レポ:12/11 東京学芸大学附属大泉小(北村明日人pf・鈴木舞Vn/動画あり)

東京学芸大学附属大泉小学校
日時:2023年12月11日(月)
会場:オープンスペース
参加人数:6年生 107名
出演:北村明日人(ピアノ)・鈴木舞(ヴァイオリン)
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東京学芸大学附属大泉小学校では初の学校クラスコンサートが行われ、卒業前の6年生4クラスが体験しました。訪れたのは、2022特級グランプリの北村明日人さんと、海外ツアーから帰ったばかりのヴァイオリニスト鈴木舞さん。

フランス音楽を中心とした今日のプログラムは、エリック・サティの「ジュ・トゥ・ヴ(あなたが欲しい)」の温かなデュオの音色で始まりました。

「このヴァイオリンや弓は何でできているか知っていますか?」という問いかけに、「木!」「馬のしっぽ!」とすぐに声が挙がる6年生。鈴木さんはさらに、「馬のしっぽの毛は、皆さんの髪の毛と同じでツルツルとしていて、そのままでは弦をこすっても音が出ません。そこで、松の木の脂(やに)を固めた「松脂」というものを塗ることによって、毛のキューティクルが弦に引っかかるようになり、初めて音が出るんです。」と、楽器本体以外にも、音が出るための仕掛けがあることを解説すると、みな「へぇ~」と自分の髪を触って確かめていました。

「ではこのヴァイオリンは何歳くらいに見えますか?」と問うと、答えは様々。「実はこれは340歳にもなるんです。ストラディバリウスという有名なヴァイオリン職人の先生にあたる、二コラ・アマティという人が作った、とても稀少な楽器なんです。」と見せると、「ええ~っ、見えない!きれい!」と驚く子どもたち。「そうでしょう。ニスを塗り直したり、楽器に負担をかけないよう弦が切れる前に張り替えたり、340年もの間、人々が大事に大事に扱ってきたからこそ、ここにあるんです。今日は古い楽器の音色も楽しんでくださいね。」と、音楽とともに楽器を継承していく大切さも伝えていました。

続いて、普段はピアノソロで弾かれるドビュッシーの「ゴリウォーグのケークウォーク」を、ヴァイオリンとのデュオで演奏。フランス音楽らしいお洒落な響きとリズムに溢れた、息ぴったりの演奏に、子どもたちもくすっと笑いながら興味深そうに聴いていました。

今度はピアノのお話の番。「ピアノ、ピアノって言うけれど、本当の名前は『ピアノ』じゃないんです。イタリア語で『クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ』って言う、呪文みたいに長い名前なんですよ。」と北村さんが言うと、「長いっ!」と目を丸くする子どもたち。「先ほどのヴァイオリンは340歳と言っていたけれど、340年前にはこのようなピアノはまだなかったんです。もっと小さくて、音も強弱が出ないような楽器でした。それが、だんだんと音の数も増えて、もっと小さい音、もっと大きい音が出せるようにと、楽器もどんどん進化してきて、今のようなピアノになりました。だから、『小さい音も大きい音も出せるクラヴィチェンバロ(ピアノのご先祖様)』という意味の名前がつきました。」と解説すると、子どもたちは呪文のような名前にもそんな意味があるんだ、とがんばって復唱しようとしていました。

また、ヴァイオリンの弦が羊の腸だったというお話に絡めて、「こうしたグランドピアノには1万個ほど部品があるのですが、実はこの中にも動物由来のものがあります。」と言うと、色々な意見が。「実はピアノの弦を叩くという重要な役割をしているハンマーが、羊の毛をぎゅっと圧縮して硬くしたものなんですよ」と言うと、ふわふわの毛を想像した子ども達は「羊?」と驚き顔。「鍵盤を押すと、シーソーのような仕組みでハンマーが上がるのが見えるので、近くに寄って、弾いている時の動きを観察してみてください。」と言うと、「えっ、いいの!?」と喜んで寄っていきます。「これ?」と指をさして尋ねる子、ピアノの向こう側から中を覗く子、指の動きに「わぁ!」と歓声を上げる子、ピアノの下を覗いてみる子、様々な場所から、北村さんの弾くショパンの練習曲「エオリアンハープ」の演奏を楽しみました。

次の曲は6年生の音楽の教科書にも載っている、セザール・フランクの「ヴァイオリン・ソナタ 第4楽章」。「この曲では、最初にピアノが弾いたメロディをヴァイオリンが追いかけるように続いていくので、その対話を楽しんで探しながら聴いてください。」と、その様子を少し抜粋して示してから演奏しました。明るく、穏やかに、せつなく、甘く、激しく、不安気に、情熱的にと次々に変わっていく対話の様子は、まるで一編の物語を読んでいるようで、子どもたちの表情もぐいぐいとその世界へ惹き込まれていくのが見て取れました。

