実施レポ:朝活コンサート Vol.1
5月9日(水)朝日新聞社とピティナの共催による朝活コンサートの第1回が開催されました。
黒田亜樹×赤松林太郎ピアノデュオ・リサイタル
- 日程:2018年5月9日(水)10:30プレセミナー/11:30コンサート
- 会場:浜離宮朝日ホール音楽ホール
- 構成・司会:飯田有抄
- 講師:浦久俊彦
- 出演:黒田亜樹、赤松林太郎
- 来場者数:183名 (ピアノ調律:小谷幸永)
構成・司会の飯田有抄さん(研究会員)より「前半にお話で知識を深めて頂き、後半にたっぷりコンサートを楽しんでいただく」という本シリーズの趣旨とともに、初回の講師となる文筆家の浦久俊彦先生が紹介されました。
「なぜ、オーケストラ作品をピアノで弾くのか?」という題目に対して、まず、楽器としての歴史的な変遷をガット弦や金属弦などから、さらには当時の出版環境、演奏が聴かれたサロン環境などを検証しつつ、単なるオーケストラの代用ではなく、よりピュアな形で作曲家の意図に迫ることができること、そこがピアノならではの聴きどころではないだろうか、という視点が示されました。
また、それぞれの時代背景や人々の意識の変化、そうした中で作られた作品について、作曲家や当時の音楽学者の言葉の一節を引用して紹介。1914年世界大戦の年に惑星を作曲したホルスト、フランス革命前後を長命に生きたリストがなにを目指したか、ベートーヴェン第九の「友よ」「星の彼方に」とは?など、哲学の影響などにも触れながら、戦争と平和を繰り返した過酷なヨーロッパ大陸の作曲家作品を聴くことへの興味を喚起していきました。
脱線の話ながら会場の興味をひいたのは「共感覚」の話題。音に色を感じる感覚として、往年の巨匠ミケランジェリとその調律師のエピソードを交え、リストも持っていたのではないかとの仮説、そして、我々に感じないものを感じる人がいる、と想像するだけでも、オーケストラの管楽器の色彩感は、ピアノであっても十分感じられるのではないか・・・等々、話題が広がり、続くコンサートへの橋渡しとなりました。
詳しくはeラーニングへ
後半のコンサートでは、黒田亜樹・赤松林太郎が2台のピアノで対峙、 冒頭から真剣勝負の演奏が繰り広げられました。
「相手のピアノの方がよく聴こえるんです、2台だと。耳のすぐ横に相手ピアノのもっとも鳴る低弦が位置しますからね(黒田)」
「2台ピアノはボクシング(笑)。相手の出すタッチのタイミングを耳でとらえます(赤松)」
ときに対峙し、ときに寄り添いながら、3曲のオーケストラ作品を2台のピアノの演奏で描き出していきました。
前半のセミナーでは、編曲の過程での作曲家の選択についても語られましたが、「絶対に残さなければならない音」「厳選を重ねた響」、そうした研ぎ澄まされた作曲家のエッセンスを扱うピアニストたちの緊張感は客席にも伝わり、会場一体となった大きな共有体験となりました。
海外と日本を行き来する多忙な日々を送る二人が同じ舞台にたつという、たいへん貴重な今回の演奏会。
「だいぶ打合せ(リハーサル)と違うことを本番でやりました(笑)。でもその方が指揮者も嬉しいでしょ?本番は生ものですからね。」
終演後には、会員やステーション関係者によるランチ会が行われました。新たにスタートした企画について様々な意見交換がなされ「ピアノ指導者」の多忙な中での1日時間の使い方なども話題になりました。
午前の時間帯は、最も自己研さんに使える時間であり、圧倒的に夜が多い「コンサート」を楽しめることも魅力の一つとなっていたようでした。季節的にもコンペティション指導などで多忙を極めている時期は「午後3時から夜の10時までぶっ通し!」でレッスンをされることもあるそう。
日頃会わない皆さんとの交流の場としてはもとより、しっかり外で食事をとれる時間も貴重だったようです。終了後は慌ただしく帰途につかれる大忙しな先生方のしばしの憩いの場となりました。
朝活コンサートプレセミナーがeラーニングで公開されます。パソコンやタブレット、スマートフォンで聴講することが出来ます(有料)。是非、ご自宅での学びにお役立てください。
コンサートのダイジェスト映像もお楽しみに。