開催レポ:カワイ 2023特級入賞者コンサート(東京)

日程・会場:2024年7月2日(火)18:30開演 カワイ表参道 コンサートサロン パウゼ
出演:鈴木愛美(ピアノ)三井柚乃(ピアノ)神原雅治(ピアノ)

7月2日(火)カワイ表参道コンサートサロン パウゼにで、昨年の特級入賞者による「カワイ 2023特級入賞者コンサート」が開催されました。今年の特級開幕と重なるこの時期に、前年の入賞者たちが一年の成長を披露する場として褒賞コンサートに出演しています。グランプリの鈴木愛美さん、銀賞の三井柚乃さん、銅賞の神原雅治さんが、各々が次を見据えて取り組むレパートリーを披露し、たいへん聴きごたえのある一夜となりました。

《プログラム》

神原雅治
  • リスト:バラード 第2番 ロ短調 S.171 R.16
  • リスト:ハンガリー狂詩曲 第6番 変ニ長調 S.244-6
三井柚乃
  • ブラームス:ピアノソナタ 第3番 ヘ短調 Op.5
鈴木愛美
  • シューベルト:即興曲 D899 Op.90より第1番 ハ短調
  •  
  • ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ

神原雅治さんは、この1年で大きくかわったこととは「様々な演奏の機会をいただけたこと」、また「演奏だけではなくお話もしたこと」が大きな経験になったそうです。主にブラームスなどのドイツものにじっくり取り組んできた中で今回は「自分にしては珍しい」リストを選んだそうです。ストーリー性があり聴き手に伝わりやすいバラード第2番、そして技巧的でドイツものとは違う華やかさを持つハンガリー狂詩曲を、「オープンな表現を意識して選んだ」そうです。今後は大学卒業という節目を迎え環境の変化がある中でも大きなコンクールに挑戦したり新しいレパートリーにも取り組んでいきたいと語りました。

特級参加中に「ずっとシューマンが好きだ」と語っていた三井柚乃さんは、そこから派生してブラームスの作品も多く勉強してきたそうです。今回は、そのブラームスが20歳の時に書いた生涯最後のソナタである3番を選びました。初めてシューマンに評価をもらい、アドバイスをもとに書き直した作品であり、「いわばシューマンから卒業したともいえる作品、それを今日の舞台で弾いてみたい」と思ったそうです。音楽をする意味を問い続け、演奏を通して昇華させることができた充実した期間だったと語ってくれました。

受賞後の多忙な中でも成長し続けた頼もしいグランプリの鈴木愛美さんは、シューベルトの即興曲第1番ハ短調と、「私は生涯で一度もラヴェルを弾いたことがなくて、この特級の最後の褒賞演奏会で初めて挑戦する作曲家にしました」という、ラヴェルの高雅で感傷的なワルツを演奏しました。演奏会の数が急激に増えた中でも「一つ一つの本番に真剣に向き合うことで、演奏面でも人間としても成長できたと思います」と語り、グランプリ受賞直後のインタビューで答えたことと、この1年「言うことは変わらなかった」今後の目標は、「大きな夢というよりは、今よりもっといろいろな作品を深めていって、それが続けばいいなと思っています」との答えでした。

昨夏の特級から、着実に自己と向き合い、三者三様に大きく成長した一年が伺える、非常に聴きごたえのある実り豊かな演奏会となりました。

使用ピアノ:SHIGERU KAWAI フルコンサートピアノ SK-EX
調律:萩尾啓介

配信情報!

今回の演奏の一部と演奏者インタビューが「ピティナ・コンサートプレミアVol.30」にて一部ダイジェストで配信
配信日時:8/4(日)10:00~ ピティナ・ピアノチャンネルにてプレミア公開

コンサートプレミア
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