開催レポ:横浜市招待国際ピアノ演奏会

日程:2021年11月6日(土)
会場:神奈川県立音楽堂
出演:ダニエル・チョバヌ、桑原志織、ケイト・リウ、ジャン・チャクムル(ピアノ)

撮影:藤本史昭 提供:横浜みなとみらいホール(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)

11月6日(土)に、横浜みなとみらいホール主催「第39回横浜市招待国際ピアノ演奏会」を、ホールの改修工事に伴う長期休館のため、神奈川県立音楽堂に会場を移して開催いたしました。1982年から毎年続いている歴史ある演奏会も、昨年は新型コロナウイルス感染症拡大防止のための水際対策の強化に係る措置の影響を受けて、本来は昨年に招聘する予定だった4名のピアニストによる「第39回」公演を1年延期せざるをえませんでした(昨年は代わりに、過去に出演した日本人ピアニストによる特別公演を開催)。

今年はダニエル・チョバヌ氏が14日間の待機期間を確保することが難しく、ヤマハのDisklavier™と動画の同期再生によるリモート出演というかたちをとったものの、関係省庁をはじめとする多くの方々のご協力を得て、ようやく公演を実現することができました。この場をお借りして、改めて感謝申し上げます。

当日の演奏曲目は下記の通りです。

●ダニエル・チョバヌ(ルーマニア)[Disklavier™によるリモート出演]
  • ムソルグスキー: 組曲《展覧会の絵》
  • ※アンコール  レクオーナ: マズルカ・グリッサンド
●桑原志織(日本)
  • バッハ/ブゾーニ:《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調》BWV 1004より 第5曲〈シャコンヌ〉
  • ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 作品110
  • ※アンコール  リスト:《パガニーニによる大練習曲》より第3番 嬰ト短調〈ラ・カンパネラ〉
●ケイト・リウ(アメリカ)
  • モーツァルト: ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 KV 310
  • ショパン: バラード第1番 ト短調 作品23
  • ※アンコール  J. S. バッハ(シロティ編曲):プレリュード ロ短調
●ジャン・チャクムル(トルコ)
  • シューマン: クライスレリアーナ 作品16
  • ※アンコール  シューマン:《ミルテの花》作品25より 第26曲〈終わりに〉

1年越しで実現した公演だけに、お客様からも「待っていました」「公演が実現して嬉しい」とのお声をいただき、その気持ちがピアニストたちにも通じて、ホールには温かな一体感が生まれました。
チョバヌ氏のリモート演奏については、テクノロジーの進歩が驚きをもたらすと同時に、「今度は生演奏で聴きたい」という偽らざる率直なご意見も寄せられましたが、若い演奏家たちの演奏を一度に聴くことができることについては大変好評をいただきました。また、1台のピアノを異なる個性の持ち主たちの演奏で聴き比べできる点も、興味深く楽しんでいただけた様子です。

ソロ活動が多いピアニストにとって、志を同じくする同年代のピアニストたちと同じステージにたち、交流できる「横浜市招待国際ピアノ演奏会」は、互いにインスピレーションをもたらしあい、励ましあう貴重な機会となっています。出演者揃ってのカーテンコールから戻ってきた舞台袖で互いに拍手を贈りあう姿は、そのことを印象深く感じさせてくれました。

レポート◎横浜みなとみらいホール

桑原志織さんコメント
桑原志織さん
演奏会を終えて

この度は伝統ある横浜市招待国際ピアノ演奏会に出演させていただき、大変光栄に思っております。コロナ禍を乗り越え、一年越しで演奏会の実現にご尽力くださいました皆様、温かくサポートしてくださいましたご関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。

世界中がコロナ禍に苛まれる昨今を思い、深い祈りに満ちたバッハ/ブゾーニの名曲と、嘆きの中から立ち上がるベートーヴェンの晩年ソナタを、心を込めて演奏させていただきました。水を打ったように静かに耳を傾けてくださった満場のお客様、自在な表現を叶えてくれる素晴らしいピアノ、美しい響きが豊かに広がる神奈川県立音楽堂……最高の環境に導かれ、演奏しながらも胸が一杯になりました。

また、世界で活躍する同世代の素晴らしいピアニストと出会い、ステージを共にできたことも、とても嬉しいことでした。4人それぞれの音色や表現をお楽しみいただけましたら幸いです。ご来場くださいました皆様、誠にありがとうございました。今後も更に研鑽を続け、心に触れる音楽を多くの皆様と共有できるよう頑張ってまいります。

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