インタビューVol.8:中島美由さん(ヴィオラ)
2023年4月、かつての学校クラスコンサートのアーティストと児童との、とても素敵な再会がありました。横浜市立みたけ台小学校に通っていた中島美由さんがヴィオラ奏者となり、当時クラスコンサートに訪れたチェリストの海野幹雄さん・ピアニストの海野春絵さんと再会し、13年越しの共演も果たしました。中島さんにお話を伺いました。
海野幹雄さん・春絵さんとの再会は、どのような形で実現したのですか?
私は音楽大学をヴァイオリン専攻で出た後、現在はヴィオラ奏者として演奏や研修を受けたりしながら、オーケストラ奏者を目指して研鑽を積んでいるところです。今年の4月に横浜のフィリアホールの室内楽アカデミアをアカデミー生徒として受講しましたが、その時の講師の中に海野幹雄さんと春絵さんがいらっしゃいました。アカデミアは、受講生以外が全てプロの奏者という室内楽を構成し、一緒に演奏しながら学ぶという贅沢な機会です。私は弦楽五重奏にヴィオラで参加し、何とチェロの海野幹雄さんと一緒のメンバーに入ることができました。実践的なレッスンを重ね、最後に本番のステージで共演することができました。
アカデミアに参加する際に、当時学校クラスコンサートに来てくれたアーティストだと覚えていたのですか?
はい、もちろんです。あの時小学校に来てくれた先生がいる、と思って受講したので、同じメンバーに入れてとても嬉しかったです。ずっと名前を覚えていて憧れていて、当時は一緒に舞台へ上がって共演できるなんて考えもしていなかったので、本当に夢のようでした。
海野さんへはいつお伝えされたのですか?
実はレッスンの時には、雑談などできないくらい緊張していたので、ずっと話せませんでした。本番が終わってから、受講生が1人1人皆さんの前で話す機会があり、そこで「実は小学校の時に海野さん夫妻が学校へいらしてくださり、その時の生徒だった」ということを話したところ、とてもびっくりして喜んでくださいました。あの時の人と一緒に演奏できているというだけでも光栄だったのに、こんなに喜んでくださるのかと思って、さらに嬉しくなりました。
こうしてずっと覚えていてくださって、演奏家になって共演が実現したということは、私たちにとってもとても嬉しいことです。
当時小学4年生だったと思いますが、音楽の授業の様子やクラスコンサートの様子を覚えていますか?
歌の指導が熱心な音楽の先生で、毎回音楽の時間が楽しみでした。クラスコンサートのことは、内容ははっきりとは覚えていませんが、プロの演奏家の先生が自分の学校へいらしてくださったのが、とても嬉しかったことを覚えています。保護者も参観できたので、母もよく覚えていて、その後も家でその時のことを話したりしていました。楽器をやっていたのでホールへ演奏会を聴きに行くことはありましたが、自分たちの学校へ来てくれてあんなに近くで聴かせてくれるのは、また全然違って本当にすごい経験で、印象に残っています。
当時からヴァイオリンを習っていたのですか?
はい、4歳の頃からヴァイオリンを習っていましたが、習い事の一つという感じでした。小学生の頃はジュニアオケに入っていました。なので、海野先生が学校へ来て素晴らしい演奏を聴かせてくださったので、同じ弦楽器をやっている身としてとても誇らしい気持ちになりました。「楽器をやっている人はいますか?」と聞かれて、自信をもって手を挙げたのを覚えています。同級生にもう1人ヴァイオリンをやっている子がいて、その子と一緒に「すごかったね。」「楽しかったね。」などと話して盛り上がっていました。その子も今ヴァイオリニストになっています。
今は、演奏活動の一環でアウトリーチに行くこともありますか?
プロのオーケストラのエキストラとして小学校の体育館でアウトリーチコンサートに参加させていただいたり、みなとみらいホールで行われた横浜市の小学生向けの音楽鑑賞会に参加させていただきました。聴いてくれる子どもたちを見ていると、以前は自分があちら側だったのに、今度は自分が伝える側になっていることに、最初はすごく不思議な感じがしましたが、とても幸せに感じています。オケは初めてという子がほとんどで、小さい子に聞いてもらうのは本当に嬉しいです。今、YouToubeなどで簡単に音楽が聴けるけれど、生の音楽は、私の時もそうだったように、強い印象を与えてくれて、全く違う経験だと思います。こうした生の演奏に触れることで、音楽が好きな子が増えてくれると嬉しいなと思っています。
今は企画されたものに参加しているだけですが、いつか室内楽などで自分たちでも企画して行ってみたいです。
母校の先生は、音楽家になられたことをご存知ですか?
いいえ、小学校は先生も変わってしまうので、ずっと訪れていないので、ご存知ないかと思いますが、今音楽家になっていることや、海野さんに再会したことなど、お伝えしたいですね。いつか母校にアウトリーチで演奏家として戻れたら素敵だなと思っています。今回は春絵さんとは共演は叶いませんでしたが、同じ神奈川を拠点にしているので、またお二人とご一緒できる機会があれば嬉しいです。
そうですね。同じ地元で、今度は演奏家としてご縁が長く続くとよいですね。素敵なお話をしていただきありがとうございました。
(2023年6月18日取材)
桐朋学園大学音楽学部卒業。第15回セシリア国際音楽コンクール大学生の部第1位、及びイタリア音楽祭賞を受賞。2023年5月に行われたカーネギーホール ワイルリサイタルホールでの受賞者演奏会に出演。第22回日本演奏家コンクール弦楽器部門大学生の部特別賞。PMF2021音楽大学選抜メンバー。小澤征爾音楽塾オーディションに合格し、オペラプロジェクトXVIII「こうもり」、セイジ・オザワ松本フェスティバルに出演。フィリアホール室内楽アカデミア第5期生。これまでにヴァイオリンを久保田巧、ヴィオラを鈴木学、鈴木康浩、室内楽を磯村和英、山崎伸子、鈴木康浩、藤井一興の各氏に師事。現在桐朋オーケストラ・アカデミー研修課程ヴィオラ専攻に在籍中。