レポ:11/7 草加市立清門小学校(神宮司 悠翔pf・中島実樹也tp/動画あり)
今年の草加市第1校目、清門小学校にはピアニストの神宮司悠翔さん(2022年特級銀賞)とトランペット奏者の中島実樹也さんが訪れました。
コンサートに先立って校長先生よりお話がありました。「皆さんにとって今日は特別な日です。本来ならお金を払って音楽会に行って聴かなければならないアーティストのコンサートを、学校で、こんな間近で、聴けるのです。ぜひ、目と耳と心で聞いてください。それでは、アーティストの方の入場です!」の掛け声とともに、大拍手で、コンサートさながらに演奏者が入場しました。

まずはトランペットとピアノの演奏でアーバンの「華麗なる幻想曲」。トランペット特有の華やかな音から、伸びやかな音、歯切れのよい音、速いパッセージなど、様々な魅力を見せていきます。
その後、なんとけん玉が得意という校長先生とのコラボ!2人の演奏する「もしもしかめよ」にあわせて校長先生が軽やかな手さばきとステップでけん玉を披露。最後はグリッサンドで大技を決めて大拍手!子どもたちも緊張からとても和んだ空気になりました。

学校クラスコンサートは初、という神宮司さん。穏やかで優しい語り口に、子どもたちが耳を澄ませます。「ピアノの鍵盤はいくつあるか知ってる?」とクイズを出してから、「これから弾くモーツァルト、という、教室の後ろにも貼ってある作曲家の時代には、こんなになくて、60鍵くらいしかありませんでした。」と次の曲へと誘います。
「5歳で作曲を始めたモーツァルトの18のソナタのうち、2曲だけ、短調の曲がありました」と言ってその劇的なソナタを演奏すると、子どもたちが熱演に引き込まれる様子が伝わってきます。
ピアノは羊のフェルトのハンマーで弦を打って音を出すという打楽器の要素ももつことを、内部を見せながら説明したり、足元を見せながら3本のペダルの効果の違いを感じてもらうなど、子どもたちの反応に丁寧に応えながら、「楽器が鳴る仕組み」を説明しました。

リストの超絶技巧『雪あらし』の演奏の前に神宮司さんは「みんなは、雪あらしって聞くと、どんなイメージを持ちますか?」と尋ねます。「静かなものから激しいものまで、みなが思う雪嵐をイメージしながら聴いてね」と言うと、学校のピアノを確かな技巧で表現豊かに奏でました。

次はトランペット。事前に仕組みについて学習していたという子どもたちは、「これの名前は?」と問いかける中島さんに、「マウスピース!」と口をそろえて答えられました。
「ではもう一つ質問。どうやって音が鳴るのでしょうか?」には、子どもたちからは「息を吹きながらピストンを押す」という意見。やって見ますが、音が出ません。「強く息を吹く」出ません。「じゃあ、やさしく吹く」出ません。「リコーダーと同じようにトゥーって吹いたら」いろいろな案を試してみますがなかなか音が出ません!? 「正解は、くちびるをこんな風にふるわせで音を出すんです」と言って、くちびるを震わせたままマウスピースに、そしてトランペットにくっつけていくと、トランペットの音が出ました!「これでみんなもトランペット博士ですね」と中島さん。みんなが知っている金管楽器、チューバ、ホルン、トロンボーン、そして金管でできているのに木管楽器といわれれるフルート、その楽器群の違いも解き明かしました。

そして、ピアノで聴いたモーツァルトと同時代のハイドンの協奏曲で、トランペットの音の高いー低い、大きいー小さいなどを感じながら鑑賞しました。
子供たちから今日一番の歓声が上がったのが、なにげなく置かれていたスーツケースから出された、小さなトランペット!ピッコロトランペットと呼ばれるその小さな楽器で、アルビノーニの「トランペット協奏曲」を演奏して終了しました。

最後は、子供たちも練習してきた「ふるさと」を合唱で共演すると、澄み切った歌声が教室に響き渡りました。1クラスずつ代表の児童が花束を贈呈し、こどもたちからの感謝の言葉とともに、名残惜しそうに教室を後にしていました。

