島本歩実さん(Yカテゴリー1位) グランミューズ部門入賞者インタビュー

GrandMuse
グランミューズ部門 入賞者記念コンサート
出演者インタビュー

Yカテゴリー1位を受賞された、島本歩実さんにインタビューをしました。現在、建築学を専攻する大学4年生の島本さん。小さい頃からコンペティションへの出場経験を重ねててこられて、大学卒業をひかえた今年度、見事ご入賞されました。多様なご興味や経験が、演奏にどうあらわれててくるのか、当イベント担当も興味津々です。


Yカテゴリー第1位
島本 歩実さん
顔写真
兵庫県出身。4歳よりピアノを始める。家族の仕事の都合で中国で暮らしたり、生半可な気持ちでピアノを弾いていた時期があったり、そういう中でもピティナのコンペには毎年参加してきた。現在関西大学環境都市工学部建築学科4年在学。建築計画もピアノ演奏も、さまざまな約束事、ゆらぎと仲良くして表現していくところが似ているのかなと思っている。来春就職予定で、これからどうピアノと付き合っていくのか考え中。
コンペティション演奏曲目
  • ラフマニノフ:《楽興の時》Op.16 第1番
入賞者記念コンサート演奏曲目
  • ショパン:マズルカ ハ長調 Op.24-2
  • カプースチン:変奏曲 Op.41
全国大会の演奏

この度は、ご入賞おめでとうございます!コンペティションでご入賞されたときのお気持ちをお聞かせください。

えーマジで!?という感じでした。(笑) 人前で弾かせてもらうとき怖さを感じることはなくなってきましたが、いつも予期していなかったところでトチります。案の定全国大会でもわかりやすくトチりましたし…まあええか!と思っていたぐらいでした。(笑) でもそんなことはさておいて、この音はこう弾きたいなとか、このフレーズはこう歌い上げて間はこれぐらいやなとか、演奏しながら常に何かを感じ取って表現できていたのかな、とは思っています。そこを評価してくださったのかなんなのか…何はともあれうれしかったです!

コンペティション出場の動機を教えていただけますか?

年長さんのときから、中国に住んでいた3年間も受験期も、惰性で出場していることもありますが、春から夏にかけてはピティナ、という感じでここまで育ちました。大学生になり何かと忙しく、またエントリーできるコンクール自体が減っている気もします。うまくいってもそうでなくても、いつもと違う誰かに演奏を聴いてもらって言葉をいただく機会は、自分の音楽体験を深化するのに役立ちますし、言葉選び、講評用紙に書いてくださったの字のクセなんかでもその方のいろんなイメージが伝わってくるのがおもしろいなと思っています。それが、毎年なんやかんやで参加しよか!に至るいちばんの理由かもしれません。

コンペティションで演奏された曲の選曲理由を教えていただけますでしょうか?

別の機会に弾いて気に入ったのでさらに弾きこみたかったというのもありますが、そもそもラフマニノフの音楽が好きでよく聴くしよく弾きます。音楽から広漠な大地や人間の営みに対するいろんな情緒を感じ取ることができます。素朴さ、力強さ、やさしさ、哀しみ、懐かしさなど…彼の音楽全般がそうですが中でもOp.16-1は崇高な感じがなく共感しやすかったなと思います。ラフマニノフ自身はロシアの中でもヨーロッパの方で育ったようですが、私個人としては中国にいた頃に感じたユーラシア大陸の深み、地続きのところにあまたの人が歴史をつないできた逞しさ、そんなことも連想してしまいます。

レッスンには通われていますか?

はい、月3回通っています。先生とは長い長い付き合いになりました。私は相当生意気な生徒ですが、小さい頃から知ってくれているからこその信頼関係が本当にありがたいなと思っています。

お仕事、学業ではどんなことをされていますか?

建築学を専攻しています。といっても、新しい建築体験をデザインするぞ、構造の用・強・美を極めるぞ、というようなひたむきさには欠けています…。(笑) 建築環境をめぐる人間の行動やそれに伴う気持ち、暮らしの工夫に関心をもっていろんな事象をみています。オブザーバーに徹しているような感じですね。大学4年間で、建築物ができあがるまでのことや価値ある建築物の価値あるゆえんを主に学んできましたが、そこらへんの建物の中にいるとこれ計画時には絶対予期してなかったよな、という過ごし方が結構あります。建築計画するときに思い描く理想と私たちの暮らしの現実とのすれ違い、逆にそこから生まれた知恵みたいな部分に着目しています。

ピアノ以外にご興味があることは何ですか?

