インタビューVol.2:草加市立西町小学校の校長先生と児童の皆さん
2022年10月7日、ピアニストの伊賀あゆみさんとホルン奏者の大森啓史さんが訪れた草加市立西町小学校クラスコンサートの開催後、校長先生と6年生の児童の皆さんから嬉しいお手紙をいただきました。子どもたちにとって学校クラスコンサートがどういう体験だったのか、この経験を通じて、実際の6年生の心には何が見え、何が響いていたのか、その一部をご紹介します。
私は本校に新任校長として3年前に着任しました。着任時は全国で一斉に臨時休業を宣言された中でした。一学期の半ばに学校が再開されてからも、子どもたちに制限のかかる中での学校生活で、現在も同様ですが緊張の毎日です。本校では、子どもたち一人一人を大切にするといった視点を明確にするため、”限りない無限の可能性と大切な命を保護者様よりお預かりしている”と捉えています。そういった捉えの中で音楽主任は今年度もピティナ学校クラスコンサートの実現に尽力してくれました。私にとって自慢の音楽主任なのです。
当日は伊賀あゆみ様、大森啓史様に、ていねいに音楽の楽しさ、楽器の特性などを子どもたちにご指導いただきました。お二人とも本当に人柄が素晴らしく、子どもたちの後方で一緒に授業に参加してのですが、どんどん子どもたちが前のめりになる様子に校長して嬉しく、今回もこの企画ができて良かったなとありがたく思いました。
最後には図々しくもプロのお二人の前で子どもたちがリコーダーを演奏する際、指揮までさせていただきました。今でも「校長先生、なかなか指揮上手でしたよ!」「あのコンサート、楽しかったですね!」と子どもが私に語りかけてくれます。私と6年生にとって「ラバースコンチェルト」は忘れられない大切な一曲となりました。本当にこの企画は良い企画だと思います。今後も継続、発展されますことをお祈りしています。
草加市立西町小学校 校長 須賀達也
西町小学校は金管クラブが盛んで、普段から金管楽器に親しんでいる子どもたちからは、ホルンの演奏する様子にも具体的な視線が投げかけられました。
- 私は金管クラブで1年目でチューバを担当しているのですが、強弱をどうやってつけたらいいか分からず困っていたので、今回の演奏はすごく勉強になりました。
- 「ハンターズ・ムーン」では、演奏に音を弱くしたり、低い音を出したりする時にひざを曲げていて、全身で音を出している感じがして、すごく感動しました。
- マウスピースのくちびるの振動のしかたがチューバと全然違うので驚きました。
- ホルンは低いひびきを出すためにたくさん息を使っているので、息づかいがとてもむずかしいと思いました。
- 現代のホルンと昔のナチュラルホルンでは、ホルンのつくりと音がちがってびっくりしました。昔のホルンは手で自分の感覚で音階を鳴らさないといけないので、すごいなと思いました。
6年生ならではのするどい観察眼で、間近で見たからこそ分かる楽器や演奏の様子、そして演奏者の様子を捉えています。
- 近くで演奏を見させていただいた時、手の形や指の動きがとてもきれいで、音だけで聞くのとは、またちがう感じがしました。
- リズムがゆっくりのところや速いところの音の感じが全然ちがったので、すごいなと思いました。1つ1つの音が遠くにいてもひびいていたので、ひびき方がすごいんだなと思いました。
- ピアノの中のハンマーの話を聞いてからピアノの中を見ると、本当にそうなっていて、これか!と思いました。ピアノを演奏している時に、すごい速さで指を動かしているのに、指はいたくならないのかと、演奏を聞きながら思いました。
- 伊賀さんのピアノの音は、なめらかで美しい音色でした。近くで聞いた時は迫力がありました。遠くで聞いた時は、なごんで聞けて、後ろから聞いた時は、よくひびきを感じることができました。ホルンの大森さんとの演奏は、うまく重なっていて、目立ちすぎず、目立たなすぎず、2人の演奏は心までおどるようでした。ただ演奏するだけではなく、体全体を動かして表現していたのですごいと思いました。音の強い所や弱い所を、けんばんを押す力で変えていてすごいなと思いました。
