心を掴んだ。時代的関連作品として友人の作曲家 中野健一氏の作品を交えつつ、ブラームスの『子守歌』、『愛のワルツ』、そしてブラームスの前で極子が演奏したという八橋検校の『六段の調べ』を小林奏太氏によるピアノとチェロの編曲で見事「和の世界」を再現。演奏会のクライマックスには、前年にアニバーサリーイヤーを迎えたラフマニノフ作曲の大作『ピアノとチェロのソナタOp.19』を演奏。クラシックに馴染みのない聴衆も多い中、チェリスト小林氏のサポートによって実現した巧みなプログラム構成により本格クラシックを受け入れてもらうことに成功した。
聴衆アンケートからは”企画が大変よかった”という意見が多く、続編を期待する声が多数寄せられている。野田氏は大垣市における安価な演奏会の常態化が深刻であると考えている中で、あえて2,000円という比較的高額な入場料を設定した。それに対し、”高いと思いながらもチケットを購入し結果満足だった”という声も寄せられた。
歴史的観点による学習的側面や物語仕立ての朗読、視覚的情報による演出も評価され今後の企画に期待が高まっている。
企画に対する高い評価の一方で“宣伝不足”といった激励の意見も寄せられ、大垣市との連携運営に課題があることもわかった。
記念すべき第一弾の公演を好評のうちに終え、野田氏は「初回公演は手探りだったので今後は大垣市と連携し改善に努め、よりたくさんの人に質の高いクラシック音楽を届けたい。」「地道な公演の継続により大垣市墨俣さくら会館の認知を高め、地元演奏家と地元民をつなぐ場に変えていきたい。将来的には地元の若手演奏家の育成や活躍の場にできるよう尽力していきたい。ピアニスト野田知美を育てていただいた大垣市に恩返ししたい。」と今後の意気込みを語った。
チェロ・楽器提供◎サルトリー東京
レポート◎墨俣さくら会館応援アーティスト
- 企画演出がとても良かったです!!朗読による語り、スライドによる説明ととても工夫してあり楽しめました。
- セロ弾きのゴーシュの朗読+生演奏+作曲家の紹介ととても贅沢な演出で素晴らしかったです。2,000円は少し高いかなと思いながらも購入しましたが、とても満足です。
- ラフマニノフが素晴らしかったです。
- お琴の曲をピアノとチェロで再現した「六段の調べ」に興奮しました。
- 宣伝不足。今回のイベント開催を知らない人が大勢います。もっと告知してくださると嬉しいです。
- 地元の歴史や文化と紐付けて演目を選んでいただけてとても嬉しいです。
- 地元にちなんだ楽曲を取り入れたことが良かった。
- 演出(進行・選曲、歴史との関係)等、絶賛。ピアノ、チェロとも素晴らしい。