レポ:2/6 文京区立林町小 音楽ワークショップ後編(坂本夏樹・桜井しおり)
会場:音楽室、教室
参加人数:3年生 101名
出演:音楽ワークショップアーティストおとみっく 坂本夏樹・桜井しおり
ゲスト:磯野恵美(フルート)
令和4年度 文化庁「文化芸術による子供育成推進事業」(コミュニケーション能力向上事業)
文京区立林町小学校での3日間にわたる音楽づくりワークショップ「リズムでコミュニケーション!」最終日の模様、学校の先生とアーティストによるコメントをお届けします。
レポートその1はこちら
最終日の2月6日はゲストとしておとみっくのフルーティスト磯野恵美さんも応援にかけつけました。教科書にも載っているベートーヴェンのメヌエットを奏でると静かに聴き入っていました。みんながいつも吹いているリコーダーもフルートも「吹く」楽器。リコーダーのお悩み相談にも乗ってもらったり、リコーダーも美しく吹いてもらって興味津々でした。
さて、いよいよみんなで一つの音楽を作り上げる日となりました。大きな輪になって座り、発表する音楽の構成が発表されました。使う曲はエルガーの「威風堂々」。ピアノ演奏に続いて1グループずつリズムを演奏しながら、雲の上や宇宙ステーション、洞窟の中などを探検して回り、最後は全員でリズム打ちしながら行進し、賑やかなフィナーレを迎えることになりました。
おとみっくの3人は練習の時の様子を参考に子どもたちの演奏のタイミングを促したり、雰囲気に合わせてピアノやフルート、ドラムなどで盛り上げました。このクラスだけのオリジナルの壮大な一曲が完成すると、みんな大いに盛り上がりました。
- チームの人と力を合わせてできた。練習ではきんちょうしなかったけど、本番はきんちょうしました。自分的にはがんばれました!!
- 最後、全てのグループのリズムがあわさって、1曲の曲になり、やったな、と思いました!
- 全部合わせると1曲の音楽になりました。1つ1つ違ってごちゃごちゃだと思ったけれど、曲の順番を見ると、洞くつを発見して、宇宙へ飛んで…と、物語みたいでおもしろかった。
- みんなが考えたリズムで楽しいマーチを作れるなんて、すごい!あんなに短いリズムで長い音楽を作れて、すごくおもしろかったです♪家などでも小さいリズムをつなげて音楽を作ってみたいです!
- みんなで3年3組の曲が作れてうれしかったです。3日間の中で、みんなで作った曲が思い出に残りました。
3日間のワークショップを実施するにあたり、おとみっくのメンバーと学校の音楽の先生と一緒に、打合せをして進めました。
- どの学年を対象として実施したいか
- 学校の音楽の授業の進度や様子、悩みをヒアリング
- 使用する楽曲の相談
- 児童が使用できる楽器の種類や数の確認
- 使用教室(2日目のグループワークで2教室使用)、教室のレイアウト
- グループ分け
- 進行案の共有
- ワークシートによる子供たちの反応の共有
- 先生方によるフィードバック
その上で、普段の音楽の授業で1人の先生では実施しにくい「音楽づくり」「色々な楽器の演奏体験」の部分を重点的なテーマとして、また学校に豊富にある打楽器の活用や、担任の先生によるグループ分けなどのご協力もいただきつつ、プログラムを組んでいきました。
1日目(1/13):アイスブレイク(リズムゲーム・楽器アンサンブル)/講師2名
2日目(1/27):グループワーク(リズム創作)/講師2名
3日目( 2/6):作品発表/講師2名+ゲスト奏者
- 音楽室、3年生の教室1つ(2日目のみ)
- 講師楽器(ピアノ、バスドラム、フルート)
児童楽器(タンブリン、クラベス、マラカス、シェーカー、ボンゴ、鈴、トライアングル、ウィンドチャイム、木琴、鉄琴)※フルート以外は学校所有のものを使用 - その他:リズム楽譜、くじ引き、白紙、サインペン
- 1日目:♪4・3・2・1/テイク・ファイブ/ラデツキー行進曲/スカラムーシュより「ブラジレイラ」
- 3日目:♪威風堂々/メヌエット(ベートーヴェン)
「音楽づくり」の学習というのは、私たち自身が子どもの頃受けたことがないので、私に限らず苦手意識を持っている教員というのは多いと思います。そうした中で、このように手厚くフォローしていただいて子どもたちと一緒に「音楽づくり」が体験できたこと自体が、大変ありがたいことだと思いました。
