レポ:12/20 北本市立南小(堤莉咲子pf・安久津理子trb/動画あり)

北本市立南小学校
日時:2022年12月20日(金)
会場:音楽室
参加人数:4年生 77名
出演:堤 莉咲子(ピアノ)・安久津 理子(トロンボーン)
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2学期終了間際の12月20日には、北本市立南小学校へピアノの堤莉咲子さんとトロンボーンの安久津理子さんのペアが訪れました。理科・算数・歴史などを盛り込んだ楽器のヒミツに迫る分かりやすいトークに、子どもたちはグイグイ惹き込まれていきました。

先日授業でやったばかりというサン=サーンスの「白鳥」のデュオ演奏でご挨拶の後、まずはピアノの楽器紹介へ。堤さんは「今日は生のピアノをみんなで観察して学びたいと思います。今からみんなでピアノの中を覗いてもらおうと思いますが、私がピアノを弾くので、ピアノの中がどう動いているのかな、どこが動いているかな、ということに注目して見てくださいね」と話してから、数回に分けて全員がピアノの中を覗けるように音を出してみました。

「何か気づいたことがある人?」と聞くと、すぐに手が挙がり、「何かハンマーみたいな白いものが動いてた!」という声が。「これは本当にハンマーっていう名前なんですよ」と言うと、「ハンマー!?」と笑い声。そしてハンマーが弦をたたいて音が出る仕組みを説明した後、いくつかクイズを出すと、活発に答えが飛び交いました。

「ピアノのこのフタの部分って、斜めになっているよね。何で斜めなんだろう?なんでまっすぐじゃないの?」と質問。ある子が「音が響きやすいように」と答えると、「そう。じゃあ何で斜めにすると響きやすいのかな?これは理科だね。」とさらに突っ込んで聞き、子どもたちは盛んに意見を出し合いました。「ここから出た弦の音が色々なところにぶつかって皆さんの耳に届いているの。フタに音がぶつかった時に、この角度が斜めだから、こっち側の人に届くのね。」と、音の反射について説明しました。さらに「みなさん北本文化センターって行ったことありますか?」「あるある!」「私北本市出身なので、よく文化センターに行っていたのだけど、あのホールすごく大きいでしょう?お客さんが710人も入れるんですね。後ろのお客さんまで音を届けるために、フタが斜めになっているんです。」と、子どもたちになじみのあるホールで見た光景のナゾとピアノの仕組みとを理科的にリンクさせました。

次はピアノの下にもぐる実験。「音を大きく響かせる仕掛けがあるから、みんなで観察してみよう」と誘い、発見したことを聞きます。子どもから「板が震えてた」という答えが出ると、「そう!みんなが触ってくれたものは、響く板、と書いて響板と言います。この響板が揺れて音を大きくしてくれるので、文化センターの一番奥までも音が届くんですよ。」と話しました。そして、「今日は特別に私の演奏中にピアノの下にもぐって聴いてもいいし、中をのぞいても、手元をじっくり見てもいいので、色々と観察してみてください」と言ってショパンの「子犬のワルツ」を弾きました。

席に戻り次に演奏したのは、野平一郎作曲の「林の中の散歩道」。堤さんが「この方、まだすごく元気なんですよ。みんなのおばあちゃんおじいちゃんくらい。」と教えると、「えっ!?」と意外そうな顔をする子どもたち。「作曲家って聞くとすごく昔の、もう死んじゃった人なのかと思われがちだけれど、世界中にはたくさんの作曲家がいて、今もどこかで曲を書いている人がいるんですよ。」と続けます。「この曲も最近作られた曲なので、どんな林の中の散歩道なのかな、お天気はどうかな、などとイメージをふくらませて聴いてみてください。」と言って演奏しました。今同じ時代を生きている人が音楽を作り続けているんだ、というメッセージを伝えていきたいという堤さんの願いが込められた演奏でした。

続いてトロンボーンの登場です。「トロンボーンは500年ほど前、日本はまだ室町時代の頃からずっとこのような形をしていました。昔はトロンボーンの管が抜ける様子が剣を引き抜く様子に喩えられて「サックバット」とういう名前で呼ばれていたんですよ。」と言ってスッと管を抜き取ると、「本当だ!抜けた!2つに分かれた!」と子どもたちはびっくり。最初は神に捧げる合唱としか演奏されていなかったけれど、ベートーヴェンが「ジャジャジャジャーン!」の「運命」の交響曲に使って以来、色々な作曲家がトロンボーンを使って曲を作り出したことなど、トロンボーンという楽器を歴史的な側面から説明しました。

