レポ:12/20 北本市立石戸小学校(大原慧子pf・鶴岡京子fl/動画あり)
2022年度の北本市の学校クラスコンサートの締めくくりは、北本市立石戸小学校でした。この日は、長年北本市内の学校クラスコンサートを主催し、多くの若手ピアニストを送り出してきたピティナ北本支部長の大原慧子先生が自らピアニストを務め、フルートの鶴岡京子さんと一緒にクラスコンサートを開催してくださいました。大原先生よりレポートをいただきました。
12月20日北本市立石戸小学校4年生2クラス学校クラスコンサートを開催しました。1時限45分という限られた時間の中で、少しでも多くピアノのことを知ってもらい音楽の素晴らしさを伝えたいと思い、出来るだけアップテンポで親しみを込めて話しかけるように心掛けました。自己紹介で、「私は3歳から北本市に住んでいます。南幼稚園、南小学校、北本中学校を経て音楽の大学に進学しました。」と北本の学校名を挙げると、「え?本当?」「私も!」「私のお姉さんも!」という声が聞こえ始め、初対面の緊張がほぐれたような気がしました。
早速ピアノの仕組みを知ってもらうために、音楽史的時代背景と共にどのように楽器が変化していったかを、音楽室の後ろに飾ってある作曲家の肖像画を一緒に見ながらお話しました。
一曲目は、バロック期音楽の父、J.S.バッハの平均律第1巻第1番ハ長調。まず簡単にハ長調の意味を説明すべく、「ドレミファソラシド」は日本語では「ハニホヘトイロハ」と言います、と歌ってから、「ド」=「ハ」から始まる明るい感じの音階をハ長調Cdurと言いますと説明しました。「この曲は“ハ長調Cdurをこの上もなく美しく極めつくした楽曲”と言われているんですよ」と付け加え、そこへ、グノーがこの曲に魅了されて作ったアヴェ・マリアの旋律を鶴岡さんにフルートの音色で乗せてもらいました。
そして「この曲は結婚の教会式でも使われ、私もこの曲で結婚しました。将来、皆さんも教会式で同じ曲が流れるかもしれませんね、その時は今日の日の事を思い出してくれると幸せです」と話し掛けると、年頃の女子からは「そうなんだ!私もウェディングドレスがいいなぁ、」等と声があがり、より心が近づき親近感を持ってもらえたような気がしました。
続いて、クラシック期のモーツァルトのトルコマーチを演奏し、ペダルの位置の違いなどを説明しました。そして、ロマン期ショパンのワルツでは、テンポ変化の自由になってきたこと、その作風の違い、ペダルが今のピアノと一緒になった事を伝え、時代の移り変わりの中で、ピアノという楽器も音楽の作風もこの時期、随分自由に代わってきた事をお伝えしました。
更に、日頃あまり無い経験として、生のピアノに直に触れさせてあげたかったので、「ピアノの下に潜ってもいいよ、上から覗いてもいいよ、手がよく見えるところにどうぞ」と声を掛けますと、みんな一斉に集まってきました。ピアノの下で聴くと、ものすごい音が聞こえることを体感してもらい、その秘密がピアノの響板にあることを感じてもらう為に、音叉を取り出しました。耳元に近づけないと聞こえないほどの音しか出さない音叉が、ピアノの下にもぐって響板につけると、不思議なことにそこにいる皆に聞こえるぐらいの音になり、皆びっくりしていました。「響板はただの板とは違って、こんな微量な音まで、こんなに大きくさせることができるんだ」と納得してもらえたと思います。
「皆さん、ベートーヴェンの『エリーゼのために』って知ってる?」と聞くと、「知ってる!」とたくさん声が挙がりました。エリーゼとの恋の話をし、「それでは、これからエリーゼのためにを弾くので、2人の恋が成就出来たかを、想像してみてくれる?」と言うと、「えっ、どうやって!?」と驚いていました。「皆さん、左の頭を触ってください。ここは左脳と言って、皆さんが頑張ってお勉強をする時によく使う理知的なところと言われています。それでは、右側の頭を触ってください。ここは右脳と言って「こうじゃないかしら、ああじゃないかしら?」と想像したり、ゼロから発想するところです。人は右脳と左脳どちらも大切で、そのバランスが整うと素晴らしくなるのだそうです。だから「今、一生懸命お勉強する時期かと察すると、生の音楽を聴く時くらいは、答えは一つでなくて大丈夫だから、自由に想像してみましょう。」とお伝えしてから演奏しました。
弾き終わるや「二人は結婚できたと思う?」と、そっと聞くと、皆「できなかった」「失恋したと思う」等と、口々に答えてくれました。「どうして、そう感じたの?」と聞くと「悲しい終わり方だったから」「だって、暗い感じがしたから」「すごく寂しそうだったから」と、その曲のイメージを皆さん見事に当ててくれたので、「わぁ、すごーい、皆さん天才?」と褒めると「いやぁ、そ、そうかなぁ・・(照れる)」、「そう!天才!!!」とみんな満面の笑顔になり、その素直な様子が可愛らしくて忘れられません。
作曲家がなぜその音楽を作るきっかけになったのか?、その音楽に込められたニュアンスや気持ちを想像する楽しみ、右脳のイメージを膨らせ(頭の体操)リラックスして欲しかったので、「これからもお勉強頑張って、そして、気分転換に音楽を聴いたり、小説を読んだり、リラックスしてね。」と伝えると、「うん、うん、そうしよう!」と、興味深い様子で目を輝かせていました。
