シンフォニー・ブランチ10回記念インタビューリレー!第3弾:尾崎未空さん
「シンフォニー・ブランチコンサートVol.10」の出演者ピアニスト3名に連続インタビュー。
オール・リスト・プログラムでザ・シンフォニーホールに登場する尾崎未空さんにお伺いします。
初めて弾いたのは小学5~6年生で、演奏家用エチュードでした。その後ソナタ、コンチェルトなどいろいろなものに取り組むようになりました。弾き始めた当時の感覚としては「ピアニストとして凄い」というのがあります。手の感覚、弾きやすさ、2本の手で弾いているものがどう聴こえているか・・。何だろうこれは、と。ピアノの魅力の引き出し方、生かし方が上手いというか、その点の天才なのだというのはいつも思っていることです。
様々な曲の中でもリスト特有の似たようなパッセージがよく出てきますが、その印象は決して同じではなく、作品ごとに全く違うイメージで造られています。常に新しい感覚でいて、リストの創造力、限界のないクリエイティブさに尊敬しています。曲によって世界観が違うというか、あんなに曲の中身の幅が広い作曲家が他にいるのだろうか?と思います。いろいろな作品を弾くごとにとても興味が広がりますし、それぞれの狙いが違って振れ幅が大きいいろいろなタイプの曲に触れられるのは、とても面白くて嬉しいです。
例えば、宗教的なものと悪魔的なもの。両極端だけれど、曲の中ではその音楽の真髄をつかもうとしています。弾く時にはどれくらい自分がそれに入り込めるか、という感じでしょうか。中途半端な悪魔はありえないですから。。。どこまで曲の世界に自分が惹きつけられているか、ということが演奏するときに大事なんだろうなと思います。
作曲家によっては、胸の内を明かすような雰囲気の曲を書くスタイルもあると思いますが、リストはそうではなく、自分が憧れているもの、なりたいものを表現しているという気がします。リスト自身は他の人と同じように、まわりの人に対して愛情にあふれた人だったんだろうと思います。でもそれだけではなく、人間を超越するものに強く惹かれていたのかなと。それが悪魔であったり宗教の中の神様であったりといろいろな形で作品に出てきているのかもしれないです。でもやはり人間的な愛情が根本にあるからこそ聴いている人にとっての親しみやすさにつながっているのだろうと思っています。
ラ・カンパネラは、主催者からのリクエストでもありましたが、その他は自分で選びました。いろいろな部分を短い時間で味わってもらえたらいいなと思って。バラード2番とメフィストワルツは持っている色やテンションが格段に違うので、これをリストのオリジナルの曲として今回演奏したいと思いました。そしてリストの作品の中でも大切だといえるトランスクリプションも取り入れたかったので、短い歌曲の編曲作品もプログラムに入れました。ラ・カンパネラは人気曲ですが、改めて聴いても美しい曲ですし、リストのイメージの超絶技巧の要素も現れています。エチュードとしてもリスト作品のなかで重要な分野だと思います。
またリストの作品には、自身がタイトルを書いているものが多いです。例えばショパンは自分で作品のタイトルをひとつも書かなかったと言われていますから、リストの場合は曲ごとに意識しているものが分かり易いというか、それだけ1個の作品の中にはっきりした物語があるというのをいつも感じます。それを聴いている人と共有できたらいいなと思っています。
リストのコンチェルトは、この間初めてオーケストラと弾きました。それほど長くはなくどちらかといえば短い曲ですが、リストのもっているピアノの表現の要素が余すところなくちりばめられていて魅力的です。自分自身も弾いていてテンションがあがる曲ですし(笑) 2台ピアノで弾けるのもすごく楽しみです。
今回共演いただく岡原慎也先生は、歌曲や室内楽の分野でも活躍されている先生なのでアンサンブルで共演できることがとても嬉しいです。まだお会いしていないのですが、わくわくしています。
ピアノソロの部分は、ピアノの華やかな部分を握っているところが多いけれど、ピアノと他楽器で弾いているというところは一緒に時間が経過していく、アンサンブルの感覚を味わえるのでとても好きです。
ぎゅっとつまった20分ですが、そういった細かいところとかもその分掘っていける、味わっていけるんじゃないかなと思います。
楽しみです!