僕にとっては初めてのクラスコンサートで不安もありましたが、子どもたちがとても明るく反応してくれて、次第に楽しさの方が増してきました。また、共演した中島くんのトーク力の高さには衝撃を受けました。中島くんには本当に感謝しています。そのおかげもあって子どもたちもさらに興味を示してくれてきたのだと感じました。
今回このトークコンサートをやるにあたって工夫したところは、まず曲目です。あえて子どもたちに馴染みのあるようなとても知名度の高い曲は選びませんでした。モーツァルトとリストという2人の作曲家を今回は取り上げましたが、子どもたちにとって知っているモーツァルトと言えばおそらく明るく楽しいモーツァルトだと思ったので、今回はモーツァルトの少し違う面が見える短調の曲にしました。また、リストは、「雪あらし」というとても情景がイメージしやすい曲を用意しました。加えて、途中でクイズを出したり、子どもたちにピアノの中をのぞいてもらったりしてなるべくみんなが飽きないようにと工夫しました。

子どもたちには、音楽をもっと身近に感じて欲しいです。特にクラシック音楽は普段あまり触れる機会が無いからこそ遠い存在に感じてしまう方も多いと思います。でも実は、国や言葉、年齢の違いを全て越えて、誰とでも共有できる世界共通の言語です。何百年も前に生きていた作曲家たちが残した音楽を聴くことで、昔の人の気持ちや想いが、今の私たちにまっすぐ届く。これは本当にすごいことだと思います。
音楽を聴いて心が動く経験は、言葉では得られない大切な学びです。その豊かな時間が、子どもたちのこれからの世界を広げる力になることを願っています。
私自身、小学生を対象としたアウトリーチへの参加は今回が初めてであり、普段中高生の、それも音楽に意欲を持って取り組んでいる吹奏楽部の生徒としか接したことがなく、音楽やトランペット、ピアノにあまり深く触れる機会のない小学生達にどう楽しんでもらえるか、音楽や楽器に興味を持ってもらえるかとても不安はあったのですが、演奏や私たちの話をとても真剣に聞いていただき、時に小学生らしい素直で無邪気な反応もあり、こちらも楽しめるクラスコンサートをさせていただけたなと思いました。
授業の進め方などは私は完全にアドリブだったのですが、ただ話を聞いてもらうだけでなく、子どもたちから出た素朴な発言も汲み取ったり質問を投げかけたり、みんなが座っている所に入って行ってより近くで楽器を見せるなど、みんなにも授業を作ってもらえるように心がけました。

清門小のみなさんへ
みなさん、クラスコンサートでトランペット、そして音楽に少しでも興味を持っていただけたでしょうか?
もしこれからどこかでトランペットの音色が聞こえたらこのクラスコンサートを思い出していただけたらうれしいです。
みなさんの元気いっぱいな姿に私も元気をもらいました。これからも音楽を楽しんで、学校生活を送ってください。
近い距離で生の音楽に触れることができた喜びを、子どもたちの眼差しから感じることができました。
- ピアノやトランペットの強弱でどんな場面なのか、明るいのか暗いのか、よく想像することができました。
- ピアノの音の高低感、音の強弱で、さまざまなふってくる雪が再現されていて、自分がまるで雪のちたいにいるようだった。
- トランペットでは、マウスピースに軽く息をかけるのではなく、口をしんどうさせるように吹くのがわかりました。
- 超絶技巧練習曲という曲をきいて、1つの曲には色々な音や音色があってピアノはいろいろな音や音色がだせるとわかりました。
- ピアノの中で色々なことが起きて、音が鳴っているのがわかりました。
- 小さな雪あらしと大きな雪あらしがまざって、もっときれいな音楽になっていました。最初は暗い感じかと思っていたけれど、明るい曲ですてきでした。
- 2人でひくところが、相手のパートもよく知ってちゃと合わさっていたところが、2つの楽器だけでもこんなにきれいにきれいにできるところがすごいと思いました。
- 中学に入ったら吹奏楽部に入りたいので、トランペットを吹きたいです。
- アーバンの曲はとても迫力があることに気づきました。感じたことは、静かにやさしく吹いていたことです。もっときいていたいと考えました。
- トランペットは、歌っているようにふいているのがすごいと思いました。