「ベートーヴェンってすごいですね。失恋しても悲しんでいるだけじゃなくて、こんな素晴らしい曲が作れちゃうなんて。可愛い皆さんには、いつも楽しいことばかりでいてもらいたいけれど、万が一辛いことがあったとしても、その時こそ、音楽や小説を作ったり等何か閃けるといいですね。」とお話すると、澄んだ瞳でうなずいてくれていました。
ここで、フルートの秘密を教えてもらいましょう!と鶴岡さんにバトンタッチ。「フルートって1本に見えるけれど、実はいくつかに分解することができるんです。いくつに分かれると思う?」と尋ねると、「2つ!」「4つ!」「3つ!」と声が挙がりました。3つに分けて1つだけの菅を吹いて見せてあげると、「それだけでも吹けるの!?」と子供たちは驚いていました。また、皆が見たことのあるマネの「笛を吹く少年」の絵を見せて、その絵と同じような木の笛も持ってきて音の違いを聴かせてくださいました。皆で回して触ってもらうと、「細い!」「木のぬくもりを感じる」という声も。
普段ドイツに暮らしている鶴岡さんは、クリスマス目前ということで、「もみの木」の曲のドイツ語の歌詞を書いた大きな楽譜を黒板に貼り、見せてくださりながらそのドイツ語の言葉の意味を、丁寧にに説明してくださりました。
更には、ドイツのご自宅に飾るために買ってきた、本物のもみの木を持つ写真も見せてくださいました。鶴岡さんの背丈より高い、それは立派な大きさでしたので、「えっ、本物の木?」と、びっくりする子ども達に、ドイツのクリスマスマーケットの賑やかで楽しい様子や、家族みんなで素敵なクリスマスの過ごし方をリアルにお話くださいました。それから、クリスマスムードたっぷりの「もみの木」の演奏をお届けしました。
もう一曲は、日本の曲「浜辺の歌」で、こちらも「埼玉県は海がないんだけどねぇ(笑)」「寄せては返す海辺の波の様子を、想像しながら聴いてみましょう。」とお話してから、デュオで演奏しました。
又、鶴岡さんご自身が、ドイツに行ったばかりで、未だよく言葉が通じない時にでも、音楽ドレミが万国共通語となり、スムーズにドイツの方々と心通わせることができたんですよ、というお話もしてくださいました。
最後の曲は、児童の皆さんとの共演曲です。石戸小学校の校歌でした。それは元気いっぱいの歌声が音楽室に響き亘り、演奏が終わるやいなや今度は、ピアニストとフルーティストが「皆さん、ブラボー!」と拍手喝采をすると、照れながらも皆さん満面の笑顔となり、温かい雰囲気に包まれました。
コンサートが終わってからも、すっかり打ち解けて、皆さん私たちの周りに集まって来てくださり、一人一人から握手を求められ、今日の舞台を共有できた、全ての人が幸せを感じる空間となりました。 「また遊びに来てね!」とお約束をするなど、演奏会の始めには無い親しみやすい友好関係で結ばれ、心が温かくなりました。いつもの事ながら、純粋な生徒の皆さんの反応からこちらこそ元気のエネルギーを貰っていると思いました。沢山の輝く笑顔をありがとう。
更にサプライズにも学校からの帰りには校庭でも「あ、大原先生、鶴岡先生だ、また来てね~!」「遊びに行くね~!」と児童の皆さんが声を掛けてくれて、後ろ髪引かれる思いで石戸小学校を後にしました。本当に可愛い皆さんでした。どうぞ、また元気でお会い出来ますように皆さんの健康と幸せを祈っています。
大原慧子(ピアノ・北本支部長)
石戸小学校で演奏させていただけたこと、凄く光栄です。ありがとうございました。私がピティナに出会い、ピアノに熱心に取り組むようになったのも皆さんと同じ小学校4年生の頃だったので、凄くご縁を感じております。ピアノを頑張ったからこそ、音楽の基礎を学べ、今回フルートの演奏で皆さまと過ごせたと思います。生徒の皆さんがとても楽しそうに聴いてくれたこと、音楽の魅力に気づいてくれた事が凄く嬉しかったです。演奏後も沢山話しかけていただき、本当に喜んでもらえたということを実感できました。それが演奏活動を続けていく中で何よりも嬉しいことです。皆さんと音楽を通して素敵な時間を一緒に過ごせて幸せです。ありがとうございました!
普段はCDや映像を通して鑑賞の授業を行っているので、学校にいながら一流の方の演奏を近距離で子どもたちに聴かせてあげられるのが最高でした。演奏だけでなく、曲についてのお話、楽器の構造などにも触れ、分かりやすく興味深く教えていただいたところ、また楽器にも触れさせていただいたこともよかったです。明るく子どもたち一人一人に目を向けてお話いただき、子どもたちの興味関心をどんどん引き出していたところが印象的でした。短時間ではありましたが、子どもたちが音楽に興味を持ち、とてもいきいきと楽しんでいた姿が見られました。ぜひ他の学年にも体験させたいので、毎年実施して欲しいです。とても貴重な機会をありがとうございました。
- ぼくはピアノを聞いて、心がポカポカしました。
- ピアノのいたが、音を大きくするせいしつがあるなんて知らなかったので、びっくりしました。もっとピアノのことが知りたくなりました。
- フルートがリコーダーと同じで3つに分かれることを初めて知ったのでびっくりしました。
- 親に話したらかんしんしてよく聞いてくれて、うれしかったです。曲はなめらかで、さわるとちがう発見があり、うれしかったです。
- ピアノのれきしやひみつを知ることができました。今までピアノを深く考えることがなかったので、たのしかったです。
- 授業の最後にいっしょにえんそうしてくれて、うれしかったです。
- 最後にあく手できたのがうれしかったです。