子どもたちから、「すごく楽しかった」「またやりたい」といった感想、反応が見られたので、子どもたちにとっても「創る」ということは楽しいことなんだな、もっと子どもたちと「音で一緒に遊ぶ」のがいいんだと改めて感じました。
子どもたちの柔軟な発想を見て、たとえ一見何をやっているのかよく分からないようなものでも、実はその裏に、子どもの考えや意図が隠されている場合があるので、それに対してどう価値づけをしていくかが、我々授業者が磨いていかなければならないスキルだなと感じました。
初日の子どもたちの様子を見て、自由な発想と、それを認め合う空気感がでていたので、その子たちのいい所を生かす創作にしたいという想いでやりました。より音楽的にバリエーション豊かにリズム創作できるよう、リズム楽譜を使ったり、言葉をリズムにあてはめたり、音やイメージからリズムを作ったり、色々な手法を子どもたちに提案して、その中から子どもたちがいいなと思う方法をとってもらいました。自分たちで「どこを歩きたいか」のテーマから決めてもらった所から、「自分たちのリズムなんだ」という意識が出てきたのを感じました。一見シンプルに見えても、細かい表現の仕方まで工夫していて、オリジナリティ溢れる作品を生み出してくれた子どもたちはすごいな、と感心するばかりです。
「音楽でのコミュニケーション」には、そもそも正解も間違いもありません。そうした中でアイディアを出し合い、どうするかを自分たちで決めて、グループで納得した作品を完成させるというのは、なかなかハードなミッションだったと思います。子どもたちだけで話し合う際、他の人の意見を取り入れたり、嫌だという意見があったら、「その嫌だという気持ちをどうやって新しいアイディアで補っていこうか」と考える、そういうチーム形成ができていたので素晴らしいなと思いました。大人がこうだよ、と言わなくても、少し見守っていてあげると、少し時間はかかるけれど子どもたちの中でまとまっていく、という子どもたちの力を実感しました。
音楽の素敵な所は、それぞれのいい所や想いを取り込んでいけること、そしてどんな人でもそれぞれの表現で一緒に演奏できるということです。正解がない中で、自分の意見を出し、お互いに認め合い、選んだり決めたりして納得するものを生み出すことは、今後の人生の色々な場面で必要になる力だと思います。今回の音楽づくりの経験や挑戦、そこで表れた感情が、様々な分野で子どもたちの役に立てば嬉しいです。
同じお子さんたちを対象に3回にわたってワークショップをしながら作品づくりをしていくというのは、私たちにとっても貴重な体験でした。一番印象的だったのは、第2回目のみんなのクリエイティブな発想でした。すごくポエティックな言葉が出てきたり、音楽づくりの過程でも「こんな風にこの音を捉えるんだ!」などと、子どもたちから学ぶことがすごく多かったです。
同じ学年ということでこちらは同じプログラムを用意しているのですが、3クラスとも全然違う雰囲気となりました。例えば第1回目のリズムゲームは、相手のことをお互いに知るという目的で色々なアクティビティを用意してきましたが、このクラスはこっちの方がいいかな、このクラスはこの時間をもうちょっと長くとろうかな、この楽器を入れようかなどと、リーダー同士で相談しながらその場で決めていました。
日常の中では、自分の持っているものを出すこと-何かお題が来て、それを創作してみる、作曲してみる、表現してみる-という経験はなかなかないですよね。そういった非日常的な活動を通して「自分を知る」ということを、音楽やスポーツなど、色々なことを通して発見していってもらえたら嬉しいです。
私は今日のみの参加でしたが、前回までに3クラスそれぞれが色々と考えてきたんだなということが伝わってきました。
質問がたくさん出て、みんな疑問に思っていることが実はたくさんあるのだと分かり、それを拾っていくのが私たちの今日のお仕事の一つだと感じました。「何でこの世にないものを歌っちゃうんだろう?」という質問もおもしろかったですね。それって作曲の始まりですよね。とてもいいポイントで、私たちも正解を出すのではなく、「なんでだろうね」と一緒に考えられてよかったと思います。
その1(1日目、2日目の様子)はこちら