音の出る仕組みには、算数も出てきます。「トロンボーンにはピアノみたいに88個も鍵盤がありません。目印はないのですが、スライドの位置には7か所の決まった場所があります。やってみますね。」と言うと、7つのポジションそれぞれで音を出してみせました。「今、1か所で7つずつ音が出ましたよね。息の速さや唇の形を変えると色んな音程が出るんです。7×7なので…」と言うと「49!49個音が出るっていうことだ!」とすかさず声が飛びました。さらに唇や息の速さを変えると、もう少し高い音も低い音まで出るようになるそうです。

「最後に演奏するのは「ラッサストロンボーン」という曲。「ラッサス」というのは、「笑う」っていう意味なんです。」と言うと、「じゃあ笑うトロンボーンだ!」と声があがります。「おもしろい曲なので、どんな音が出るのか楽しみに、笑いながら聴いてくださいね。」と言って演奏しました。自分たちの目の前をスライドが伸び縮みしながら、元気な笑い声、太い低音の笑い声、ため息のような笑い声、象の鳴き声みたいな笑い声が聞こえると、子どもたちは目を丸くしたり、笑ったり、トロンボーンの真似をしながら楽しそうに聞いていました。

最後には全員でBELIEVEを合唱し、それをピアノ伴奏とトロンボーンのオスティナートで美しく飾りました。

堤莉咲子さん(ピアノ)より

学校クラスコンサートへ出演させていただきありがとうございました。北本市最後のクラスコンサートは南小学校へ伺いました。たくさんのリアクションをしてくれる生徒さんで盛り上がるコンサートとなりました。

ピアノのペダルについて説明した際には、生徒さんの目がパッと見開き、ピアノの音に耳を傾け、音の違いを一生懸命聴いていた様子が印象に残っています。また、初めて見たトロンボーンに興味を持ち、クイズが出された際にはクラス全員が参加していました。そして、一緒に演奏するビリーブの演奏では、トロンボーンにも負けない大きな声が聴こえ、一生懸命な姿に感動しました。

演奏後には、たくさんの生徒さんが私の周りに集まり質問を投げかけてくれました。「今度いつ来てくれますか?」や「普段はどこで演奏しているのですか?」と興味をもってもらえたことが大変うれしかったです。

安久津さんはトロンボーンを始めたのが中学生からだとのことで、この演奏会をきっかけに楽器を始めたり、自宅に帰ってからご家族で音楽についてお話をしてもらえたら大変嬉しく思います。

学校クラスコンサートのような「音楽の楽しさを肌で感じられる」素敵な活動がもっと広がっていくと、誰かの日常がまた少し彩られていくのかなと感じています。貴重な機会を頂き誠にありがとうございました。

安久津理子さん(トロンボーン)より

ひとつひとつの問いかけに積極的に反応をしてもらえ、トロンボーンのスライドを面白く使った曲では、たくさん笑ってくれました。素直な感情を見ることができ、嬉しかったです。

共演の曲では、元気いっぱいに歌を歌ってくれて、パワーをいただきました。ありがとうございました。

音楽の先生より

今日はピアノとトロンボーンで、普段あまり子どもたちが聴かない曲や見ない部分を詳しく教えていただいて、普段の授業よりも子どもたちの目の輝きがあって、本当に音楽を楽しんで聴いてくれたのでよかったなと思っております。

学校クラスコンサートを開催した後にいつも思うことは、このクラスコンサートの後どうやって普段の音楽につなげていくかがすごく大切だということです。この機会を無駄にしないようにこれから音楽教育がんばって参りたいと思います。今日はありがとうございました。

児童の皆さんの感想より(抜粋)
  • 何気なく見ていたピアノにも、たくさんの工夫が一台にぎゅっとつまっていることを感じました。
  • ピアノの弦のことや、音のひびきのことなど、色々なことを知ることができました。
  • 今度コンサートに行ってみたいです。
  • 安久津さんの息つぎは「スゥ」と音がするほど大きくしていました。
  • 私が演奏を見て思ったことは、口の動きが1こ1こていねいですごいと思いました。
  • トロンボーンは初めて実物を見たので、すごくきれいに光っていて、音色はおくの方から押しよせたように大きくなって、すごかったです。とくにすごいと思ったのは、息がすごく長続きしていることです。
学校クラスコンサート
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