まち歩き、音楽鑑賞、本を買うことでしょうか。通学中にいろんなまちを通るのでまち歩きにはもってこいです。特に西日本の中心駅である大阪駅(梅田エリア)を通過できるのがありがたいです。駅周辺を歩くだけでもワンブロック行けば雰囲気のちがいがありますし、ミナミに行ったときには御堂筋を歩いて梅田まで北上したり、大学から梅田まで(8kmほど)歩いて帰ることもあります。まちの様子、におい、人の装いの変化を楽しんでいるのかな。音楽鑑賞について、物心ついた頃からジャズが好きで、特に50年代後半から60年代のもの、ECM等ヨーロッパのレーベルから出ているジャズをよく聴きます。それ以外にもR&B、ヒップホップ、ロック、テクノやハウスミュージックを聴きます。チックコリア、ギルエヴァンス、ジミヘン、日本のアーティストであればCHAI、ペトロールズ、電気グルーヴがお気に入りのアーティストです。読書、ではなく本を買うのが好きというのは、せっかく買ったのに読めていない本がざらにあるからです。(笑) 興味がないのに買ったわけではなく、タイトルと物申したいことに共感はしています。買ってから年単位で時間が経ってしまっても、時が満ちたら読んでいます。だいたい本屋さんの筑摩書房や岩波書店、建築雑誌や哲学・思想雑誌のブースで立ち読みして本を買っています。

普段はどれくらいピアノを練習されていますか?頻度、場所、時間などお聞かせください。

毎日鍵盤に触れたらいいなと思っています。通学に1時間半かかることが練習時間確保には難点です。あと、練習は好きなのにピアノの椅子に座るまでがなかなか厄介で、今日は本屋で立ち読みしたいとか、あそこ歩いて帰りたいとか、地図ながめてたい(地図を見るのも好きです)とかしていると、ピアノが弾けません…。 平均して週4〜5ぐらい弾いているかと。ただ自分ルールで本番5週間前からは必ず時間をかけてさらい始めます。梅田でピアノをかりたり、反復練習をしこたまやったり、曲目にもよりますが毎日1時間ぐらいは練習時間をとるようにしています。

好きな作曲家、演奏家、曲についてお聞かせください。

ベートーヴェン、ドビュッシー、ラフマニノフが特に好きです。たいして知識はなく全部勝手なイメージですが、ベートーヴェンの音楽からは人々の悲喜交交、なんやいろいろあるけどやっぱ人間礼賛!という感じがします。田園ソナタとハンマークラヴィーアが特に好きです。ドビュッシーとラフマニノフについてはどちらも東洋のかおりがしますが、ドビュッシーの長2度や完全5度の響き、ラフマニノフの和声の分厚さ・密度とセブンスやナインスの響きがたまりません。自分なりにそういった和声の音のバランスに凝ることが結構あります。ドビュッシーでは子供の領分と12の練習曲、ラフマニノフではコレルリの主題による変奏曲が一番好きです。基本演奏家お得意の演奏をすすんで聴くので曲によって頼りにしている演奏家がちがうのですが、やっぱりホロヴィッツ、そしてシフ、ガジェヴ、イノンバルナタン、ピアノ三重奏団のボザールトリオははずせない演奏家(団)です。

ピアノを演奏する際に心掛けていることは何ですか?

心掛け…はわからないですが、「ごきげんいかが?」という気分で弾いています。なにかコミュニケーションを試みてるんでしょうか、楽器、楽譜にある音楽、一音一音、自分自身に対してもです。本番であれば、聴き手やスタッフの皆様、審査員の先生方にも「調子どうですか?」と思って演奏していますし、演奏すること自体がおしゃべりに似ているのかもしれません。

入賞者記念コンサートの曲目の選曲理由を教えてください。

どちらもずっと弾きたいなと思ってきた曲です。ハ長調のマズルカは独特なリズムとやさしい和声進行が好き。アルゲリッチの弾いている映像を観てなんて愛らしい曲なんだと思っていました。カプースチンの変奏曲は思いっきりジャズらしいところ、メロウなところ、ポップスにもありそうな旋律が出てきたりと、いろんな要素、表情が出てきて弾いていても聴いていても心が躍る、そんな曲です。普段ジャズを聴くためか個人的には他の曲よりも日常風景のイメージを連想するパートが多いです。ただ愉快でクールなだけでなく、そういった私なりの感覚が少しでも共有できたらいいのですが…。(笑)

入賞者記念コンサートへの意気込みを一言お願いします!

目下卒論執筆中でいろいろと余裕がない日々を送っていますが、研究とピアノの練習がお互いの息抜きになっている今日この頃です。本番での演奏を心から楽しめるようどんどんギアアップします!当日はよろしくお願いします!


グランミューズ部門入賞者記念コンサート
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