開催レポ:熱狂コンチェルト 哀愁のラフマニノフ三大名曲選!
会場:ザ・シンフォニーホール(大阪)
出演:角野隼斗・関本昌平・上原彩子(ピアノ)三ツ橋敬子(指揮)日本センチュリー交響楽団
曲目:ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30(関本)
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 イ短調 Op.43(角野)
ラフマニノフ :ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18(上原)
提供:ザ・シンフォニーホール
2月13日(日)ザ・シンフォニーホールで「熱狂コンチェルト2022~哀愁のラフマニノフ3大名曲選!!」を開催。この日はあいにくの小雨模様、肌寒い1日となりましたが、それを吹き飛ばすかのような、まさに「熱狂」の渦と化したコンサートとなりました。ラフマニノフのパガニーニ狂詩曲、第2番、第3番をまとめて聴ける企画。3人のピアニストたちの底力を見せつけた緊張度の高く、熱い演奏が繰り広げられました。
トップバッターは、関本昌平さん(2003特級グランプリ)のラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番。手の故障からの復活公演となる2年ぶりのザ・シンフォニーホールの舞台。すでに指導でも活躍する関本さんの多くのお弟子さんが会場に駆けつけ、師匠の背中を見つめました。
豊穣の響とハーモニー、重厚な音色が会場全体を包み込み、ホール内はまさに関本ワールドとも言える音場を形成!この長大な作品が一瞬たりとも飽きることなく緊張と推進をもって展開され、白眉は2楽章でのピアノとオーケストラの対話、そして複雑なシークエンスが様々な形で顔を出す最終楽章で、オーケストラとともに次々とアイデアを深めていく過程は、まさにコンチェルトの醍醐味といえるものでした。万雷の拍手に応えて何度もステージに登場し、前半が終了しました。
休憩あけに登場したのは、角野隼斗さん(2018特級グランプリ)。ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲を自身初披露。ポップス界でも大きな才能で活躍が目覚しい角野さん。県外からも多くのファンが会場に詰めかけました。分刻みの超多忙スケジュールの中でも、貪欲に自身の音楽に向きあいクラシックの勉強を深めていくことで、両ジャンルを知る角野さんらしい個性をスパイスに、圧倒的な基礎の力、そして本番での強さを魅せつけた演奏となりました。クリスタルな音色と精緻な粒立ち、そして後半に向けてはオーケストラのハーモニーに音の層を重ねていき音響を構築していきました。大いに盛り上げてこちらも会場中が熱狂!最後の演奏者に襷をつなぎました。
オフホワイトのエレガントなドレスで最後に登場したのは、チャイコフスキー国際コンクール優勝以来、第一線でピアノ界をリードしてきた上原彩子さん。ここでピアノを入れ替え、個性の異なるもう一台のスタインウェイが登場しました。すでに多くの演奏会で場数を踏む上原さんですが、その演奏はいつも一期一会、どんどん没入していく音楽は多くの聴き手の心をゆさぶります。
また、決して体格に恵まれているわけではなくともコンチェルトでみせるその存在感は、会場を訪れた多くのピアノを学ぶ若手にとって参考となるものでもあったでしょう。相手に応じて、場面に応じて、音つくり、和声の響かせ方、緩急の利かせ方に多くの創意工夫が施された上で、オーケストラとの知的な音楽の対話が、あたかもそこで初めて生まれたかのような瑞々しさを湛えて進行していきます。すべてがプロフェッショナルであり、オオトリを飾る演奏で締めくくられました。
最後は、本日の主役のソリスト3人がカーテンコールに登場し、三者三様の個性的なピアニストを支えた指揮者の三ツ橋敬子氏、コンサートミストレスの松浦奈々氏とオーケストラ全員への、熱いスタンディングオベーションが起こり、コンサートが締めくくられました。
- スタインウェイD-274型(2018年製) 調律:荒木欣一
- スタインウェイD-274型(2007年製) 調律:齋藤孝史