開催レポ:ごほうびクラシック第8回ピアノオールスターズ

日程:2023年12月3日(日)
会場:第一生命ホール
出演:今泉響平(p)、太田糸音(p)、尾崎有飛(p)、桑原志織(p)
主催:認定NPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク
協力:一般社団法人 全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)
協賛:アフラック生命保険株式会社
協力:YMCメディカルトレーナーズスクール
写真提供:認定NPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク
撮影:(C)大窪道治

ごほうびクラシック ピアノ・オールスターズⅡ4人のピアニストが描く「ラフマニノフの肖像」が第一生命ホールにて開催されました。当日のレポートをお届けします。

「ピアノ名曲の花束」と題した第1部では、事前に寄せられたリクエスト曲から7曲を個性豊かな4人のピアニストたちが披露しました。

今泉響平さんの「華麗なる大円舞曲(ショパン)」は、終始優雅な雰囲気で、その中に華やかさ、軽やかさが垣間見えるような演奏。続いての尾崎有飛さん静謐さを保ちながらまるで螺旋を描いているかのような「テンペスト(ベートーヴェン)」から一転して激しさや情感の豊かさが伝わってくる「狩(リスト)」。桑原志織さんは優しく、音の粒と戯れているかのような「ラ・カンパネラ(リスト)」でした。2曲を演奏した太田糸音さんの「インヴェンション第14番(J.S.バッハ)」は右手と左手が語り合っているようで、「献呈(シューマン=リスト)」は元が歌曲であることを思い出させてくれる演奏でした。第1部最後はまた今泉響平さんが登場し、その独特の感性で1音1音こだわり抜いた「バラード1番(ショパン)」が会場に鳴り響きました。

第2部では、今年がラフマニノフの生誕150周年のメモリアルイヤーということで、4人のピアニストがそれぞれのアプローチでラフマニノフ作品を演奏しました。

最初に登場した今泉さんは、ラフマニノフと編曲に焦点を当てて2曲取り上げました。ラフマニノフの歌曲がピアノ独奏版に編曲された「ここは素晴らしい場所(ラフマニノフ=ルーウェンサール)」は今泉さんご自身が採譜した曲です。静けさのなかに美しい情景が現れてくるかのような演奏でした。逆に、ヴァイオリンの無伴奏曲がピアノ独奏版に編曲された「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番(J.S.バッハ)」は複雑な音の連なりが絶え間なく展開していく「プレリュード」、人形劇を見ているかのような「ガヴォット」と続き、最後は華やかな「ジーグ」で締められました。

次の太田さんも編曲作品を取り上げました。曲は、ピアノとヴァイオリンのための曲をピアノ独奏版に編曲した「愛の悲しみ(クライスラー=ラフマニノフ)」で、落ち着いた雰囲気で始まりましたが、次第に感情的になっていき、原曲よりもより華やかで複雑に装飾された旋律をしっとりと演奏しました。

ラフマニノフの小品として3曲を演奏した尾崎さんは光が繊細に煌めいているような音で「前奏曲集第5番」を、一転して重苦しく始めた「鐘」は堅実な音のなかにひたひたと迫ってくるような情熱が感じられました。最後は「練習曲集『音の絵』第5番」の、激しさと穏やかさが同居しているような不思議な演奏で締めくくられました。

桑原さんの「ピアノソナタ第2番」 という大曲の第2、3楽章は、光が時折反射するような海、街を行き交う人々の喧騒、森のざわめきや、嵐など、様々な情景が次々移り変わっていくような、これまでの3人によって様々な角度から深められていたラフマニノフの世界を、さらにもう一段上の世界に連れて行ってくれるような演奏でした。

これまでに第一部、二部通して聴いて4人のピアニストの千差万別の世界に触れたところで、最後に「組曲『ロマンス』『タランテラ』」というラフマニノフの連弾作品が太田さんの桑原さんの2人によって演奏されました。個性豊かな2人のピアニストの2台ピアノによる対話は「ロマンス」では穏やかで2人で1本の糸を紡いでいくような演奏でしたが、一転して「タランテラ」では激しい感情のぶつかり合いを目の当たりにしました。しかしそのぶつかり合いもお互いを信頼しているが故であることを証すように、最後の音が収束し立ち上がると、お互いの方を向き合って頷きあいました。

終演後の舞台上での4人のコメントです。

今泉響平さん

ラフマニノフにスポットを当てたこのコンサートでは、同じ作曲家でも違う年代の曲や編曲、最後には2台ピアノまで、様々な形でお楽しみいただけたのではないでしょうか。

尾崎有飛さん

第一生命ホールは2002年に初めて演奏して以来、コンクールとして弾き、聴き、審査にくる場所でした。今回コンサートとして演奏するために来られたことが嬉しく、また3人の演奏も心から楽しませていただきました。

太田糸音さん

ピティナの全国大会の場所で、ホールのベルが鳴ると今でも背筋がぴんとなります。憧れだった方々と共演して、ピアノを弾いていて良かったと思いました。これからクリスマスになりますが、体に気をつけてお過ごしください。

桑原志織さん

素晴らしい3名と飯田さんの華やかなMCのおかげで走り抜くことができました。ラフマニノフのメモリアルイヤーに自分も演奏家として参加できて嬉しいです。クリスマスまで色々なイベントがありますが、皆様にまたお目にかかれたら嬉しく思います。

レポート:森山智子(2023特級公式レポーター)

開演前のキッズステージ体験コーナー
小学生17名が参加。出演者との交流や、第一生命ホールのピアノを試弾してもらいました。

動画配信決定!

「【第1部】皆さまのリクエストで決定! ピアノ名曲の花束」は、トリトン・アーツ・ネットワークのYouTubeチャンネルにてプレミア公開いたします。

2024年1月16日(火)12:00~プレミア公開

(2月16日(金)までアーカイブ配信)

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