最後の曲は打って変わって酒場の音楽のようなモンティの「チャルダッシュ」。鈴木さんがヴァイオリンを弾きながら前や後ろを練り歩くと、子ども達は目を輝かせて食い入るように見たり、ため息をついたり、目が合ってにっこりとしたり、目の前の演奏の迫力に顔を見合わせたりして聴いていました。

子どもたちとは映画『耳をすませば』の主題歌「カントリーロード」の歌との共演をし、きれいな歌声が響きました。

質問コーナーでは、「ヴァイオリンの足元に置いてあるペダルみたいなのは何ですか?」と譜めくりペダルの操作を見せてもらったり、「ピアノやヴァイオリンはいつ頃、どんなきっかけで始めたのですか?」「どんな国で弾いたことがありますか?」「他の楽器は弾けますか?」「楽器の値段は?」「1日の練習量は?」「ピアノを弾く以外に気を付けていることはありますか?」など、途切れなく質問が飛び交いました。

チェロと勘違いしてヴァイオリンを始めてしまった話や、演奏には筋肉が大切なので、毎日の練習には細かい筋力を落とさないという意味もあることや、タンパク質を意識的に摂るようにしていることなど、意外な答えに興味津々の子どもたちでした。

児童の感想より(抜粋)
  • 私はピアノを習っているのですが、今回の演奏を聴いて「やっぱりピアノってすてきだな!」と思い、気持ちが高ぶりました。北村さんが言っていた、「ピアノをひきたい!」という思いややる気が前より出てきたので、もっと上達します!
  • ピアノの動きを演奏中に見るという、なかなかできない体験ができてよかったです。
  • 「エオリアンハープ」は私達がピアノの目の前まで行って演奏を聴きました。近くで聴くと、よりピアノの音が鮮明に聞こえ、1つ1つの音が奏でて、曲が完成していくことに魅力を感じました。
  • 北村さんはプロだから普通かもしれませんが、目が追い付かないほどに指が速く動き、とてもきれいな音が奏でられていてすごかったです。これが当然だった場合、当然になるためにも、ものすごく努力が必要だと思うので、その諦めない心をとても尊敬します。
  • 鈴木さんが私の近くにいらした時の迫力と強さにとてもおどろきました。1つのヴァイオリンだけであれだけの音量が出ると知ってびっくりしました。今まで学校の授業の一環としてクラシック音楽を鑑賞したことはありましたが、ヴァイオリンとの距離があまりに遠すぎて、しかもたくさんの台数のヴァイオリンがあったので、1台だけのヴァイオリンの威力を体験する機会は今回が初めてでした。
  • 歩いて近くまで来てくれた時、すごくヴァイオリンの振動が伝わってきました。ヴァイオリンは他の楽器に比べてどうして変化していないのか不思議でした。
  • 今回、ピアノとヴァイオリンが同時に弾いているのを聞き、ピアノはピアノだけでの魅力があり、ピアノとヴァイオリンが合わさることでできる魅力もあると気づきました。ヴァイオリンもピアノも、音の1つ1つが楽しそうだったり、悲しそうだったりして、きれいだなと思いました。
  • フランクのソナタは、曲から2人が仲直りしていく様子が想像できて、聞いていてとても楽しかったです。
  • ヴァイオリンがメロディの時はヴァイオリンを目立たせるためにピアノは大きな音は控えたりして、ヴァイオリンとの一体感が感じられました。
  • 印象に残っているのは2人のかけ合いがされている場面です。勇気と決意が表れていてすごいなと思いました。
  • 最後のモンティのチャルダッシュは、一気に雰囲気が変わる所があり、そこの切り替え方が上手で印象に残りました。
  • 私は他の楽器と合わせるのはとても難しかったです。どうしたら他の楽器と音を合わせやすくなりますか?
  • 最後に私達も一緒に歌った「カントリーロード」ではヴァイオリンの音色が曲に合ってのびのびとして優しく、私達もいつもよりもリラックスしてきれいな歌声で歌え、とても良かったと感じました。
  • 質問がたくさんあったと思いますが、一つ一つ丁寧に答えてくれて、とてもうれしく勉強になりました。
  • 将来の夢を聞いた時に、死ぬまでヴァイオリンを弾き続けていきたいというふうに言っていて、私にはまだ死ぬまでやり続けたいなと思うことがないので、すごく尊敬します。
  • 自分の好きなものを職業にできるのがすごいし、それまでの道のりも大変だったと思います。ぼくも、好きなことをとことんつきつめて、舞さんのように職業にして楽しく過ごしたいと思います。
  • 授業が終わった後に個人でお話できて嬉しかったです!

学校クラスコンサート
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