- 「小犬のワルツ」を聞いた時、力強い乱打ややさしく高い音に私は心が自然と動きました。この演奏を聞いて、頭の中で、力強い乱打の時は、小犬が色々なところをかけ回っていたり、静かでやさしい音色の場面では、つかれて寝ているような…そんな気が私はしました。大森さんのホルンと一緒に演奏をしている時は、ピアノがホルンを引き立たせ、その中でも時に出てくるピアノがホルンと一緒に会話をしながら、お互いを尊重し合っているように感じました。
- 「小犬のワルツ」ではせん細でなめらかにおどっているような感じで、エチュード10-12では激しい感情がひしひしと伝わってきました。曲のコンセプトが聴いている人にも分かるように弾けるのはとてもすごいことだと思います。
- 途中でホルンの部分をはずし、水滴を出している所から、ホルンを演奏するためには、ものすごい肺活量だと分かり、手を開け閉めして音を変えていることを一緒にしていると思うと、ものすごく大変だと思い、すごいと思いました。
- 時々聴いた「ピュー」という音は、どのようにして出しているのか、ずっと考えていましたが。間違っているかもしれませんが、ホルンに入れる息を強く入れて、指を全部推すと「ピュー」という高い音が出るのかな、と思いました。
- 「ラバーズコンチェルト」との共演では、ホルンの近くの場所で演奏したので、ホルンのかざりの旋律がリコーダーに寄りそうように演奏されていたのを実感できて、楽しかったです。
6年生の心にずっしりと響いたのは、演奏者の気持ちや姿勢。これから中学校へと羽ばたこうとする子どもたちそれぞれが「これからどうしたいか」を考えるきっかけにもなったようです。
- 演奏している時と、話している時が変わっていて、本気でやっているということがすぐに分かりました。
- 聞いている時に、ただの音や曲ではなく、伊賀さんの思いも一緒に伝わってきました。伊賀さんがピアノについてお話している時も、伊賀さんのピアノへの思いがとても感じられました。
- 「ハンターズムーン」では、かりうど達が出発する感じで、人が歌っているようでした。まるで曲で読む物語のようで、演奏者の大森さんの気持ちが伝わって感動しました。
- 私はピアノをやってみたい気持ちもあるけれど、覚えることが多くてとても難しそうなのでやる気がでませんでした。けれど伊賀あゆみさんの演奏を聞いて「ピアノって難しいけど、とても楽しそう!」と思い、少しやる気が出ました。
- これから出会う楽器が「これからのパートナーになるかも」ということを考えさせてくれるのが、吹奏楽部なのかなと思いました。
- ぼくは音楽はとても苦手で、音楽を聞くのもすぐあきてしまい、つまんないと思っていました。伊賀あゆみさんのピアノを聞いて、ピアノってこんなにおもしろいんだとか、こんなに気持ちを表現できるんだと分かりました。これからはしっかり音楽の楽しみを持ちながら、授業をしたり、家にピアノがあるので、かんたんなのをひいてみたり、音楽をききにいったりして、楽しい音楽と自分の距離感をちぢめていきたいと思いました。
- ピアノの演奏は手の動きが速くて、自分たちじゃできないと思いました。伊賀あゆみさんのピアノの動きは、すごい時を経てできるようになったと思いました。なので、自分も何かに挑戦すれば、いつかは努力が実る、と思うことができました。自分もあきらめないで、何かに挑戦したいと思います。
45分間の体験でしたが、目の前で見て、聴いて、話した子どもたちは、演奏や楽器を見る目が変わっただけでなく、自分たちだけのために演奏してくれたアーティストたちの本気の思いも、肌で感じ取ってくれました。これからの人生において、ほんの少しの体験でもがらっと物の見方が変わること、何かを好きという気持ち、何かに一生懸命な姿というのは他人の心を変えるほど強いということを、心に刻んでいってくれたら、と願っています。